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第63話・バレエの批評

 どうかするとバレエレッスンでも最年長の生徒になったりする。

 あれほどたくさんいた同い年だったバレエ仲間は皆さんどこへ行ったのだろう、バレエをやめてしまったのか?

 忙しい?

 日常生活に埋没中?

 ええ、私は確かに小さい時はバレエをしていましたが今はもうだめ…というわけでしょうか?

 

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 バレエ界ではなく、バレエレッスン界? で生き残った私は若い子に混じってがんばってます。

(今日はあきらかに私が最年長だったので。レッスン生徒の平均年齢1人で押し上げてしまいました…。)


 ところでおばさんバレエをするようになってから、私はあることに気づきました。バレエをする人は批評を気にするのです。

 批評するというおこがましすぎることは私は決して言いません。身の程をしっているから。

 だけど同時にほめ言葉も決して言わない。

 たとえば、今日のフェッテ、すてき! とかあなたの足はきれい! とか意識的に言わないようにしています。もっと言えばレオタードや持ちモノですら趣味がいい、と思っても言わない。黙ってます。


 というのは、私は同じ生徒でも年齢的にはもう小さい子供、若い子にとっては異端者であり、かつ何気ない一言でもものすごいインパクトを与えるものだからです。

 ほめられるのはうれしいことには違いない、だがほめられなかった、また感想もらえなかった人、ノーコメントの対象の大部分は「……」なんです。

 以前私は目立たない生徒だったのでその気持ちがよくわかる。

 先生でもないのに、どうかすると先生よりも年齢の上の人ってある意味煙たくもあり同じ生徒でも同じでないし、バレエのことに妙に詳しそうなので感想をもらえると思いうれしくもあるけど、何も言われない子にとっては悲しい思いをさせることでもあるのです。


 私は先生でもないし万年生徒。へたの横好きのバレエ生徒。だけど小さい子にとってはお母さんよりも年上の「バレエが好きなおばさん」 にすぎない。決して同じ生徒目線ではない。年齢が上ということで先生によっては敬語を使われることはある。


(例:子飼い? の生徒が失敗すると叱る、怒る。たとえばちゃんと私の説明を聞いてたんかい、最初っからやりなおしっ! どなる先生でも私のような年上の生徒が対象だと、あの~さっきの説明わかりにくかったですか? すみませんもう1回お手本見せますね、といったりする。

 子供は敏感なので私らを先生も気をつかう相手と判断します。私たちもおばさんなのでわからないことでもバシバシ先生に質問しますし。ちなみに私の小さい頃はバレエの先生は怖い人だったので質問なんかできませんでした。)


 私も幼い彼女たちの気持ちはよくわかる。おばさんへの視線の向け方とか、幼かったチビさんの頃を思い出す。

 というのは私が小学生だった当時では大人バレエクラスは存在しなかった。

 だけどバレエが好き、というおばさんが私たちのクラスに交じって踊っておられた。小学生に交じって1人だけ。気さくないい人に違いないけれど誰も彼女に近寄らない。何となく煙たくて話もしない。彼女の方も遠慮がちにいつも隅っこのバーにいて(定位置だった) 遠慮がちに踊っておられたのを覚えている。発表会も出られなかった。

 私は今できるなら当時にタイムスリップして、子供に交じって1人だけバレエをしていた彼女を現在の大人バレエクラスに連れて来てあげたいです。一緒に踊れるのに、きっとお友達になれたのに、と思います。

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 また話が脱線しました。

 以上の理由で私は同じレッスン生徒でも批評めいたことは絶対にしないし、かといってほめもしません。

 まだバレリーナの卵? に対して私の何気ない一言が傷つけてはならない、という自戒もある。

 こういう年齢になると私のような生き残りの中にバレエの教えをするようになった人もいる。そういう人ですら発表会に招待されて観に行って当然ほめます、すると彼女は私が筋金入りのバレエ好きなことを知っているわけなんで「特によかったところとか悪いところ」 とか真剣な顔で聞くわけです。

 私は批評家でもなんでもないので、単純にここのふりつけがよかった、踊りがいいとか感想しか言えないのですがどうってことない私の一言に喜ぶ反応にかえってびっくりするわけです。

 私の感想をもったいないくらいに真剣な顔して聞くわけです。


 裏をかえせば教えができるような、ソロを踊るような上手な人にとってもバレエの感想って「もらいにくい」 ものだといえます。私からみれば彼女たちはそうとうバレエができる人です。

 バレエ教室は雨後のタケノコのごとくどこにでもある。誰でもバレエができる。

 だけど自分も(へたでも好きなので) 踊ってかつ「観る」 のも好きというのはごく少ないのではなかろうか…、やはりバレエ発表会ってお義理で観る人の方が多いのかな? そう言う人は当たり障りのないほめ言葉しか言わないだろうし。

 そういうわけでにわか批評家? というにはおこがましいですが率直な感想を言ってくれというと私は言えるわけです。今度こうしてみたら、もっと見やすいとか親しみやすいとか。舞台上での影の努力もほのみえる私は苦言は絶対に言えない。押しつけがましいことも言えない、言えるもんですか。

 プロともいえる彼女たちにとってもよき批評家とは言えぬがまあ毒にも薬もならないけれどまずまずの感想家とは言えるかもしれない、今後の参考程度にはなるかと…僭越ですが自負しております。


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 バレエ批評家の文章もよく拝読します。

 お金をもらって批評できる分、やっぱりプロは博識でよく観ておられます。ただ海外の批評家のようにけなしまくる、というのがないのはお国柄か国民性ゆえか。

 そしてお国柄の話が出ましたが、ただの無名の観客たちも海外は怖い。

 バレリーナに限らずオペラ、フラメンコ。観客の眼鏡にかなわない踊りを見せると罵声がとぶらしいし、このあたりは日本では絶対に考えられない。

 バレエを見るのに高額なチケットではなく、悪い席だと毎日気軽に見れる激安チケットも売っている国ならではの話だ。

 以前パセオを読んでいたらへたな踊りをみせたフラメンコダンサーがトマトをぶつけられていた話を寄稿されていた人がいて、コワーと思ったことがある。

 よく海外から来たダンサーに日本の人はやさしいという発言を読むのもむべなるかな。我らが日本人、そう元農耕民族は基本的にやさしく、努力を認めかつ自分にはできないことができる人には寛容なのだ。



 

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