表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/102

「記録に残すべきかどうか」

 僕は、怪異を追いかけているわけじゃない。


 この世の不思議を解き明かそうとも思っていないし、超常現象を暴くことに興味があるわけでもない。


 ただ、気づくと、妙な出来事に巻き込まれている。



 僕の仕事は、フリーのライターだ。

 人に頼まれた記事を書き、取材をし、情報を整理するのが仕事。


 とはいえ、「書く仕事」なら何でも引き受けるタイプだ。

 芸能人のゴシップ記事を書くこともあれば、地方のグルメレポートをまとめることもある。

 都市伝説や、奇妙な事件の取材をすることもある。


 だが、僕自身は特に怪奇現象に執着しているわけじゃない。


 それなのに、なぜか――そういう話に巻き込まれることが多い。



 たとえば、ある村では「この名前を呼んではいけない」と言われた。

 ある町では「四人掛けの席に五人目が座ることがある」と聞いた。

 あるアパートでは「昨日までなかった部屋が増えている」と訴える住人がいた。


 普通なら、「そんな話があるんだな」で終わる。


 けれど、僕の場合は少し違う。


 それらの現象が、実際に起こる。



 だから、こうして記録を残す。


 取材の記録として、記事の一部として、あるいは……忘れないために。


 けれど、時々思うことがある。


 「これを記録に残していいのか?」



 たとえば、写真だ。


 僕には、「写真の中に入る」という能力がある。

 どうしてそんなことができるのかは分からないし、そもそも、いつからできるようになったのかも覚えていない。


 ただ、ひとつだけ言えるのは――


 写真の中には、本来いるはずのないものがいることがある。



 それを「知ること」は、本当にいいことなのだろうか?


 もし、この記録が誰かの目に留まったら?

 もし、これを読んだ誰かが、「そちら側」に引き寄せられてしまったら?



 ……まあ、考えても仕方がないか。


 どうせ、興味がない人には関係のない話だ。


 けれど、もし。


 「最近、奇妙なことが続いている」と感じることがあれば、注意したほうがいい。


 それはもしかしたら、すでにそちら側に片足を踏み入れているのかもしれないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ