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第59話・舞台メークと楽屋の内輪話

 今回は舞台メークと楽屋での食べ物の話です。


 ああ、子供の時は気楽でよかった。苦手なメークも全部先生や先生の助手さん、親がしてくれた。大人になったら当然自分のことは自分でしなきゃいけない。それはそれでおもしろいけど。

 その上化粧のノリの悪さ。子供の頃や若い時なんかいい方だと自負していたのに、近頃加齢に加速がついて容姿が劣化していって哀しいことです。


 気を取り直してメークの話に戻ります。

 子供の時は不要。成人して顔立ちによっては必要なのが「つけまつげ」 。

 私は元々「眼力」 というものが皆無なため、「つけまつげ」 をつけます。これが曲者で…私にとっては難しいのです。みなさん、あれ、ぱしっとつけられますか? よれたりしませんか?

 上手な人は本当におめめぱっちりでお人形さんみたいにかわいくなれるのに、私は…。楽屋でがっくりしつつ何度もトライ。まあまあ、これでまあまあかな…。

 プロ級のメイクの技術を持っている人はそれこそ発表会のメークって腕のみせどころではないでしょうか。普段できない冒険も今日1日と思えば、これやってみようとか。

 そのあたり元々の顔をしっている私は、魔法みたいに別人だ、絶世の美女だ、と思います。さすがに口にだしていいませんが「すごくかわいい、キレイになったねー」 とほめます。


 はっきりいって化粧っていうのは、いかに美しく化けれるかの技術です。

 つけまつげに関しては上まつげのほか下まつげにも付ける人がいます。それに舞台上のライトの光を計算したうえでつけまつげを微妙に小さく小さく時にはナナメに自分でカッティングして、ライトの光が自分の眼がきらきらと潤み、光るように仕向ける人もいます。ここまでくると神業です。

 またそんなにメイク術を駆使しなくとも、化粧映えする人っています。

 別に素顔が美人とかそういうのでもない。ただ化粧と衣装をつけることによって、バレエのうまいへたが上手に隠される人っています。そう言う人は例外なく普段の生活上でも非常に「お得」 です。女性としていろいろな意味で。

 私を含めて彼女も、もちろんコールドなのでソロじゃないけど、拍手がその分余分にいただけるという。コールドでも美人率というものが高まり、お義理できていただいたお客様方にも「あー、わざわざ来て綺麗な妖精もしくは村娘もしくは貴族を大量にみれてよかったな」 と思っていただけたらうれしいのです。



 そして楽屋見舞。

 いや、来ていただけるだけで十分です。楽屋見舞なんていりませんて。でもいただくととってもうれしい。強制ではないけど、がんばってね、とかよかったねというお世辞つきだとなおうれしい。

 私が特にもらってうれしいのはお花です。大きい、小さいは関係ありません。こうしてわざわざ足を運んできていただき、その前にお花屋さんに花を私のために注文していただいたと言う「手間暇」 が推測されて本当にありがたく思います。(一生一度の結婚式以外、こういうときでもなければ、私なんか一生お花なんかもらえません。発表会以外で今度お花をいただけるのは私の葬式でしょう…)


 お菓子も太るけどうれしいです。気のきいた人はほかの人も食べれるように、かつ舞台メークがくずれないようにかつそんなに甘くなくて上品な味の1口シュークリームや1口クッキー、をくれたりします。それがまたおいしいのですよね。

 私は発表会数日前から食欲というものは失せて、特に楽屋に入るともうお腹が全然すかなくなるという特異体質? です。(だから毎日発表会があれば私はやせますって。お客さん誰も来てくれなくなるけど…) だけどこういう気遣いがうれしくて、ついつい何個も食べてしまったりします。

 だけど楽屋ってメークをするところでもあり、着替えるところでもあります。


 先日調子にのって、だけどメークをくずさないように口元をすぼめて上品に? 食べていたら…それで何気なく食べている最中の自分の姿を鏡でみたら…口元のすぼめたところに「シワ」 が大量に縦線になっていてショックを受けました。例をあげてみると「巾着袋の口部分」 全然美しくもありません。タコの口は若い子がするとキスシーンを思い出させるので男の子をどぎまぎさせてしまいますが、わたしのようなおばさんがそれをすると、目をそむけたくなってしまうぐらい醜いです。

 ぎゃーっ!!

 妖怪縦シワ化粧ババア!!


 身体が凍りつくって言うのはこういう状態なのでしょう。私は愕然として自分の口をすぼめた顔を見つめました。

 だけど口をすぼめて食べないとリップが落ちてしまうし、いつもどおりにがじがじとよく噛んで食べてもせっかくの綺麗な舞台メークが汚らしくなるのもまた事実。だからといっておばさんが口をすぼめて上品ぶって食べてもなお妖怪に見えるという悲しい現実があります。


 トシとるのは哀しいことです。なーんにも考えなかった子供時代が懐かしいです。

 ババアリーナの自主的引退を考えた一瞬でもありました…。

 心の中ですすり泣きをしつつ本番にのぞみます。


 5分足らずのライトを浴びて、踊る私。


 そして普段の生活に戻った私。


 今日も古びたレオタードをかばんに突っ込んでまた今度の発表会に備えて地道にレッスンに通う私です。…お粗末様でございます。





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