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「わ、わかりました……!私でお役に立てるのでしたら……」


ヘーゼルはごくんと喉を鳴らし、一気に緊張した面持ちになった。


「そうか……ありがとう。その件は、今度また……」


「はい!」


アクオスは視線を湖の方にずらす。


「……ところで……ヘーゼル嬢は、花祭りを知ってますか?」


「は、花祭りですか……?はい、行ったことはありませんが……」


「その…………」


アクオスは何かを言いづらそうにしている。


「……花祭りがどうかしましたか……?」


「……ヘーゼル嬢は、花祭りに興味はないですか?」


「花祭りに興味……え、私ですか?」


「ええ……もし興味があるなら……その……」


アクオスはなかなか言い出せず、焦りを覚えながらも必死に伝えようとする。

ヘーゼルは、そんなアクオスの葛藤も知らず、花祭りについて考えてニッコリ笑顔になった。


「ええ!興味あります!……マイル村の花祭りは、こちらでも有名です。話によると、会場はたくさんの花で飾られるとか……きっと、まだ私が知らない花もあるでしょうし……あ、花は薬草としても使えるのです!もしかしたら、行けば新しい薬草に巡り合えるかもしれませんね!」


斜め上の反応に、アクオスは一瞬困惑したが、ヘーゼルの言葉に落ち着きを取り戻し、話を続けられた。


「……では、その花祭りに、私と一緒に行きませんか?」


「え……アクオス様と?」


「……嫌ですか?」


アクオスは困ったように口をつぐむ。


「い、いいえ!……嫌なんて!!アクオス様こそ、私なんかでよいのですか!?」


「ああ……ヘーゼル嬢には色々と迷惑もかけているし……一緒に祭りに行けると嬉しいですが……」


「……そんな……迷惑だなんて……私こそ、お言葉に甘えてご一緒してもよろしいですか……?」


アクオスはホッとした表情で微笑む。


「ええ、ぜひ」


「ふふ、アクオス様、お気遣いありがとうございます……」


まったくもって『気遣い』ではないのだが、ヘーゼルはアクオスが研究の礼のために一緒に祭りに行こうと誘ってくれていると思い込んだ。


アクオスからすれば理由はまったく別なのだが、嬉しそうに笑うヘーゼルを、このまま楽しませてあげたいと思い、誘った理由は口にせず、今はそれで構わないと微笑んだ。


「あ、でも……」


ヘーゼルは笑顔から一転、心配そうな表情を浮かべる。


「……なにか?」


アクオスはやはり断られるのかと心配になり、小声で尋ねる。


「いえ……アクオス様がいつ魔物の盗伐があるかもしれませんので、お祭りの時に討伐に行くことになったときは何も気にせずこちらの約束は反故にしてくださいね」


その気配りに心が温かくなり、思わずアクオスはヘーゼルの手を取ってしまった。


「アクオス様?」


ヘーゼルが自分とアクオスの手を見つめて驚いている。

アクオスも自分の咄嗟の行動に驚き慌て、謝罪が口から溢れる。


「……すまない……」


ヘーゼルはその言葉に目を見開き、体が思わず固まる。

……あの日、十歳にも満たないレイが、大人のような口ぶりで言った言葉。


『……すまない……』


なぜか、久しく忘れていたその響きを思い出し、ヘーゼルの瞳から、つぅっと一筋の涙がこぼれ落ちた。


「ヘーゼル嬢!?」


突然泣き出したヘーゼルに、アクオスはぱっと手を離し、一歩後ろに下がった。


「か、勝手に手を取って申し訳ない!わ、悪かった!!」


「あ……ち、違うのです……これは……す、すみません……ちょっと、昔の……ことを思い出して……」


次から次へと溢れる涙に、ヘーゼルは慌ててハンカチを探す。

しかし、ポケットにはなく、唖然と立ち尽くす。


そのとき、優しく頬をぬぐう手の感触が伝わった。


「これを使って……」


アクオスは自分のハンカチを取り出し、涙を流すヘーゼルの頬にそっと当てる。


「も……もうしわけ……ありません……」


ヘーゼルはありがたくそのハンカチを借り、涙をぬぐった。

しばらくして、


「あ、あの……」


まだ涙声のヘーゼルは、鼻をすすりながらアクオスを見上げる。

アクオスは何も言わず、ヘーゼルの横に立って湖を見つめていた。


「……落ち着きましたか?」


湖を見つめたまま、アクオスはヘーゼルの顔を直接見ず、そっと気遣うように声をかけた。


「はい……も、もう…大丈夫です……」


「私に何か……話したいですか?」


アクオスの問いに、ヘーゼルは心の中で考える。


(話したら聞いてくださるし、話したくなければ無理に聞かないと言ってくださっているのだわ……)


「…………いいえ……」


「……そうですか……では、よろしければ、ご自宅までお送りいたしましょう」


「アクオス様…………ありがとうございます……」


二人は言葉少なに、湖を背にしてヘーゼルの屋敷に向かって歩き出した。

祝50話!

本日もお立ち寄りいただきありがとうございます。

皆様には、普段からアクションやブクマなど応援いただきとても感謝しております。

ここは、私のストレス発散の場なので皆様の応援が色々な意味で励みになっております。

引き続きヘーゼル&アクオスとともにこのお話を楽しんでいただけると、私のテンション爆上がりします。笑

まだ、もう少し続きますのでお付き合いよろしくお願いします。

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