第九話 「勇者パーティ、解散。そしてスライム以下の存在へ」
ざまぁ完了。
勇者たちは鉱山で第二の人生(強制労働)をスタートさせました。
一方、ヴィクトル師匠は国賓待遇でニート生活へ。
ここまでの展開で、
「スカッとした!」「ざまぁ最高!」
と思っていただけたら、
【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】評価をお願いします!
これにて第一章「追放編」は完結です。
次回からは新章突入!
宿の入り口で騒いでいたのは、予想通り勇者アルヴィンたちだった。
彼らは、地面に倒れている近衛騎士団の惨状を見て、勝手に解釈したらしい。
「見ろ! ヴィクトルのやつ、騎士団まで手にかけやがった!」
「なんて邪悪な……! 陛下、今すぐあの男を処刑してください!」
アルヴィンは、俺の隣に立っている国王陛下の元へ駆け寄ると、大げさに跪いた。
その後ろでは、聖女マリアと剣聖カイルも、勝ち誇ったような顔で俺を睨んでいる。
「陛下! 我ら『暁の剣』が参上いたしました! あの逆賊ヴィクトルは、呪術で我らの力を奪い、国を乗っ取ろうとしているのです!」
アルヴィンは自信満々に告げた。
だが、返ってきたのは、氷のように冷たい国王の声だった。
「……ほう。力を奪った、とな?」
「は、はい! あいつが抜けてから、急に体が重くなり、剣も振れず、魔法も使えなくなりました! これは奴が最後にかけた『呪い』に違いありません!」
「そうか。ではアルヴィン、貴様に問う」
国王は冷徹な眼差しで勇者を見下ろした。
「貴様は『Sランク勇者』だな? ならば、その程度の呪い、自力で解けるはずではないか?」
「えっ……?」
アルヴィンが言葉に詰まる。
「そ、それは……ヴィクトルの呪いが、あまりにも卑劣で強力だからでして……」
「言い訳はよい。証明してみせよ」
国王は顎で俺をしゃくった。
「そこにヴィクトルがおる。もし貴様の言う通り、奴が元凶だというなら――今ここで斬り伏せてみせよ。それができれば、貴様の言葉を信じよう」
その言葉に、アルヴィンの顔色がパッと明るくなった。
「い、いいのですか!? 陛下のお墨付きとあらば、遠慮なく!」
アルヴィンは立ち上がり、腰の聖剣に手をかけた。
ニヤニヤと笑いながら俺に近づいてくる。
「へへっ、聞いたかヴィクトル? 陛下公認だ。ここでお前を殺しても罪にはならない!」
「……やめておけ。怪我をするぞ」
俺は忠告した。親切心からだ。
だが、アルヴィンは聞く耳を持たない。
「うるさい! 死ねぇぇぇっ!」
アルヴィンが聖剣を抜こうと――した、その時だった。
ガキンッ!
ズシィィィィィン!!
「ぐえっ!?」
聖剣が鞘から抜けた瞬間、アルヴィンの体が前のめりに倒れた。
まるで巨大な鉄塊を持たされたかのように、剣の重さに耐えきれず、顔面から床に叩きつけられたのだ。
「……な、なんだ……!? 剣が……重い……!?」
アルヴィンは震える腕で剣を持ち上げようとするが、ピクリとも動かない。
当然だ。その聖剣は、本来なら巨人の戦士が使うような超重量級の武器だ。
「忘れたか? 俺はお前に常時『筋力増強』と『装備重量軽減』をかけていた」
俺は倒れたアルヴィンを見下ろして言った。
「その剣、重さが80キロあるぞ。俺の支援魔法なしで、片手で振り回せるわけがないだろう」
「う、嘘だ……俺の力じゃなかったのか……!?」
アルヴィンが絶望の表情を浮かべる。
「マ、マリア! 回復だ! 回復魔法をかけてくれ!」
「は、はい! 任せて!」
聖女マリアが杖を掲げる。
「聖なる癒しよ! ハイ・ヒール!」
カッ……プシュン。
光が一瞬だけ輝き、すぐに消えた。
同時に、マリアはその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ……え? ま、魔力が……空っぽ……?」
「お前もだ、マリア」
俺は淡々と告げた。
「お前の魔力効率は最悪だ。だから俺が『消費魔力・99%カット』のデバフ(魔力抵抗の減算)を常時発動していた。俺がいなければ、上級魔法一発でガス欠だ」
「そ、そんな……いやぁぁぁ!」
「ついでに言うと、剣聖カイル。お前が敵の攻撃を避けられていたのは、俺が敵の『命中率』と『素早さ』をゼロにしていたからだ。今のままだと、赤子のパンチでも当たるぞ」
剣聖カイルは顔面蒼白になり、自分の剣を落とした。
沈黙が支配した。
彼らはようやく理解したのだ。
自分たちが「Sランク」だったのではなく、ヴィクトルという「土台」の上に立っていただけの、ただの飾り人形だったことを。
「……勝負あり、だな」
国王が冷たく言い放った。
「勇者アルヴィン、聖女マリア、剣聖カイル。貴様らの称号を、これより剥奪する」
「へ、陛下! お待ちください! 慈悲を!」
「黙れ。虚偽の報告で国を混乱させ、恩人を追放し、あまつさえその力を自分のものと偽った。その罪、万死に値する」
国王は近衛騎士団(ようやく動けるようになった)に合図した。
「こやつらを地下牢へ連行せよ。後日、鉱山送りとする。……ただし、魔法も剣も使えぬただの凡人としてな」
「いやだぁぁぁ! 俺は勇者だぞぉぉぉ!」
「離して! 私は聖女よ! こんな汚い牢屋なんて!」
アルヴィンたちが泣き叫びながら引きずられていく。
その姿は、あまりにも滑稽で、哀れだった。
アリアが冷ややかな目で見送る。
「……師匠。ゴミが片付きましたね」
「そうだな。少し静かになった」
俺は肩をすくめた。
別に、彼らを憎んでいたわけではない。ただ、自分の実力を正しく認識できないのは「非合理的」だと思っていただけだ。
これで彼らも、鉱山でツルハシを振るいながら、人生を学び直せるだろう。
「さて、ヴィクトル殿」
国王が改めて俺に向き直った。
「不愉快なものを見せた。……約束通り、この宿の代金は国が持とう。それと、ポチ殿の食費もな」
「感謝する。それが一番助かる」
俺は素直に頭を下げた。
こうして、俺を追放した元パーティは消滅した。
地位も、名誉も、金も、全てを失って。
一方、俺の手元には――。
世界最強の弟子と、伝説のドラゴン。
そして、国公認の「何もしなくていい」スローライフ権。
……悪くない。
追放された結果、以前よりもずっと快適な生活が手に入ったようだ。
「師匠! ポチが中庭でお腹を空かせてます! 国王様からもらった牛、丸焼きにしてもいいですか?」
「ああ。よく焼いてから食えよ」
平和な日常が戻ってきた。
まあ、この「平和」がいつまで続くかは、俺の弟子の機嫌次第なのだが。




