第3話「束」③
止血は力でしたが、早く治療しなきゃ。
【ハナ…レ、ロ…】
ん?離れろ?幻聴だろう。もうここには誰もいないはずだ……気のせいだろう。早くここを出よう。
【ガチャ】
ここは、山か。下に町がある。降りて病院を探そう。
医者「あんた〜、よく耐えたね。ほら、これで
大丈夫。」
「ありがとうございます。」
家に帰ろう。こんなこと、辞めとくべきだった。
それに自分以外で力がある人がこんなに身近にいるなら、憶測だが、思っている以上にいると思う。
今は、そんなこと、一回忘れよう。
早く、ご飯が食べたい……。
あれ?こっちで道合っているはずなのに、
勘違いしてたのか?疲れているからか、
うわ……水溜まりがあって通れない。
仕方ない。水溜まりを通るか……
工事中?遠回りするか、
事故が遭ったのか、ここも通れないか。
家までの道が遮られている。偶然だよね?
ここは……大丈夫だ!ここを通ろ…
ドンっ!!
轢かれた……のか。
ピーポーピーポー
ここは、病院?
看護師「意識戻りましたよ。」
医者「特にといった、怪我はありませんが、
何かあったら教えてください。」
「分かりました」
轢かれることなんか、今までなかった。
偶然にしては、おかしいような気が……
さっきから、家に近づくと悪いことが起きたり、近づけなかったりする。力の仕業か?それなら、誰が……
十津川ならさっき、殺したから、ありえない。
そうだ。人を殺したんだ、僕は。助かった嬉しさと傷の痛みで意識していなかった。
殺したのか、人を。殺されかけたとはいえ、人を殺したんだ。
僕は、、、人を
違う!!殺してなければ、今、僕は生きていない。助かるために殺したんだ。
殺しちゃったんだ!
今は家に帰ることが最優先だ。
少しずつだけど、家に近づいている。
なんか、この辺、焦げ臭い。力の仕業か?
いや、違う。家だ。誰かの家が火事だ。煙が見える。
【何だこの胸騒ぎ……】
【この角を曲がれば、家が見える……ああ、疲れた。母さん、父さんにこの怪我どう言い訳しよう。まあ、いいや。】
「?????????」
「僕の家が燃えてる……?」
救急隊員「重体だ!!急げ!!」
「あ……」「母さん……父さん……」
???「あ〜あ。君が家についちゃったから。
君が殺したんだよ」
「誰だ……」
「あれ、もういない、」
医者「残念ながら、命が助かりませんでした。」
警察「こんなところに申し訳ないけど、事情聴取受けてください。」
死んじゃったのか、、、、、、
こんなことになるなら、力なんていらなかった。
あれは、力の仕業だった。
家の近くにいた、あいつがやったんだ。
あ。
あの時だ……十津川を殺したあと、【ハナレロ】って聞こえた。あそこにはもうひとりいたんだ。
十津川の身内に力を持つやつがいるか聞いたとき、黙ったのはその場にいたからだ。もし、言ったらその場にいることを想定され、正体がバレるかもしれないからだ。
あの時、気づくべきだった。十津川の力の異変に。
物体のスピードが初速からマックスであったのは、
仲間と力を抑え込み合うことで、始めから、最大の力を出すことができたんだ。
手の鎖も勝手に離れたのはそいつの仕業。
十津川の「近づく」を抑え込めるのは逆の力の
『離れる』
ヤツの力は『離れる』
家と離れさせるために力を使い、
家についたことで家の存在をなくせば、離れることができる、だから、家が燃えた。
家族のいない家は家でない。家という存在は僕の中から消えた。
【殺してやる。許さない……
僕の家族を奪ったやつを。】