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まだ見ぬ光の先の果てへ

作者: Apollo
掲載日:2025/11/10

希望ってなんだろう。

ずっとそう思って生きてきた。

いつか報われる。そういう耳ざわりの良い言葉を信じ続けることのなんと無駄なことか。

何のために生きているのか分からなくなるような時の中で、暗闇の中を泳ぎ続ける。

いつか光が見つかると信じて。


「土壁!」

迫りくるゴブリンの攻撃をいなすため眼前に壁を生やす。

「土棘」

そして回り込んできたゴブリン共に土から生やした棘を刺した。これでとどめだ。

ゴブリンは知能が低く、一度戦闘方法を確立してしまえばどうってことはない。

俺は慣れた手つきでゴブリンから魔石を引き抜く。

 

一日にゴブリンを数体倒して、その魔石をギルドの換金所で売れば、日課終了。

これで少ないながらも最低限生きていけるだけの金は手に入る。

そんな生活を続けてもう3年が経った。


最初はそうじゃなかったさ。

人並みに夢を見てダンジョンという一攫千金の場所へ足を踏み入れた。

最初はゴブリンを倒して力をつけて、強くなったらもっと奥の強い魔物を倒しに行こう。

そう思っていた。

だがある日、奥から迷い出たモンスターに遭遇して悟っちまった。

俺はこいつには勝てないと。心が先に折れてしまったのさ。

そこから落ちるのは早かった。目標をゴブリンに絞り戦うことを決めたんだ。


だが時折高位の冒険者を見るたびに胸の中がざわつくのを感じる。

羨ましい。俺も誰かに認められたい。そういった感情がぐるぐる渦巻く。

だがそんなリスクを冒してまでそうなろうとは思えなかった。


今俺が使える魔法は3つ。

防御の土壁。攻撃の土棘。煙幕の土煙。

これらで出来ることなど限度がある。そう自分に言い訳をして一日を終えた。


日が変わっても俺のやることは変わらない。

いつものようにダンジョンへ向かう途中、人の群れが出来ているのが見えた。

なんだと思って近づくとそこにはボロボロのパーティーがいた。

「仲間がまだ取り残されている!誰か助けてくれ、群れが出たんだ!」

その言葉に群衆がざわめくのが分かった。


群れ。

普通モンスターは知能が低く、徒党を組むことはない。だが稀に一体の突然変異個体がモンスターを従え、徒党を組むことがあるという。その危険度は言うまでもないだろう。


このパーティーには申し訳ないがリスクを冒してまで助けるつもりはない。

群れができるレベルの場所にまで潜らなければ問題ないと考え、ダンジョンに入ることにした。

きっと大丈夫のはずだ。


ダンジョンに入るといつもの薄暗い光が照らす洞窟が広がっていた。

「相変わらずの薄気味悪い場所だ…」

そう小言をもらすと早速ゴブリンが見えた。

「シャアア!!!」

ゴブリンが鳴きながら走ってくる。

「土壁!、土棘!」

それをお決まりの戦術で倒し、魔石を剝ぎ取る。

よし、いける。今日もあと数匹倒して帰ろう。

そう思ったのに。


前から魔犬の群れが人を追いかけるのが見えてしまった。

ざっとみても10匹はいる。そんな魔物を俺が相手にできるわけがない。

「助けてええええええ」

悲鳴が聞こえる。追いかけられている人は剣士だろうか?そんなことを思いつつも心臓はバクバクなりっぱなしだ。眩暈もしてきたような気がする。これではどっちが助けて欲しいのか分かんないな。

そんなことを考えながらも体は勝手に動いていた。

「こっちだ!」

追いかけられていた人が効果範囲に入らないギリギリまで引き付けて魔法を放つ。

「土煙!!!」


そして全力で入口まで駆けだす。まともに戦って勝てないのなら逃げればよいのだ。

逃げて、逃げて、煙幕が切れてきたら土煙を打ったらまた逃げる。

ずっと魔犬の足音と鳴き声が聞こえる。もしかしたら今隣を走っているかもしれないと思うとゾッとする。まだ追いつかれてないと信じて走り続ける。


そして入口の光が見えてきたとき、魔犬が行動を変えた。炎を吐いてきたのだ。

何匹もの魔犬がそうすれば見えなくとも炎は当たると考えたのだろう。実際その考えは当たっていた。

左足が炎に当たって燃えている。焼けるように痛い。苦しい。もうまともに走れていない。

そういえば逃げていた剣士はいなくなっている、助かったのかな。

俺はここで死んでしまうのか、そう思った。

周りには魔犬の群れ、自分に出来ることなんてもうないんじゃないか。

俺にしてはよくやった方だ。頑張ったじゃないか。そう自分に言い聞かせて納得しようとした。


ずっとそうだ。

自分から逃げて逃げて逃げ続けて、最後には魔物から逃げて死ぬ。俺にぴったりの結末だ。

いつかは報われるなんていうけど、それは前を向いている人間にだけに当てはまる言葉だ。

ずっと逃げていた俺にはこんなことを言う資格がないかもしれないけど、もう一度やり直せるなら今度こそ前を向いて光の向こうへ歩き出そう。今やっとそう思えた。だから、


「まだ死ぬわけにはいかないんだよおおおおお!!」

残りの魔力をすべて使い、半径3mの土棘を放った。何体かは倒せたはずだ。

成果を確認している暇も惜しんで左足を引きずりながらも入口へ進む。

もうすぐ入口へ届かんという時、目が合ってしまった。

赤い、獰猛な魔獣の目だ。

そして俺の首元へ嚙みつかんとしてきた。死を覚悟したその時ーーーー


「伏せろ!!」


その声と同時にとっさに伏せた頭上を魔法が掠めた。

「助けを呼んできました!もう大丈夫です!」

そう言ったのは先に助けた剣士だった。

そうか、俺は助かったのか…蹂躙される魔犬を横目に俺は安心と同時に意識を手放した。


頑張るには力が必要だ。

それは夢だったり、金だったり色々なものから得ることができる。

いつかは報われる、これは頑張って前に進んでいる人限定の言葉だ。

目の前に広がる暗闇の荒野を突き進むのに必要な力は計り知れないが、みんなそのいつかに夢と希望を託して前に進む。


さあ、明日も一歩ずつ光の先を目指して歩こうか。





















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