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公平の神は公平に抽選で聖騎士を選ぶ  作者: 園日暮


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23/24

23 抽選の確率


 この世界を永遠たらしめる。それが我らの願いだったはず。


 兄さんにも分かっていたはずだ!



 解放神エアの右ストレートが炸裂する。



 万能神は矛盾を孕んでいる。その完成はよろず万物の崩壊にすぎない!



 公平神ジャッジのアッパーがエアの顎を捉える。



 何故、一柱ひとりで動いた。



 ジャッジのパンチを額で受け止めたエアが、左右の連打を叩き込む。



 烏合の衆など!


 お前の理屈を……!


 兄さんなら理解できるはずだ。


 ……この馬鹿野郎!!



 ジャッジの右と、エアの左。お互いの利き手同士でクロスカウンターが!





 「……と、まあ、そんな感じでな」


 「おっさん、いい加減にしろよ」

 「頭の悪い盛り方……」


 口の悪いガキどもだ。


 俺に降りた公平神ジャッジと、ジャスに降りた邪神――解放神エア。

 二柱も神の戦いは、人には認識できない神言語と神挙動(?)みたいなもので行われ、一瞬で終わった。

 フェイたちにはまるで何をが起きたか認識できていなかった。

 神と肉体を共有している状態にあった俺とジャスだけは、なんとなく分かった。

 だから、二人に説明してやっていたのだが……。


 「……いや、……まあ。だいたいそんな感じではありましたよ」


 見ろ。ジャスも同意している。

 その顔色は悪い。


 一時的に神と融合していた今なら分かるが、ジャスの能力は本当に人類の限界をぶっちぎる高さだ。

 この能力であれば「降臨ミクロコムス」による神降臨の影響もほとんどないだろう。

 とんでもねえな。


 ジャスの顔色が悪いのは肉体ではなく精神的なものだ。

 エアの目論見を台無しにしてやると意気込んでおいて、実際には目論見すら計れず一方的に振り回されただけだったからな。そうとうショックだったんだろう。


 気づいた時点で、言っておいてやるべきだったかな。

 いや、でもそんな暇なかったか。


 「あ、そうだよ」


 そんなジャスの調子を見ていて思い出したのか、フェイが矛盾点を突いてくる。


 「ジャスはともかく、おっさんが『降臨ミクロコムス』なんてやったらただじゃすまないだろうが! やっぱり今のは嘘だろ! ……いや、でもその後のあれはじゃあ何だってことに…………あああ! どういうことだよ」


 頭を抱えるフェイ。


 「『降臨ミクロコムス』はな。人の都合で神を呼びつけて、願いを叶えてもらう神技だ。当然人はその代償を払わなきゃならない。

 でも、今回のはな、ジャッジの都合で勝手に俺の体を器にしたんだ。これで俺が代償を払うのは、不公平だろ。そんなもの『公平の神』は認めない。

 ……なんで公平の神たるジャッジは、俺の体には悪影響がないようにしてくれたって訳だ」


 勝手に体の自由を奪っといて、デメリットがないからそれで公平……とはいわない気もするな。

 その分、今まで加護を与えてきただろ、と言われれば反論できない身だが。


 「人は死から逃れられない。……物は壊れる。大地もいずれは朽ちる。……そして、世界も滅びからは逃れられない」


 俺に変わってジャスが説明してくれるようだ。あいつも俺と同じで、神と同化している時に、神の持つ知識が頭の中に流れ込んできたみたいだな。一から語り始めた。急に話始めると、なんかアレだな。

 ただ、世界が滅びても、神の魂は不滅って部分は抜かしたな。必要ないといえば、そうだが。


 「世界が滅ぶって……」

 「たしか、神々の計算だと、あと数十兆年ぐらいしたら滅ぶらしいぞ」

 「数十兆年って……いくつだよ!」

 「数十兆よ」

 「あいつらの感覚を気にしても仕方ないぞ。そういうやつらだ」


 俺もずいぶんと信心がなくなったもんだ。こういうのはやっぱり、じかに接しないからこその幻想ファンタジーなんだな。


 「かつて神々は世界を滅びから()()ために活動を始めた。そのために世界の管理者として創られたのが……神造神、完全なる神。万能神マイティなのさ。……でも」

 「それじゃあ世界は救えないってなって、エアが一抜けしたんだ。だから万能神は未完成。()()()()だ。特に気にすることないぞ」

 「お、おう」

 万能神の加護を受けているフェイは複雑な表情を見せる。

 残念だったか、安心したか。

 ここで安心する奴に力を求めるなんて似合わないんだよな。


 「エアの離脱を切っ掛けに、神々はそれぞれ世界を救うために、別々の活動を始めた。その結果、お互いに衝突することになって……神々の争いが始まったんだ」

 「解放神エアの双子神であるジャッジは、神々の争いの原因となった弟神エアに接触して、その罪を審判ジャッジするつもりだった。でも結局その時は機会がなくて、それを今になってまで、ず~っとその機会を狙ってたってワケ」


 そのためにジャッジは未来予知して、エアと接触できる機会を狙った。

 エアの方も回避しようと未来を予知し、回避させまいとジャッジがさらに未来予知。さらにエアが。さらにジャッジが……といたちごっこを続けた結果、ジャッジは、エアが降臨した場に居合わせる可能性のある者に「加護」という種をばらまいた。いつでも「降臨」できるように。

 その結果、今日この時この場所で、ついに双子の神は接触した。


 要は公平神の加護を授ける基準は抽選ではなく、総当たりだったわけだ。

 それで……俺はたまたまそれに当たった一人、という訳だ。

 いや……たまたまってことは、それは抽選に当たったようなもんなのか? 実質抽選なのか。

 なんだが、訳が分からなくなってきた。



 「……おれとフランは?」

 少し躊躇を見せながらも、フェイははっきりと聞いた。


 「この場に居合わせるってのが、公平神に選ばれる条件なら……、それだけが条件なら……俺とフランでもよかったはずだろ。……その、なんで……おっさんが公平神に選ばれたんだよ」


 やはり、目の当たりにしたあの力。神の力。欲しかったんだな、フェイ。

 ある意味、俺を否定する言葉。それで言いよどんだか。別にそこはいいけどな。

 それに……


 「そうだな……、他の神の加護を授かる未来があったから、とか。他の神の割り込みになるから避けた、とか。割り込みは不公平だからな」


 或いは……


 「()()()()からじゃないかな」


 あの時。


 解放神エアがジャスに降臨した時。

 フェイとフランは少し離れた所でやりあっていた。

 そして、俺とジャスは隣にいた。


 「この場に居合わせる三人の内、誰でもいいなら解放神ジャスに一番近い所にいる人間がいいんじゃないか。それだけのことだったわけだ」

 「……そんなの」


 そんな理屈じゃ納得できないか。

 だがな、一時的に神を身に降ろした経験から、はっきり言って、

 「考えても無駄だぞ。人に神の御心なんて計れたもんじゃないぞ」


 そう思う。

 それ以外にも、知らなきゃいいようなことが神降ろしの結果、いっぱい知れてしまった。


 人類の真実とか。



 六大神が一神、知の神アダムカドモン。

 「知」の他に「人」も司っている。


 その知の神だが、加護を授かっている人間はほとんどいない。

 人を司っているんだったら、もう生きているだけで加護対象にしてもいいんじゃないか、ぐらいの気がするが、その逆で、知の神は他の神に比べて、圧倒的に加護を授かる者が少ない。

 世界中に支部のある聖騎士ギルドでも二人しかいなかったはず。


 それもそのはず、知の神が他の神々と創造した「人類」とは、俺たちのことじゃないからな。


 神の創造した「人類」は、古代人エルダーのことだ。

 俺たち現行人類は、邪神が「扉」を開いて連れてきた異世界人の末裔らしい。


 現在、古代人エルダーはほぼ絶滅し、わずかにその血を引く混血のものが存在するだけ。その絶対数の少ない中からしか、知の神の加護を授かる者はいないので、圧倒的に数が少なくなる。


 ちなみ、古代人エルダーは、誰でも古代語魔法を扱えた。さらに、今の「人類」と比べて初期値や平均値が高い完成された種族だった。

 故に逆に、拡張性がないらしい。

 それを不満に思った邪神が、初期値は低いが上振れのすごい種族を探して、俺たちの先祖を異世界から連れてきたらしい。


 これも邪神による、世界を救うための施策の一つだそうだ。


 確かに、神がその身に降臨しても精神的なダメージしか受けていないジャス。

 今の「人類」の中からこんなやつが生まれてくるとすれば、一概に邪神のことも否定できないようにも思えてくる。



 「こんな力は神の気まぐれさ」

 神の力に未練の見えるフェイに、言っておく。

 「ここに来れるなら誰でも良かったわけだからな」

 抽選じゃなかったけど、実際、抽選みたいなもの。


 「お前の欲しかった力は、これか?」

 フェイは俯き考え込む。


 「抽選に必ず当たる力なら欲しいけどな。ギャンブルで無敵になれる」


 「それで……判決は?」

 「ん?」

 「それをするためにわざわざ公平神は邪神を追って来たんだろ」

 「ああ」


 言うの忘れてたか。

 馬鹿らしかったからな。


 「保留」


 「あん?」

 「だから保留。邪神が世界を救うために、今もいろいろとやってるからな。判決はその結果が出るまで保留・・だとさ」


 それが神の下した、神への審判の判決だった


 「なんだそれ……」

 フェイは、怒ったらいいのか、呆れたらいいのか、どちらにも決められないといった顔をした。


 「あんだけいろいろとやってきて、それで接触できて……それで結論が、保留?」

 「相手は数十兆年後のために動いてるようなやつらだぞ。千年とか万年とか、それぐらい法廷中の休憩時間ぐらいの感覚だなきっと。あんまりあいつらの感覚に振り回されるなよ。

 そんなやつらの感覚に振り回されることになる力が、お前の欲しい力のなのか?」


 力とは何か。

 俺たちの施設の同期にも、戦女神の加護を失いたいくなくて、無理を重ねていた奴がいた。

 ああはなりたくないだろう。


 「お前はまだ若い。ゆっくり考えろ」


 フェイと同じ年代だった頃の自分が聞いたら、絶対聞き飛ばしそうな言葉を吐く俺。

 やだね。これが年ってことなのかね。


 「……うっせ~よ。……おっさん」


 フェイの返答から伝わる感情。それは、同じ年ごろの俺よりかは大人だな、と思わせる声色だった。

 それが何故か、とても嬉しかった。



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