06 - 猫と狐とお菓子の話
こちらは当方で執筆中の『猫神ランドループ』の小話となります。そちらをご覧になっておられない方は、申し訳御座いませんが理解し難い内容となっております。
「なぁ、リナリア」
ある日、俺は城の自室にて、リナリアに問いかけた。
俺はわりとデカいソファーに座り、リナリアはベッドの上でゴロゴロしている。そしてノアは窓辺で日向ぼっこだ。うん、平和。
それはそうと、俺の呼びかけにリナリアは持ち前の狐耳をピクリとさせながら、こちらを向いた。
「うん? どうしたの?」
「いやさ、ハロウィンって知ってる?」
「ハロウィン………?」
………いや、よく考えたら知ってるはずないんだけどね。俺の世界のイベントだし。
「なにそれ?」
「いや、子供がトリックオアトリートって言ってだな、大人からお菓子を貰うイベント………か?」
言いながら不安になり、ノアに問いかける。ノアはその身を起こし、眠たげな瞳を隠そうともせずに言った。
「まぁ間違いではないじゃろ。あえて言うなら仮装して、じゃけどな」
おお、そういえばするね、仮装。
「ねぇ、ご主人様」
「ん?」
なんて考えていると、リナリアがベッドから降りて、こちらに歩きながら問いかける。
「その……なんだっけ、とりっく?ってなんなの?」
「あ、そうだよな。トリックオアトリートってのは、お菓子くれなきゃ悪戯するぞって意味だ」
「ふぅん、そうなんだ」
へー、と言いながら、俺の横に座る。………モコモコ九尾が肌に触れて、結構和む。
「しかしユーリ。なぜ今ハロウィンなぞ言いだすんじゃ?」
ノアも窓に腰かけながら問いかける。
いや、まぁなんとなく思っただけで、そんな深い意味はないのだけどね。
「まぁなんつーか、ハロウィンでする仮装って、だいたいが存在しないものだろ? でも俺は今それが存在しうる世界にいるんだなぁと、ふと思ってな。それだけ」
ホントそれだけ。ヤマなしオチなし意味もなし。
「そうなの?」
「ん、そうなの」
リナリアの言葉に肯く。つーかリナリアだって九尾の狐だしな。ノアなんか猫神だし。レイにいたっては龍人だ。もうなんでもござれ。
「ふぅん………じゃあさ、ご主人様!」
「んあ?」
リナリアが意気込んでこちらに詰め寄ってくる。
そしてその口から吐き出された言葉は、
「とりっくおぁとりーと!」
「……………」
………え、あ、は?
リナリア嬢は俺に向かって両手を出す。何だいこの手は。そしてその何かを期待しているような目は何だ。
「ふむ、なるほど」
ふとノアの声が聞こえそちらを向くと、ノアが窓から降りてこちらへ歩いてきた。何だろうと見ていると、ノアは俺の目の前で立ち止まり、あろうことかリナリア同様俺に両手を出し、こう言った。
「Trick or Treat!」
「……………」
やけに発音が良かった。
そんな2人の様子を見ていると、不意に笑いが漏れた。
「ク、ククク、あっはっはっは! まさかこう来るとはなぁ、………よし、悪戯されても困るし、それじゃあ街に出てお菓子買いますかね」
「うん! さ、行くわよ!」
「うむ、しかしわらわはお菓子よりも果物が良いのう」
はいはいと言いつつ腰を上げる。
楽しそうに扉へ向かうリナリアに、それに呆れつつもどこか楽しそうについて行くノア。
うん、今日は有意義な1日になりそうだ。
「ご主人様、早く早く!」
「早く来ぬか、ユーリ」
扉付近で言い放つ2人に苦笑しつつ、俺は2人に向かって歩き出した。
どうも。
なんとなく思いつきで書きました。30分で。超短いので、まぁそんなもんです。クオリティーも大したことないです。雰囲気だけ楽しんで下さい。
ではー。




