暴走
凱音は、自身の氷の能力の精度を上げるため、学園の訓練室にいた。目の前には、的が設置されている。凱音は両手を構え、意識を集中する。体内で、いつものように冷たい力が集まってくるのを感じた。
「行くぞ……!」
彼は氷の的に向かって、冷気の奔流を放とうとした。しかし、その瞬間、凱音の手のひらから放出されたのは、彼がよく知る澄み切った氷の矢ではなかった。
ゴオォォォッッッ!!
訓練室に、けたたましい爆炎の轟音が響き渡った。
凱音の手のひらからは、まごうことなき紅蓮の炎が吹き荒れ、的を瞬く間に蒸発させた。訓練室の防護壁に激しく衝突した炎は、それでも勢いを失わず、あたりに熱気を撒き散らす。
「なっ……!?」
凱音は自分の手から放たれた炎に、心底驚愕した。
(嘘だろ……!?俺の『氷』が、まさかこんな『炎』に……!?)
彼はパニックに陥り、必死に炎を止めようと、無意識のうちに氷の能力を発動させようとする。しかし、焦れば焦るほど、炎の勢いは増すばかりだ。彼の手からは熱気が噴き出した。
訓練室の警報が鳴り響き、駆けつけた先生が凱音を取り囲む。
「能力者、如月凱音!直ちに能力を停止しなさい!」
先生の言葉に、凱音は茫然と立ち尽くす。
(俺の氷が、どうして……。まるで、豪炎寺の『フレイム』みたいじゃないか……!)
自分の能力が暴走した、としか思えない凱音は、炎を止められない…




