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第98話・チビの観劇&感激

 我が家のチビと、一緒にバレエを見に行ったり、劇を見たりするのは封印していました。

 というのは、私は独身貴族時代が長く、バレエや歌劇や劇団にのめりこんでいた時もありましてせっかくの観劇が小さい子が席のそばにいるとやはりとっぴょうしもないぐずりや、座席蹴飛ばし、で大変迷惑に感じることが多かった。

 そういうことで、いざ自分が子供をもつ母親になったときは観劇中、預けられるときは預けるようにしていました。

 子供の突発的な発言(おしっこ、ねむい、おなかすいた、まだおわんないの? )の対応にせっかくの観劇中、気がそがれるのが本当に困るからです。

 大きなところでは臨時預かりが可能なので有料無料にかかわらず、なるべく預けるようにしていました。

 子供が小さい時は観劇とかは遠慮しろ、家で大人しくじっとしていなさい、というご忠告はナシで…すみませんが。


 だが我がチビも大きくなりました、1人で大きくなったような顔をしてはいますが、まあとりあえず昼間のトイレは自力でいけ、レオタードも1人で着脱できるようになれれば、母娘で観劇! が可能になりますです。

(幼児期、一度ご招待先でねえ、まだおわんないの、これいつまで踊ってるのーっとごねられ、無茶苦茶恥ずかしかったのでチビはながいことNGにしていました。だけどもういい加減解禁にしてもいいだろう、やっと…)


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 それでそれで記念すべき解禁日は劇団四季のお子様劇にしました。

 チビ、ミュージカルは大喜びでぐずりもせず、最初から最後まで眼を大きく見開いて観ていました。ほっ、待っててよかった。

 これから娘といろんな感想を話し合えたり、感動をわかちあえるのだろう、私はうれしかったです。


 で、1つ気づいたこと。

 娘は娘であるってこと、当たり前のことですが、感想を聞くと子供なりにちゃんとおもしろかったことを言えるのです。

 大人の感想と子供の感想、どちらも人間でどちらも観劇したあとの思いを立派に表したという点ではどちらが優位にあるかとかは関係ないと思います。

 子供の感想は単純だけど気づかされることが多いです。

 大体子供向けの観劇というとまっすぐで心熱くて皆に好かれてという主人公に対抗して、あくの強いキャラをたてることが多いです。それで子供は主人公よりもそういうキャラを好むみたい、ですね。ダンスも正統派的に踊る正義感の強い主人公よりも悪役の振り付け、発声、セリフのいいまわし方が個性的だし変わった踊りの振り付けで注意がそっちに向く。


「ねえ、劇、おもしろかったねー、どこが一番よかった? 」

「あのね、わたしね、帰るときにね、イタチのワルモノとアクシュしたときがいちばんよかったの、ワルモノなのに、おててがとてもあったかかったの!」

(↑これで何の劇がわかった人はそうとうなツウですね。そうガンバの冒険です)

「あ、そう?

 で話の内容わかった? 」

「わかったよ、イタチのワルモノとガンバがケンカしてたけど、最後は仲直りして私とアクシュしてくれた」

「……」

 彼女は舞台に出ていた悪役がとても気に入ったようだ。終演後のホール出口で役者さんとの触れ合いでヒロイン(潮路役さん)にも握手してもらえたのに、何も言わない。引っ込み思案で恥ずかしがりだったので役者さんの方から腰をかがめて目を見つめてにっこり笑顔で握手してもらえたのに。


「ねえ、そんなにイタチのワルモノが好きならイタチのワルモノの踊りしてみて? 」

 彼女はすぐに片手をあげて両足そろえてルルベ、顔正面。その姿勢のまま左右に動いた。うーん、正直主人公たちの衣装よりも個性的な毛むくじゃらの衣装、そして真似しやすい踊りだったというのもツボだったのかもしれない。

 友情がテーマであっても小さい子供にはそういうのは関係なく、自分の興味をひいたものだけが記憶に残るんだな、そう思いました。

 大人の私、個人的には憎きノロイ(チビのいうイタチのワルモノのこと)の最後の超あっさりした負けっぷりが気に食わない、とかいろいろあったけど感動の深さでは子供にはかなわないと思いました。まだ小さいのでこの劇を観たことすらいずれ忘れてしまうかもしれないけど、つきそった親はその分子供の喜びぶりをいつでも思い返せるのだ。そういうことを思わせてくれた母娘一緒の初観劇の思い出でした。







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