「カウントダウン」
最初のメッセージが届いたのは、夜の11時過ぎだった。
スマホの通知音が鳴り、画面を確認すると、見知らぬ番号からのメッセージが届いていた。
開くと、そこにはたった 「27」 という数字だけが記されていた。
最初はただのスパムかと思った。
変なリンクがあるわけでもなく、送り主の情報もない。
ただ、数字だけがぽつんと表示されている。
悪質な広告か、あるいはランダムに送られる迷惑メールの類だろう。
そう思い、特に気にも留めずスマホを机に置いた。
しかし、翌朝――
また同じ番号からメッセージが届いていた。
今度は、「26」
何かのカウントダウンなのか?
それとも、単なる偶然か?
ざわりと胸の奥に妙な不安が芽生えた。
◇
その日、いつも通り僕は喫茶店で仕事をしていた。
適当に注文し、出てきたレシートを眺めていると、奇妙なことに気づいた。
注文番号が 「26」 だった。
嫌な気分になった。
今朝、届いたメッセージと同じ数字。
普段なら気にも留めない。
単なる偶然かもしれない。
だが、気づいてしまった以上、それは気にかかる。
さらに、帰り道。
電車に乗ると、ドアの横の広告モニターに 「26」 という番号が浮かんでいた。
次の駅の掲示板にも、なぜか 26 という数字が目に入る。
車両の中に貼られたキャンペーン広告の番号も 「26」。
意識すればするほど、「26」の数字が目につくようになる。
ただの偶然か、それとも――。
そう考えながら、スマホを開く。
すると翌日新しいメッセージが届いていた。
「25」
◇
カウントダウンは、毎日一つずつ減っていく。
そして、その数字はスマホのメッセージだけではなく、日常の至る所に現れるようになった。
カフェの席番号、レシートの金額の端数、テレビのニュースの画面、車のナンバープレート――。
僕の周囲は「カウントダウンの数字」で埋め尽くされていく。
最初は気のせいだと思っていた。
けれど、気づいた。
これは偶然ではなく、僕に向けられている。
試しにメッセージを返信してみた。
「お前は誰だ?」
送信ボタンを押した直後、メッセージはすぐに既読になった。
しかし、返事はない。
その夜、夢を見た。
「24……23……」
暗闇の中、誰かが数字をカウントしている。
その声は 低く、遠く、けれど確実に近づいてくる。
◇
カウントダウンは、着実に減っていった。
【10】、【9】、【8】……。
そして、ついに、【1】になった日。
その日、僕は一日中部屋にこもっていた。
外に出るのが怖かった。
「0」になった瞬間、何かが起こる。
そんな予感があった。
深夜、スマホの画面を見つめながら、息を殺す。
23:59
秒針が進む。
0:00
スマホの通知が鳴る。
震える手で画面を見る。
そこには――
「0」
そして、メッセージがもう一通届いた。
「起きて」
次の瞬間――
部屋の電気が、勝手に消えた。
スマホの画面だけが、闇の中で淡く光る。
そして、耳元で囁くような声が聞こえた。
「……誰だ」
息が詰まる。
何も見えない。
だが、確かに 何かがすぐそばにいる。
僕はスマホの光を頼りに、慌てて部屋の電気のスイッチを探した。
スイッチを押す――
部屋に明かりが戻る。
何もいない。
ただの自分の部屋だった。
いつも通りの、何の変哲もない風景。
だが、一つだけ違っていた。
スマホの画面を見ると、新たなメッセージが届いていた。
「あなたのカウントダウンは終わりました」
そして――
「次は、あなたの大切な人の番です」
僕の背筋に、嫌な寒気が走った。
次のターゲットは 僕ではない。
じゃあ、誰がーー。
◇
翌朝、念のため友人や家族に連絡を入れた。
だが、誰も異変を感じてはいなかった。
気のせいだったのか。
あれは、何だったのか。
いや――
そう思いかけたとき、またスマホが震えた。
新しいメッセージ。
送り主は、昨日までとは違う番号だった。
画面を開く。
そこには――
「27」
(完)




