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「カウントダウン」

最初のメッセージが届いたのは、夜の11時過ぎだった。


 スマホの通知音が鳴り、画面を確認すると、見知らぬ番号からのメッセージが届いていた。


 開くと、そこにはたった 「27」 という数字だけが記されていた。


 最初はただのスパムかと思った。


 変なリンクがあるわけでもなく、送り主の情報もない。

 ただ、数字だけがぽつんと表示されている。


 悪質な広告か、あるいはランダムに送られる迷惑メールの類だろう。

 そう思い、特に気にも留めずスマホを机に置いた。


 しかし、翌朝――


 また同じ番号からメッセージが届いていた。


 今度は、「26」


 何かのカウントダウンなのか?


 それとも、単なる偶然か?


 ざわりと胸の奥に妙な不安が芽生えた。




 その日、いつも通り僕は喫茶店で仕事をしていた。


 適当に注文し、出てきたレシートを眺めていると、奇妙なことに気づいた。


 注文番号が 「26」 だった。


 嫌な気分になった。


 今朝、届いたメッセージと同じ数字。

 普段なら気にも留めない。

 単なる偶然かもしれない。

 だが、気づいてしまった以上、それは気にかかる。


 さらに、帰り道。


 電車に乗ると、ドアの横の広告モニターに 「26」 という番号が浮かんでいた。


 次の駅の掲示板にも、なぜか 26 という数字が目に入る。


 車両の中に貼られたキャンペーン広告の番号も 「26」。


 意識すればするほど、「26」の数字が目につくようになる。


 ただの偶然か、それとも――。


 そう考えながら、スマホを開く。


 すると翌日新しいメッセージが届いていた。


 「25」



 カウントダウンは、毎日一つずつ減っていく。


 そして、その数字はスマホのメッセージだけではなく、日常の至る所に現れるようになった。


 カフェの席番号、レシートの金額の端数、テレビのニュースの画面、車のナンバープレート――。


 僕の周囲は「カウントダウンの数字」で埋め尽くされていく。


 最初は気のせいだと思っていた。


 けれど、気づいた。


 これは偶然ではなく、僕に向けられている。


 試しにメッセージを返信してみた。


 「お前は誰だ?」


 送信ボタンを押した直後、メッセージはすぐに既読になった。


 しかし、返事はない。


 その夜、夢を見た。


 「24……23……」


 暗闇の中、誰かが数字をカウントしている。


 その声は 低く、遠く、けれど確実に近づいてくる。



 カウントダウンは、着実に減っていった。


 【10】、【9】、【8】……。


 そして、ついに、【1】になった日。


 その日、僕は一日中部屋にこもっていた。


 外に出るのが怖かった。


 「0」になった瞬間、何かが起こる。


 そんな予感があった。


 深夜、スマホの画面を見つめながら、息を殺す。


 23:59


 秒針が進む。


 0:00


 スマホの通知が鳴る。


 震える手で画面を見る。


 そこには――



 「0」



 そして、メッセージがもう一通届いた。


 「起きて」


 次の瞬間――


 部屋の電気が、勝手に消えた。

 スマホの画面だけが、闇の中で淡く光る。

 そして、耳元で囁くような声が聞こえた。


 「……誰だ」


 息が詰まる。

 何も見えない。

 だが、確かに 何かがすぐそばにいる。

 僕はスマホの光を頼りに、慌てて部屋の電気のスイッチを探した。


 スイッチを押す――


 部屋に明かりが戻る。


 何もいない。


 ただの自分の部屋だった。


 いつも通りの、何の変哲もない風景。


 だが、一つだけ違っていた。


 スマホの画面を見ると、新たなメッセージが届いていた。


 「あなたのカウントダウンは終わりました」


 そして――


 「次は、あなたの大切な人の番です」


 僕の背筋に、嫌な寒気が走った。


 次のターゲットは 僕ではない。


 じゃあ、誰がーー。



 翌朝、念のため友人や家族に連絡を入れた。


 だが、誰も異変を感じてはいなかった。


 気のせいだったのか。


 あれは、何だったのか。


 いや――


 そう思いかけたとき、またスマホが震えた。


 新しいメッセージ。


 送り主は、昨日までとは違う番号だった。


 画面を開く。


 そこには――


 「27」



(完)


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