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【SF 空想科学】

完璧な進化が出来る生物

作者: 小雨川蛙

 

 その生き物は生物学的に見て素晴らしい優等生であった。

 干ばつが起これば水が不要な進化をし、反対に洪水により土地が沈めば魚のように水で生きられる体に進化をする。

 つまり、あらゆる世界の環境に対応することが出来るのだ。

 そんな生き物を発見した人間はそれらを捕えて、自分の庇護下に置いてあらゆる環境でどのような進化をするかを観察していた。

 淡水で、海水で、洞窟で、亜熱帯で……あらゆる人工的な環境に生き物を放ってどう成長していくかを見守っているのだ。

 もう随分と長い間。

「完璧な存在ね」

 研究データを見た科学者が言うと同僚が頷いた。

「あぁ。寿命こそ短いが、反対に言えばそれ故に進化の試行回数を増やせるということなのかもしれないな」

 彼の言う通りだった。

 この生物が人間により造られた環境に封じられてから、まだ数十年ほどだったが既に記録にある最初の姿と現在の姿はかけ離れており同じ生物だとはとても思えない。

 いや、それどころか同時並行で別の環境に置いている同世代の同種とも全然姿が違う。

「私達、人間が滅びた後に世界を支配するのはきっとこの子達なのでしょうね」

 どこか憂いに満ちた声で呟いた科学者の言葉を知ってか知らずか、その生き物たちは造られた世界の中で餌を食み続けていた。


 程なくして人間は滅び、造られた世界に生きていた生き物たちは皆、解放された。

 そして、僅かな期間を経てその全てが滅んでしまった。

 科学者たちの予想を完全に覆す形となったが、その理由は実に単純だ。

 つまり、彼らは人間によって造られた世界に完全に適応してしまったのだ。

 そんな存在が自然の世界を生きられるはずもない。

 このあまりにも悲劇的な結末と自らの罪深さを知らずに逝けた人類はある意味では幸運だったかもしれない。


 本来、支配者となるはずだった生物が消えた世界で、今日もあらゆる生き物が生存をかけて競い合っていた。

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