表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説どもの眠り場

この空を、微笑みと名付けたい

作者: 那須茄子
掲載日:2025/03/14

 病院の屋上には、静かな風が吹いていた。

 青空の下、私は、弱りきった幼馴染みと共に座っていた。


「みぞれ、今日はどう?」


 私は優しく問いかけた。


「うん、今日は少し楽だよ。でも、もう長くはないって先生が言ってたんだ」


 みぞれは静かに答えた。

 私はみぞれの手を握りしめ、涙をこらえる。


「そんなこと言わないで。まだまだ一緒にいようよ、二人で」


 みぞれは私の手を握り返し、微笑む。

 力ない笑みではあるけど、いつもの優しい笑い方だ。


「ありがとう。あなたがいてくれるから、私は幸せだよ」


 そんな言葉を聞いてしまっては、私は何も言うことが出来なくなる。

 ずるい。私は今にも溢れ出しそうな涙を必死にこらえた。


 私は誤魔化そうと、再び空を見上げた。

 「今日はやけに青が透き通っているね」と不自然にならないよう前置きして。



 しばらくの間、言葉を交わさずに空を見上げていた。

 風が髪を揺らし、鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。


 みぞれがふと、私の名前を呼んだ。

 

「どうしたの?」

「あのね」

「何?」

「私ずっと、あなたのことが好きだった。あなたと過ごした時間は、私にとって奇跡だよ」


 私は思わず魅入った。

 そう言ったみぞれの言葉は、空から降る日の光に照らされるより、温かくて綺麗な音だったから。



 気付けば、私の頬は濡れていた。

 泣きたくなかったのに、堪えられず泣いてしまう。


「わ、私もずっとずっと好きだった。みぞれが私を好きなのと同じように」



 みぞれはその白い指でそっと、私の頬を拭い、そのまま顎に手を当てた。


「知ってる。あなたの気持ちもずっと前から」


 みぞれの顔がゆっくりと近づく。私もみぞれに近づく。

 

 唇を重ねた。

 その瞬間、世界が止まったかのように感じられた。



 みぞれの唇は冷たく、私はその冷たさに驚いた。


「……みぞれ?」



 いくら待ってみても、みぞれの声は聞こえてこない。

 瞳は閉じられ、静かな微笑みがその顔に残っているだけだった。まるで、空に向かって微笑んでいるみたい。

 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ