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第46話・発表会のアクシデントの対応

 今回さしさわりがありますので、詳細はぼかしてかいてあります。何せ将来ある子の話ですので。

 だけどバレエの厳しい現実と言うのもわかる話です。


 発表会で主役もしくは主役級になるとたとえ子供でもプレッシャーがかかります。それをはねのけてがんばるのが、バレエの主役ひいてはこれから先の長い人生にも役立つものとなります。

 しかしながら不運な子はいます。

 バレエを知らない人でも発表会の主役といえば、やっぱりそのお教室では一番のトップだろうという目でみます。

 その子は体調が悪かったようです。舞台本番と言うのに、どことなく精彩を欠く踊りで主役のオーラがない。舞台中央で踊らないといけないのがかわいそうな位、ぐらぐらな踊り。一番目立つ豪華な衣装がかえって痛々しくみえる。

 普段バレエを見ない、親戚子供が出る発表会でしかバレエに親しむ機会がない、というような人でさえ「あの子主役なのに、ちょっとへた?」 とか。声には出さないがいぶかしげな無言の沈黙。違和感。

 そういう雰囲気が主役の子にも、また一緒に舞台に立っているその他大勢にもわからないはずはない。だけどその子はがんばった。踊りきったとはいえないが、まあとりあえず踊った。だって発表会はプロではないから代役なんか最初からないし、絶対に出ないと困る状況だし。踊りとしては、倒れないだけまあマシという感じだったらしい。

 後日やはり先生に、病気のせいとはいえ発表会直前のゲネプロ以外休んでしまい、迷惑をかけたことなど親と一緒になって謝罪をしたそうだ。コンクールにも出場経験はあるしその時は泊りがけで先生にも同行してもらった。小さいころから、バレエを手ほどきしてもらったというつきあいもある。

 だけど先生は冷たくて「もう、ダメね、やっていけないわね」

 やっていけない、というのはプロとしてという意味か、もしくは一緒に踊っていけないという意味か。指導も今度できないという意味か、そこまでは不明。

 トドメは長年の指導のし甲斐がなかったわ、見込み違いだし、指導するだけ無駄だった、私、ハジをかいちゃったわ! という冷たいとりつくしまもない言葉。

 親子ともども絶句。

 先生の怒りが直に伝わったのだ。


 ただ私はこの話を聞いて先生の対応にも問題があると感じた。大事な時期に病気で倒れたのは不運としかいいようがない。だけど主役がもし不在になった場合でも、このときはこうしましょうという危機管理意識がなかったのではないか。相手は子供である。何かがあるかわからないのが舞台だし、子供相手ではハプニングはつきものだ。

 それを出てもらわないと絶対に困る、最低限ゲネプロと本番は出て! と強行的に言い張ってこの結末は当たり前。舞台の総監督としてはそれっていかがなものか。

 それを一方的に当の親子を責めるのはいかがなものか?

 感情的になるのはいかがなものか?


 バレエの先生もしくはバレエ一筋でやってきた人。どの人もこのバレエの道をつっぱしってきた、素敵な方々だが、ただ芸術肌というかお金で苦労したこともない人も多く、人の気持ちを理解できない、はっきりいってできない子への思いやりがない人もいる。

 プロのダンサー、バレリーナとしては観る分にはいいが、指導者としては向いてない人もいる。

 いやっ、いい人なんですよ、みんな。尊敬もしてる。

 だけど他のお教室の些細な欠点をあげつらったり、交流の場でホントしょーもないことで怒っていたり。大勢の人に揉まれたりの経験のないお嬢様育ちの先生は、唖然とするようなことで落ち込んでいたりする。

 そりゃ先生と言われるような人だって同じ人間だし、それは当然だ。

 が、問題は小さな子供まで傷つけていいのだろうか、ということ。

 将来ある子供に対して、もうダメと決めつける権利はたとえその先生にだってないと私は思いますが。

 どこぞのブログでも発表会のソロでとちったので先生の楽屋まで謝りに行ったらあんたはバカ! とののしられたことを先生の実名をあげて怒っていたのもみたこともある。子供っぽい怒り方だし、ブログの真偽も不明だがあり得ない話ではない。

 

 その子の場合そういう怒られ方をしたら、一生自分を責めるだろうし、長じて大人になって先生位の年頃になって、いろいろと人間関係の経験を積む。そして思い出すのだ。

「私の小さいころのバレエの先生って、大人げない先生だった。私が病気になったのは運が悪かったけど、でもあんなに怒らなくっても……人間できてない」 と思うのではないかと思う。

(個人的に私が当の先生だったら、残念な意は伝えながらも、体調管理の大切さと今度はがんばろうと思いやりと期待をこめてなぐさめます。)

 それに私なら無理して出演させないし、今回たまたま出れたけどもし出れなかった場合もどうしたらベストになるか、今後のハプニングのために備えをしますね。

 要は先生だろうが生徒だろうが、所詮は人間同士のつきあい。バレエを通してのつきあい。思いやりが一番なんだと思います。


 逆に先生が出ない方がよい、とか言っているのに出たがる。たとえばインフルエンザなのに、自分さえよかったらいいのか?  ということもアリだと思います。要は双方の常識と思いやりだと思います。どこの世界でもそうだと思います。




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