第24話・バレエな子
今回は思い出話です。
独身の時、某機関に勤務しておりました。
で、あるとき、私が趣味でバレエをしているのを知っている先輩たちが
「ねえねえ、あの○部に入ってきた新人の子もバレエをしているのですって。
それも見たらすぐわかるの…、バレエな子って! あなたとはまた全然違うタイプねえ!」
私は「?」 でした。バレエな子ってどんなのだろうって意味がわからなかったのです。先輩たちに聞いたら「見たらわかる」 とくすくす笑う。
「???」 でした。
職種が全く違うので仕事上であうことはまずない。ですが朝の出勤時にタイムカードを押すときに見たのです。会った瞬間まだ名前もわからないのに、ああ、この子が…ってわかりました。
一目見ただけでわかった。
名前を名乗られなくともタイムカードをカッチャンと押す行動1つで、ああ、この子が先輩の言っていた「バレエな子」ねえ! と感心したのです。さて皆さんどういう子だったかわかりますかね? 別にヘアスタイルがシニョンだったから、でもないのです。
彼女はタイムカードをとるにあたってバレエふうに取ったのだ。…わかりますかね?
バレエのマイムをしているように手をひらひらっとさせて取る。そしてカードを機会に入れて出勤日時を打刻する。その一連の動作もバレエ的。打刻械にバレエふうに横にそっとシナを作ってどうするのですか? というような感じ。 シルフィードがにっこりして「打刻機さん、おはよう♡今日もちゃんとカードに時刻をうってくれたかしら」というマイム風。あっけにとられました。
次にカードを打刻するべく後ろに控えている私に気付いてにこっ。
「おはようございまあす」
と今度は身体ごとバレエ的に横にしならせて明るく挨拶してくれたのだ。
「あ…おはよございま、」
驚きのあまりヘンな声で返答する私。あれが有名な新人の「バレエな子」かあ。
でも全然嫌みではなかった。小さいころからバレエをする子ならまずそういうことはしないだろう。多分大人からはじめてバレエが大好きになったあまりに日常的にバレエ的な動作を知ってか知らずかとるようになったのだ。バレエをひけらかすという感じは全然しなかった。
多分知ってのことならば毎日の緊張の連続な仕事を自分で叱咤しているつもりなのかもしれない。知らずにそういう動作をするならば知らないままでいいけれど、多少おバカでもバレエ好きは間違いのないところで好感をもった。
お洋服もひらひらでよく似合っていた。彼女、当時は今みたいに甘ロリって言葉もなかったがもしあったらきっとやっていただろうし、似合っていただろう。顔もかわいかったし。
でもって2,3度タイムカードのところで顔をあわせたが「バレエが好きなのね~」と話しをふると「ええ、でもちょっと指導入りまして、バレエの仕草はなるべくしないようにしています」と笑顔で答えた。
あー、おせっかいな同僚やその子が気にくわない先輩はいうだろうな、と思ったので「そお?」と私も余計なことは言わずに返答。
それでもひょんなときにバレエ的な動作や仕草を入れながらしゃべる、最初は驚いても慣れてくると平気になるものです。その上話してみるととても気さくでいい子だった。誰とでも笑顔を交えてしゃべる。これとっても重要ですね。確かすぐ恋愛して結婚退職したのではないかな? (ずいぶんとモテテたみたい)男の人はああいう子がやっぱり好きなんだろーな~といつまでたってもモテナイ私は思いました。
好きなものは好きと堂々としていくのがやっぱり人生の王道を歩むのだろうか? その子のバレエの力量は知らないけれど女の子女の子したまま、さっそうと素敵な男性をゲットして退職して、いつまでたっても同じ職場で年取って売れ残っていた私はつくづく思いました…。