第6話「束」⑥
『感情』の動きでも力の威力は変わるのか。
さっきは、【嬉しさ】で威力が強くなった。
仕返しができたから?
力を試せたから?
強さを実感したから?
圧倒的な力でねじ伏せたから?
人を殺したから?
何で嬉しかったんだ?嬉しいことなんて……
寝よう。
今日は決行日、やっとだよ。
そもそも、罠であるという可能性も捨てきれない。
だから、気を引き締めていこう。
そして、あいつに会ったら、同じ目に……
???「偶然じゃ、なさそうみたいだね。」
「お前は誰だ?」
???「自分は十津川 廉。
君が こ・ろ・し・た 人の兄だよ。」
「お前、何で僕の家族を殺したんだよ。
なんでだよ!!」
廉「いや、君が弟を殺したからじゃん。」
そのとおりだ。僕は十津川(弟)を殺した。
廉「何で僕がここに来たと思う?」
「何でそんなヘラヘラしてられるんだ?」
廉「質問に答えろよ……。」
「……」
廉「まあ、いいや。弟を埋めて、幽霊としてでるようにするためでした。」
「そうか……。もう、この辺にしとこう。
どうせ、殺るんだろ。いくぞ…。」
廉「自分は別に復讐心なんてないよ、そもそも、
君があるから、来たんだろ。付き合ってあげるよ。」
「そうか。なら、『捻じる』」
【グキッ】
廉「痛いな、骨が折れたみたい。なら、『飛ばせ』」
「は?」
【ドンッッッッッ】
飛ばせ?離せの派生か?強い。
「捻じる」
廉「すごいね。飛ばされた進行方向を捻じって
もとの場所に戻るなんて」
「……」
「引き千切る」
廉「痛いな……。」
なんで、すぐに反撃してこないんだ?どうでもいい。
廉「ほら、来いよ。」
「根を捻じる」
【ボコボコッ……ガラガラガラ。】
廉「ねっこを、捻じ、って、」
「捻じる」
【バキッ】
「捻じる」
【グキッ】
「捻じる」
【メキキキッ】
廉「そろそろだね。この【痛み】は
力を強くする……」
廉「じゃあ……とって、お、き、の……、やつを、
【別れる】
バタッ
僕は人を傷つけ、人を痛めつけ、人を殺した。
僕は力に酔っていた。力があるのはこの世界の
主人公だ。自分は主人公だ、そう思ったが、
僕は主人公じゃなかった。
力は必要無かったんだ。何か特別な物が欲しかったんだ。まあ、案外楽しかった。力はとても面白かった。
あ〜。何やってたんだろ。
もっと、密かに生きていれば……
まあ、これも人生。
楽しかった。でも、苦しかった。