第9話・アラベスクの話
アラベスク…バレエをよく知らない人でも有名なこのポーズ。
決まると本当に綺麗だ。上手な人がやるとそこだけが1枚の絵。なんという美しさ。
1本の足ですっくと立ち、背中はまっすぐ、顔も凛として余裕の微笑み。
そしてもう1本の足は当然120度以上の角度であがってる。90度でもオーラのある人はそれだけで目をひく。(45度でもだ)
プロのアラベスクの写真を見ると単なるバレエ好きとは決定的に違うのは足の甲だろう。形よく甲が飛び出せているというのは生まれつき+努力のたまもの。そして甲からつま先にかけてすっと伸びあがっている。小さなしゃちほこ、ですね。
ちょっとバレエをやっていたらアラベスクぐらい、と思うのかもしれませんが、綺麗にポーズを決めるのは本当に難しいです。私も一応90度は足は上がるのですが、瞬間芸か? と思うぐらい一瞬です。 ポーズは秒単位で、ですがきちんと止めないといけません。
そこでいきなり発表会に話が飛びますが、アラベスクの振付がふんだんにある曲目を踊ったときのこと。アマチュアの発表会では舞台写真屋さんがどこからともなく現れて写真を撮ってくださいます。そして後日撮った写真に番号をつけて、出演した人たちのうち、欲しい人だけ欲しい枚数を売ってくださるのです。
発表会後、みんなでサンプルをまわし見る、そしてどの写真を買おうか買うまいか悩むのだ。全部買うと何万円もしますので、厳選します。
同時に己の姿を写真で見てうっとりできる人はいいですが、私はたいてい反省の場になります。もちろん記念に買いますけど。
もっと美人に写してほしかった…もっと細く撮ってほしかった…もうちょっとカッコよくしてほしかった…なんでこんな変な顔してるときに撮るんだ~いじわる、へたくそな写真…などなど写真屋さんがその場でいたら傷つくぐらい私達はいろいろ言うわけです。(写真屋さんの腕が悪いわけではなく、全部自分が悪いのですけどね。)
舞台写真のプロが撮るのだから、「一応は」一番足があがっている瞬間を撮ってくれてはいるのだろう、とは思うけど自分で納得いかない。足がたれてる、手が変。顔の表情も緊張で強張ってすごい変。
(写真で知る己の超現実。がっくりしつつ、それでも一応の晴れ舞台、思い出に買うのでございます。出させていただくだけありがたいことですよね、感謝しないといけませんね…)
アラベスクの写真、へただけど確かに私だ、と観念して買うのです。
「ま、私って本当に上手ねえ!」って思えて堂々と写真を買える人がうらやましいです。そういう人はやっぱり自分の部屋に額をつけて飾るのでしょう。大きいパネルサイズで注文していらっしゃいます。いいなあ~。
アラベスクが決まると他のがへたでも結構うまくみえるものらしいです。ポワントが多少よろけていても、びしっと最後のキメのポーズがきまるとそれが、七難隠す、なんでしょうね。先生からそう伺ったことがあります。
私も年ばっかりくって、ヘタなままです。悲しい現実ですが角度1でもあがるように…ハイ、身の程知らずなんです、私は。