02 - 河童の川流れ
河童の川流れ、という諺をご存じだろうか。
その道に秀でた人でも失敗することもある、というような意味だったように思う。
他にも、猿も木から落ちるなどもあるが、今はどうでもいい。
「………」
今何が問題なのかと言うと、目の前に河童が打ちあげられている、ということだ。
「………」
どうしたらいいんだろう。一応川から上半身を出したような感じなので、目を覚ませば普通に帰っていくとは思うんだけど………。
って、違う違う。そもそも河童て存在してんの?
再度、目の前の物体に目を向ける。
「………」
頭に皿。緑っぽい体。水掻きのついた手足。最後に甲羅。
どうみても河童です本当にありがとうございました。
「うぅん………」
「ッ!?」
やべッ! 起きる!?
とりあえずどこかに隠れようと思うも、ここは河原で、下に細かい石が並ぶばかり。隠れられそうな木や大きな岩などは、50メートルほど先まで行かないとない。
とりあえずそこまで逃げようと思うも、逃げている姿を河童に見られたらどうなるかが怖かったし、何よりぶっちゃけ足が動かなかった。
「うぅ………う?」
河童が、目を開けた。
「や、やぁ………」
挨拶をしてみた。
「どうも………?」
挨拶を返してくれた。
って、それは置いておこうぜ。なぜそんな悠長に挨拶なんかしてんだ俺。
「お前は人間か?」
「………え、ああ、まぁ」
今まで人間か、なんて聞かれたことが無かったので、一瞬答えに詰まってしまった。
怒るかな、なんて思っていたが、まるでそんなことはなく、むしろ笑顔で語りかけてきた。
「おお、そうかそうか! 久方ぶりだな盟友よ」
盟友?
疑問が生じるも、あえて訊かないことにした。話がややこしくなるとヤバいし。
「お前が助けてくれたのか?」
「え、ああ、助ける前に起きてしまいましたけどね………」
ちょっとだけ嘘。どうしようか迷ってた。
「そうか、それはありがとう。なにか我らに望むものはないか?」
「望み………?」
望み、か………。そうだな、出来れば俺の身辺に関わる事じゃない方がよさそうだ。フラグ的にも俺の家に住むとかなったりしたら困るし。
「そうですね………、ならこの川で溺れる子が無いようにして欲しいですね。出来ますか?」
「ああ、それくらいなら喜んで引き受けよう! だが、無欲な女子だなぁ」
「俺は男だ」
なぜ間違えるよ。
「ははは! すまんすまん。やはり人間の性別は分かりづらいな」
そうなのか?
「では、これで失礼するよ。この度は感謝する」
「あ、いえ。無事で何よりです」
ではな、というと、水面に波紋一つ起こすことなく、河童は川に帰って行った。
………不思議な体験、だったのだろうか。
たぶん人に言ったら、頭の可哀想な子だと思われるんだろうな、などと思いながら、俺はその場を離れた。
その後、そこがどうなるかなどということは、考える事はなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
後日。
とある地方の新聞に、このような記事が載った。
『奇跡! 水難事故が突然途絶えた川』
これは、水難事故が毎年何人もの身に起こり、死亡者数も増える一方だったとある川の報道だった。夏のある時期を境に、その川周辺で水難事故がほとんど無くなったのだ。
たしかに、溺れるなどということはままあったが、そんな時でもすぐに川の流れで河岸へ運ばれ、命にかかわることは滅多になくなったそうだ。
そして、死亡者数はゼロ。全くの皆無。
それは奇跡の川と呼ばれ、観光客が絶えることはなく、それはそのまま近くの町の活性化につながったのだという。
―――この奇跡の裏側に、とある少年が関わっていたことを知る者は、いない。
どうも。
以前友人宅で構想5分、執筆時間20分で書いたのをそのまま投稿します。
低クォリティは否めませんが、短時間で書くとこんな感じになる、という何かの指標になれれば幸いです。
今回は河童の話。こう言った格言やら諺からストーリーを作るのは、わりと好きです。
ま、達人でもたまには失敗することもあるわけで。完璧な人間なんかいませんからね。
ではでは。




