第13話・フェッテと手拍子
拍手ではなくて、手拍子の話です。
黒鳥やドンキのクライマックスにトラント・ドゥ・フェッテ、つまり32回転がありますね。主役級しか踊ることができないあこがれの大技です。
無事踊りきると拍手の嵐。観客の感動を表わす鳴りやまない拍手は花束にも負けないバレリーナ達への励みになるのです。
ところが!
拍手ではなく、手拍子…ってわかります?
フェッテの途中で手拍子をする人たちがいるのです。最初なぜそんなことをするのか私にはわかりませんでした。だが彼らは喜んでいてかつがんばれ、がんばれと声援のつもりでしていて決して悪気はない。
だがバレリーナにとってはやりにくいことこの上ないだろう。
フェッテできる人、途中で手拍子をされて無事32回、まわりきれます?
音楽と手拍子、ためしにしてみて。全然あわないから。
これ日本だけの現象かどうかはわからないけど、なぜ手拍子するんだろ?
わざわざチケットを買い求めてホールへ行くバレエファンは決してそんなことはしない。公的な補助金でうけて格安で舞台チケットを買う人、こういっちゃ悪いけどバレエを見慣れていないひとがするみたい。
バレエをよく見るわけでもないが多少は知っていてクライマックスはなんていうのか知らないけれどぐるぐるまわるんだ、すごいんだよ、ぐらいは知っている。
私は堂々たるプロの人がこれでくずれたのを2回見ています。いずれも普段は文化会館か何かでバレエ公演には使わないところイコール、普段バレエを知らないひとが大勢観客としてこられるところでした。 気の毒で仕方がなかったです。1人は日本人で手拍子が沸き起こったとたんにくずれ、残りは全部シェネで乗り切られました。にこにこ笑顔で乗り切りさすが主役だ、と別の意味で感心しましたが、幕間で「片足でぐるぐるまわってなかった、あれは失敗したんだ」とか誰かが言っていて残念に思いました。
もう1つの舞台はロシアのバレエ団の地方公演です。名の知れたソリストです。ガラでしたが5、6回ぐらいまわった頃に手拍子が。誰かがしてそれから会場全体が手拍子…!
うわー…と思っていたら案の定くずれてあとはアラベスク等で即興で乗り切られましたが、彼女は憮然としていた。
終幕で舞台アンコールにも出ましたが終始不機嫌な顔!
手拍子なんかするから間違えたのよ、私が失敗したのはあんた達が悪い! という表情が読み取れました。感情が正直に顔に出るタイプなんだろうね。(私は一番前の座席にいたのでよく見えたんです) 私も観客の一人として主役の彼女の踊り切ったわよー! 私の踊りって素晴らしいでしょっていうご機嫌な良い表情見たかったですねえ…。あの舞台、彼女の憮然とした表情の理由に何人気付いたかと思います。
フェッテのときに手拍子が起こって崩れそうになりなんと半回転ずつで乗り切った人も観ています。舞台上に男性舞踊手がいてすごく心配そうな顔で見守っていたのが印象的でした。私もはらはらしていましたが彼女、32回目は観客を前に無事着地しました。笑顔で。大したもんです。
プロの人達にはクライマックスは手拍子はやめましょうってアナウンスしてもらうか、手拍子のアクシデントにも対処できるように踊る練習をするかした方がいいのかもしれませんね。