脱ぎたてホカホカ
「じゃあ、さっそく~」
そう言ってダー子はスカートの横をたくし上げ、ゆっくりとパンティを脱いでいく。
ともすれば局部が見えてしまいそうなその挙動に、流石の俺も興奮を禁じ得ない。
……いや、この場合チラリズム要素は重要ではないか。
一番重要なのは、目の前で女子が衣類を脱いでいるという状況だろう。
実際、男は見える見えないに関わらず、脱衣という行為そのものに対して興奮を覚えるものだ。
扉一つ向こうで女子が着替えているという状況だけでもドキドキしてしまう悲しい生き物……、それが男。
さらに上級者であれば、着脱の際に生じる衣擦れの音すらオカズになるのだという。
俺はそのレベルの変態ではないし、そういった性癖があるワケではないが、それでも興奮してしまうのはやはり脱衣の神秘性ゆえと言わざるを得ない。
人は普段見ることのないモノや光景に神秘性を感じるものだ。
そして男にとって、女体にまつわるモノは漏れなく神秘そのものなのである。
つまり、着替えや脱衣は勿論、TKBや下着、女湯に女子更衣室、女子トイレなどに惹かれるのは必然!
全ての男が変態なのは、隠された神秘を暴き(覗き見)たいという冒険心の現れ!
俺達は、生まれながらの冒険者なのだ!
「……ん? どうしたダー子、少し顔が赤くないか?」
「だ、だって、あーしがパンティ脱いだだけで、なんかすっごく壮大なこと考えてるから……」
「神秘の前に心躍るのは当然のことだろう?」
「~~~~っ、と、とにかく、はい! お待ちかねのおパンティーだよ!」
学校にいる間も終始トロンとしていたダー子が、ここにきて照れた様子を見せるのはどうしてだろうか?
パンティを脱ぐときすら恥じらいを見せなかったというのに……
まあ、理由はわからんが結果的にはオールOKだ。
足りなかった「恥じらい」というスパイスが加わることで、この脱ぎたてホカホカのパンティは今この瞬間最高品質となった。
「素晴らしい……」
生暖かいピンク色の下着を隅々まで観察し、思わず感嘆の声を漏らす。
これをあの神奈川先輩が履いており、さらにダー子まで履いていたと考えると、神々しさすら感じる。
「うぅ……、龍ちん、やっぱり変態さんだよ……」
「何度も確認せずとも、俺はしっかり変態だと自覚しているから悔いることはない」
中高生くらいだと、まだ自分を変態だと思われたくないという感覚があるものだが、俺はその点完全にオープンだ。
むしろ、変態であることに誇りを持っている。
「ぷぷッ、やっぱり龍ちんは面白いなぁ~。歪みないって感じがする~」
「面白いかはわからんが、裏表のなさには自信があるぞ」
「だね~。少なくともあーしが見てきた人間の中では、一番表裏ないかな~?」
そう言われると悪くない気分だが、ダー子はこっちに来てまだ間もないので比較対象が少なすぎる。
いずれその評価も変わっていくだろう。
「それで、パンティあげたのはいいんだけど、実際ソレどうやって使うワケ~?」
ダー子が、先程コンビニで買った黒いパンティを履きながら尋ねてくる。
脱ぐのもドキドキだが、履くのもまた素晴らしいな。
「ふむ、一般的な使い方としては、嗅いだり被ったりといったところだ。少しマニアックになると、口に含んだり、色々擦り付けたり、或いは自分で履いたりするケースもある」
「うわぁ……」
ドラゴンもドン引きなようで、何故か少し誇らしい。
「そ、それで……、早速、嗅ぐの?」
「いや、こういう性的嗜好品はコッソリ一人で楽しむのが普通だ。流石にダー子の前ではやるつもりはない」
「そっか~」
何故か少し残念そうなダー子。
なんだ、自分の履いていたパンティがどうにかされるのを見たかったのか?
「そ、そんなことはないけど~! ただ、あーしの履いてたパンティがどういう風にされちゃうのかは、少し興味あるかもって~」
「まあ、確かにそこは気になるだろうな。しかし安心しろ。俺も一般的な男の感覚として嗅いだりはするだろうが、それ以上のことはするつもりがない」
「そうなの?」
「ああ。理由としては簡単で、このパンティは最終的にダー子へ返すことになるからだ」
「え? ど、どして?」
「いや、決して不満があるワケではないぞ。ただ、毎日違うパンティを提供するというのは流石に不可能だし、ある程度ローテーションすることが考えられるからだ」
毎日違うパンティを貰い続けるとなると、いずれ俺の部屋はパンティだらけの犯罪者チックな部屋となってしまう。
流石の俺もそれは嫌だし、経済的な理由でも正直厳しい。
となると、やはり返却することでローテーションを組むという考えに至るのは必然だ。
そして返却を考えるのであれば、迂闊な行為はしない方がベターだ。
俺の手元にある時間が長ければ長いほどギャルのパンティという本質が失われることとなるため、一晩愉しむ程度に抑えるのが賢い運用方法と言えるだろう。
「な、なるほど~」
とりあえず一通り愛でたら、今夜は枕の下にでも仕込むことにしよう。
きっと良い夢が見れるに違いない。
「う~ん、なんかまたエッチなこと考えてるっぽいけど、それなら普通にあーしと一緒に寝れば良くない?」
「それはダメだろう」
「どして? 一応あーし、龍ちんの所有物ってことになってるんだよ?」
「それはあくまでも設定上というだけの話だ。現時点で、俺はまだ現実味がない話だと思っている。それは今日俺と初めて会ったダー子も同じだろう?」
「ん~、あーしはこっちに来れて凄く嬉しかったから、龍ちんにならナニされても全然お~け~だよぉ?」
クッ……、これは中々にパンチ力のある殺し文句だ。
一瞬持ってかれそうになってしまったぞ……
「……その気持ちは嬉しいが、なんでもしていいからと言って本当になんでもしてしまえば、待っているのは信頼の失われたカタチだけの関係だ。俺は自分の所有物は大切にしたいし、可能な限り良好な関係を築きたいと思っている」
「それはつまり、あーしを大切にしたいってこと?」
「まあ、そうなるな」
自分で言ってて少し恥ずかしくなったが、ダー子に偽証は不可能なので本音で語らずを得ない。
俺は今初めて、ダー子の能力を厄介と感じた。
「ふふ~♪ やっぱりあーし、龍ちんのこと普通に好きかも~♪」
しかし、本当にチョロいなこのドラゴン……