表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

口裂け女は海にいる

作者: 蠍大王ハブ

単発ネタです


「私、綺麗?」


口裂け女?今2024年だぞ?マスクをした美人がこちらに顔の良さを聞いてくる。身体から変な汗が出てくる。こんなところで会うのか?普通そんなことないだろ!なんで、なんで… 海に口裂け女がいるんだよ…


俺は勉学程々高校2年、舞踏谷。映画部の副部長をやっている。本日は撮影地である勉強程々海浜公園で下見をしている。海に入る気もないので水着も持ってきてないが、夏休みということもあって人が多いな…とふらふら海を彷徨っていると、声をかけられた。…口裂け女?


俺が目の前にいる女性が口裂け女だと確信した理由。まず海で白マスクをしていること!海に白マスクをしている水着姿の女性はいない!たとえコロナ禍であろうともいなかった!あとなんで白マスクに合わせて水着も白なんだよ!


そして二つ目の理由。マスクのサイズが合ってないのか、裂けてるところがちょっと見えてる… 小顔だからと無理をして小さめのマスクを買ったのだろうか。別に綺麗なんだから普通のマスク買えばいいじゃないか。


こんな異様な光景においてはまず質問しよう。質問しないと謎は解けない。


「私、綺麗?」

「あ、ごめんなさい。僕先に質問したいことがあって」

「? いいけど」



「なんでここにいるんですか?」

「なんでって、海楽しいから…」

「貴女口裂け女でしょう?口裂け女って海いていいんですか?」

「…」


黙る口裂け女。この沈黙が怖い。何せ相手は口裂け女。人殺しタイプの口裂けだったら終わりである。頼むから人殺さないタイプであってくれ!


「ちょっと岩陰に行くよ、君と話したいことある」


これは死の宣告?辞世の句でも書くか…

いわかげに…

「別に君のこと殺したりしないから。ちょっと来て」


…助かったのか?俺の心を見抜いていたのか?


「…どこで気づいた?」

「マスクしてるとことそのマスクから裂け跡が見えちゃってるとこ」

「私とんだ間抜けじゃない…」


凄くがっかりしている。あまり怖くない人なのだろうか。むしろ可愛い寄りの人なんじゃないだろうか。


「ていうかなんで口裂け女が海にいるんですか?駅前とかで頑張るもんじゃないんですか」

「その説明をするにはまず私たち怪異のライフスタイルについて話すわ。怪異は人の恐怖の感情を糧にして生きているの。でもかなり前かしら、怪異の中でベーシックインカム的なのが導入されて恐怖の感情なしで暮らせるようになったのね」


ベーシックインカム!?そんな先進国的制度が怪異という得体もしれない物体が初導入したのか。それは凄い、凄いが…口裂け女が横文字使うのなんか萎えるな…


「でも最近、『怪異としてちゃんと人を驚かせた方がいい』って思うようになって」

「で、海に来たわけと…」

「うん」

「うんじゃないよ、だからって海で〜とはならないでしょ、なんで地上でやんないんですか」

「今時駅近でやってビビると思う?」

「いやまあビビりはしますけど」

「…でも口裂け女が海にいるっていう事象がビックリじゃない?驚いたでしょ、絶対に」

「そりゃあ驚きはしましたけどそれ恐怖っていう感情ゼロですからね」

「えっそうなの?」


がっかりしている。都市伝説とか関係なしにこの人は世間からズレているようだ。変な人である。


「だってびっくりさせないとメンツ保てないし…」


この人、変な口裂け女っていう認識じゃないと恋をしてしまいそうだ。身体も綺麗だし…あと俺口裂けてるの割といけるんだな…


「ていうか君も海に来る格好ではないよね。水着着て来なよ」


今度はこっちに質問してきた。最近の口裂け女って自分のこと以外にも目を向けるのか。いい心がけだ。簡単に説明をしてやろうじゃないか。


「へぇ…映画部ねぇ…映画…ふーん…」


映画好きなのだろうか。という予想は外れ、


「君。名前なんて言うの?」

「舞踏谷です」

「舞踏谷君。ホラー映画とか撮ってたりする?」

「ホラー映画ですか。部長が好きなんで撮りますけど」

「ねぇ、私が主役のホラー映画作ってくれない?」


…はい?


「ギャラはいらないからさ、私が怖いってところを文化祭でもなんでもいいから見せびらかせてよ」

「えぇ、いきなり言われてもそんなん俺一人の一存では決めれないですよ」

「んー、じゃあここ撮影来るのいつ?部長もいるんだったらそん時話をしようじゃない」

「再来週の火曜ですけど」

「ふんふんふん…予定無いから大丈夫そう!よし、じゃあ決まりね!」

「まだ決まってないですよ」

「私みたいな逸材を君たちが見逃す訳がないでしょ!全く!全く!よし!今から役作り頑張っちゃうよ!舞踏谷君、手伝って!」

「だからまだやるとは言ってないですって!…そういえば口裂けさんって名前あるんですか?」

「私?私の名前はアリス・キャンベル!よろしくね!」


口裂け女めちゃくちゃ外国人の名前だ…

「ともかく、私の超怖い映画作ろう、ね!いいでしょ!私頑張るから!お願い!」


…なんとなく、この人と映画が撮りたいと思った。気の迷いかもしれないけど。だいぶ俗っぽい人だが…口裂け女と映画が撮れるのは価値のあることだ。部長にNOと言われても強行撮影する気でいよう。まあ部長も俺と同じようなものだからウキウキで撮影するだろうけど。


…面白くなりそうだ。


物語かきかきリハビリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
口避け女さんのイメージが、ガラリと変化して読んでいてほのぼのしました。対話が出来る事にも本名が在る事にも出没エリアを考えておられる事にも後、水着を着こなしていらっしゃっる事にも、新鮮さが感じられます。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ