第11話・外股の話
外股、「そとまた」とお読みください。漢字がわからないけど、「そとわ」って言う人もいます。俗にバレエ足。
バレエを長くしていると足のつま先が外側に向いてきます。柔道や空手をやっている人にも見られるアレです。武道の場合はガニマタともいいますね。膝も曲がってて。
実は私も外股なんです。小さいころからバレエをしていたので自分では意識しなくとも外股です。
私はバレエ等芸術には全く関連のない職業についています。新人の頃、先輩方から「なんでそんなヘンな歩き方なの? ペンギンみたいね~」 と言われました。ペンギン……聞いた私はびっくりしましたが確かに確かペンギンも外股です。
冬のスキー場に行った時の話。雪原をスキー板を履かないで歩いて何気なく振り向いたとき、点々と続く自分の足跡を見てぎょっとしたことがあります。ものすごい外股の足跡です。他の皆さんはまっすぐに足が揃ってかわいいです。内股歩きをする子の足跡なんかとても上品そうにみえる。だけど私の足跡って乱暴な歩き方しているみたいでがっかりしました。自分で自分の足跡を見て驚くなんて。
でも治そうとはしない。母は結婚式の時の着物に着替えた私を見たとき、絶対に歩き方は内股で歩きなさいよっ! ともういい年をしていたのに、しつこく注意されました。
母は幼い私にバレエを習わせてくれた感謝すべきお人なんですが、着物を着せるときだけはバレエじゃなくて日本舞踊を習わせたらよかったと後悔していたそうです。
でもバレエ公演を観にホール等に行く時、知り合いじゃなくとも、同じ舞台を観た場合行きも帰りも地下街で同じ方向で行くことがありますよね。そうすると私と同類の方々が外股で歩いている。あっちもこっちも。ああ、あの人もバレエをしているんだ。いるじゃないか! 私と同じ歩き方の方々が! ハイヒールで外股あり、ローヒールでもスニーカーでも! あちこちに!!
ああ愛しいバレエ人よ。
ものすごい親近感がわきますね。
そういえばあるバレリーナが亡くなられてお棺に入れようとしたとき、裸足の足が180度水平に開いていたそうです。さすが、と居合わせた人々が感心したそうだ。私は笑われる方ですけどバレエ一筋で天寿を全うした人は外股でも逸話になるのです。