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第33話・舞台には魔物がいる

 本当に不思議なんですが舞台には何かありますね。

 プロの公演では観客に夢の世界を見せるためのわずか数時間の架空の世界を演じる舞台。アマチュアでもハレの舞台。1年もしくは数年に1回、わずか1日。いや、わずか数分の舞台。さあ、がんばるぞ! の緊張と気合の舞台。

 こういうことなんで普段普通の生活ではない精神状態の人間が舞台にいるのです。何かないわけない。

 そうです…ズバリ、舞台には魔物がいるのです!!


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 レッスンではいつも真面目で完璧に踊る人でもいざ発表会の本番であれ? うそっ! あの人がそんなミスするなんて信じられない! と大コケの時もある。普段はちょっと不真面目でさぼり気味の人が本番では火事場の馬鹿力ではないけれど、まるで別人みたいな上手な踊りだったりする。

 ゲネプロだけでもわからないのが舞台。以前いったオーラだけでは説明がつかない時もありますよね。

 それをはねのけてこそプロ。その上でも安心して観ていられるのがプロ。だからやはりプロはすごいと思います。だけどそのプロの人だって最初から上手だったわけではありません。


 私は思うのですが舞台で大コケした人がそれをきっかけにもうバレエが嫌いだ、あれだけレッスンしたのに、無駄だったといってレッスンどころかバレエが嫌いになったという人を知っています。だけどそれを乗り越えてこそがんばれる。と思う。

 バレエにまつわる怪談めいた話は聞いたことはない。だけど発表会や配役にまつわる話には生きている人間の感情や怨念がやはりハレの舞台にはまとわりつくのはどうしても否めない。

 主役を絶対に取りたかった人間が舞台そででカーテンの後ろからそっと主役を見る…なによ、

1、私のほうがきっとうまく踊れるのに、

2、監督に気に入られちゃって

3、お金持ちだとおもって

4、ちょっと雑誌に出たからって

5、自分のほうが名前が売れていると思って

6、チケットがたくさん売りさばけると思って…とかやはりあると思う。

 人気というのも本当に不思議だし、この人はこんなにきっちりと踊れるのにどうして良い役がもらえないのか理解できない時もある。(ただし私が見たところ踊りの魅力というオーラがない。上手なんだけど、説明ができないけどそういうこともある)


 レッスンや振り付けの時に流した汗と涙。たった数時間の舞台のために費やした時間。そういうものが舞台に結集するわけです。


 魔物登場!!


 これが私のいう魔物ですっといったものは、ない。

 だけどやはり魔物はいる。

 それが何となく舞台がはじまる数日どうかすると数ヶ月前にふわふわとまとわりつくわけです。この舞台に限って怪我があいつぐとか、葬式に出ることが多かったとか。

 私には練習用に特別に借りた広いレッスン場で違う人が同じ場所ですべってこけるという出来事がありました。違う日にでもこける場所は同じ。なんでこの場所? どうみても普通の床なのに、滑りやすいところでもないのになあってみな首をかしげ、でも言っても仕方ないのでこの場所付近で踊る場面ではそれとなく気をつけモードMAX! ということを経験しています。

 私はアマチュアなのでこういうのはまれでしたが、常時舞台が仕事の現場というプロが有る程度縁起を担ぐ人が多いというのもわかるような気がします。

 そしてその上で観客を感動させるのがさらなるプロ。だから舞台の魔物も本物のプロの根性にはかなうまい。基礎練習こそすべて、ですべてはそこからはじまる。のも確かなことだと思います。






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