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いろんな人がいろんなところで

ポーラの行く道

掲載日:2026/03/15


わたしは八歳の時に伯爵家の嫡男と婚約した。幼いながらも、ふたりはそれなりに仲良くしていた。彼は一つ上で、わたしが困っているときには手を貸してくれたし、わたしも彼の役に立ちたいと思っていた。


十四歳の時、両親が事故で死んだ。世界が音を立てて崩れたように感じた。泣き疲れて声も出ないわたしに、伯爵夫人は優しく言った。


「婚約してるのよ。娘と同じよ。だからうちにいらっしゃい」


その言葉にすがるようにして、わたしは伯爵家に引き取られた。


学院に入学してからは、婚約は秘密だと言われ、彼とは距離を置くように言われた。それでも、わたしは彼の役に立ちたかった。テスト前には要点をまとめたノートを作って渡し、レポートも代わりに書いた。三年生の時には、箔がつくからと王宮の文官試験を受けさせられた。


合格した時、彼は褒めてくれた。


けれど伯爵夫人は言った。


「結婚するのだから辞退しなさい」


わたしは逆らえなかった。


彼は、謝ってくれた。そして、わたしを抱きしめると軽く唇にキスをした。


「早く結婚したいね」そう言うと離れて行った。



卒業を目前にしたある日、同級生の妊娠がわかった。伯爵夫人は淡々と告げた。


「子供がいるのなら結婚するしかないわね。いいお嬢さんなのよ。だからあなたは諦めてね。まぁこの三年面倒を見たから文句ないわよね。これ少しだけど、遠慮しないで」


差し出された袋は軽かった。わたしの三年間も軽く扱われたのだと、その時ようやく気づいた。


卒業式の翌日、わたしは裏口から伯爵家を出た。荷物は少し。行くあてもない。最初に来た馬車に乗り込むと、年配の女性がわたしの顔を見て言った。


「お嬢さん、どうしたの。そんな暗い顔するような年じゃないわよ。若くて綺麗。未来は開けているのよ」


わたしは何も言えなかった。


「言っちゃいなさい。馬車のなかだよ。二度と会わない人ばかり。安心して話してみて」


その優しさに、胸の奥がほどけた。わたしは話した。両親が死んだこと、伯爵家に引き取られたこと、そして今日追い出されたこと。


女性はわたしの文官合格通知を見て、にっこり笑った。


「お嬢さんの経歴を買うよ。うちはグリーンリーフ商会。この辺りでは有名だよ」


周りの乗客たちがうなずいた。


「うちは信用できる商会だよね」


またうなずきが返ってくる。


わたしはその人と一緒に馬車を降りた。

伯爵家の裏口から出た時には閉ざされていた未来が、今は少しだけ明るく見えた。


あたらしい世界が、静かに開けていくのを感じていた。



いつも読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
不穏すぎる…行く宛のない王宮の文官試験に合格するほど優秀な世間知らずの小娘ゲットじゃん。 「うちは信用できる商会だよね」って言ってわざわざ周りに頷かせてるのが最高に胡散臭い
彼女の家の爵位はどうなったんだろう?。 まあ、何はともあれ、この道が明るい未来への道になると良いですね。
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