口の中へ……
ダー子が現れたことで少なからず動揺し頭の隅に追いやられていたが、俺の願いはあくまでもギャルのパンティだ。
それを踏まえればダー子は付属品でしかなく、肝心のパンティは未だ俺に渡されていない。
「あ~、それなんだけど、できれば少し待って欲しいかも~」
「ん? ああ、そんなことであれば何も問題無い。むしろ、今渡される方が困るな」
もし今そんなモノを渡されれば、文字通り持て余すことになるだろう。
ナニをするにしても学校では利用場所が限られてくるし、何よりリスクが高い。
「良かった~♪ いくらあーしでも、流石に半日ノーパンはちょっとハズいからね~。それに、注文にあった時系列? っていう問題もあったから~」
「っ! そうだ、それも気になっていたんだ。そもそもダー子は、その制服や下着をどうやって手に入れた?」
ゴッちんことゴッドドラゴンは、現存物はコピーするカタチでしか用意できないと言っていた。
それはつまり必ずコピー元が存在するということなのだが、ダー子の抜群のスタイル――厳密に言えば胸のサイズが収まる既製品があるとは思えない。
所々弄った形跡もあることから、十中八九この学校の生徒の制服をコピーしたと見て間違いないだろう。
そして、そうであれば必然的に候補は限られてくるワケで……
「それは~、あーしが人化したときの体型と一番近い子のをチョイスしたんだよ~。確か、神奈川って子ぉ?」
「っ! やはりか!」
神奈川先輩は、この学校で最も胸が大きいと噂される3年の先輩だ。
顔も中々に美人で性格も温和なことから、男子人気トップ3に数えられている。
そんな神奈川先輩の制服や下着となると、一粒で二度美味しい神器なのではないだろうか。
「あ~、期待しているところゴメンだけど~、コピーって言っても材料や組成物を参照してコピーされるから、匂いとか汚れとかは再現されないよ~」
「……そうか。それは残念だが、神奈川先輩の着用しているモノと同じだというだけで妄想が捗るので大きな問題はない」
「あはは~、龍ちんは変態さんだね~」
「違うぞダー子、男はどんなに取り繕おうとも皆等しく変態だ。それをオープンにするかしないかの違いしかない」
昨今は草食系男子なども増えているのは間違いないが、実際はリアルに興味が薄いだけで性欲自体はあるというケースがほとんどだ。
それをオープンにするかしないかで、ただのスケベとムッツリスケベの違いがあるだけである。
さらに言えば、決して表に出せないような性癖を持つ者も少なくない。
オープンにしている部分は表向きの仮の姿で、実はアブノーマルな変態というケースも多々ある。
「ふ~ん、なんだか、いつになっても人間は業が深い生き物だね~」
「その口ぶりだと、この世界の歴史は知っているようだな」
「1000年くらい前は、もう少し夢幻界とこの世界は近い関係だったんだよ~」
「ほぅ、それは興味深い……っと、少し話が逸れたな。話しを戻そう。ダー子の制服や下着は、神奈川先輩が着用しているもののコピーであり、それはつい数時間前に生成されたもの、ということだな?」
「そうそう。正確には~、神奈川ちゃんの一年生のときのだけどね~。だから、ちょっときつめだったり~」
「一年生のときの……? わざわざ制服ごとコピーせずとも、リボンだけ一年のものを用意すれば良かったんじゃないのか?」
この学校の女子の制服は、学年ごとにリボンの色が変わる。
しかし制服自体が変わるワケではないので、制服だけ3年生のモノをコピーし、リボンは別途一年のものからコピーすれば問題無いハズだ。
「アレはね~、実はそうポンポンとやっていいヤツじゃないから~、そーいう細かい調整はできないんだよね~」
「ゴッちんの言っていたルール的な問題か。やはりイマイチ使えないというか、融通の利かないヤツだな」
「そんなこと言っちゃダメだよ~? ゴッちん怒るよ~?」
「怒られはしなかったが悔しそうな顔はしてたな」
「あ、もう言ったんだ……」
ぐぬぬ……とわかりやすい反応をしていたが、見た目がドラゴンなので唸っているようにしか見えず、少し怖かったので印象に残っている。
「ともかく、ダー子の言いたいこととしては、現状ダー子の履いているパンティはまだ生成されたばかりであり、時系列的な見かたをすれば「神奈川先輩の所有しているパンティと同じデザインの新品」でしかないということだな」
「そ~いうこと~。それで聞きたいんだけど~、龍ちん的にはどのくらい履いていればあーしのパンティ判定になるワケ~?」
「ふむ、明確な判断基準はないが、新品なのであれば半日も履いていれば自分のものだと言っていいのではないか?」
ダー子の手に渡った時点で所有者はダー子となるが、新品のままだと正直「ダー子のパンティ」とは言い難いものがある。
やはり一定期間以上着用されてこそ、その者の所有物として定着したと判断するのが普通だ。
その一定期間を大まかに半日と定義したのは、あくまでも俺の感覚の問題だ。
だから人によって基準は曖昧となると思うが、俺の感覚では他人に下着を貸したとして、半日も履かれたらもうソイツのものでいいやという気分になるので半日という時間設定にしただけである。
「それじゃあ、家に帰ってから渡せば丁度良さそうだね~」
「時間的にはそうだが、まさか俺の家に来る気か?」
「そりゃそうだよ~、あーしは一応龍ちんの所有物扱いだから、一緒に住むことになるよ~?」
「…………」
簡単に言ってくれるが、中々に衝撃的な案件である。
このムチムチ黒ギャル美少女と一緒の家で暮らす? 性癖が壊れかねんぞ?
「もう一つ確認しておかなければいけないことに気付いた。俺の願いはあくまでも『ギャルのパンティ』だが、その「ギャルの」という条件を満たすためにオプションとしてダー子が付いてきた。これは間違いないな?」
「そうだよ~」
「じゃあ聞くが、先ほどからダー子が言っている所有物とは、具体的にどういう扱いとなる? というか、ゴッちんは一体どういう条件をダー子に与えたんだ?」
いくら所有物だからといって、何でもしていいとはならない――と俺は思っている。
むしろ、自分の所有物なのであれば大事に扱うべきだ。
それに、ダー子にはしっかりとした自意識がある。少なくともそれを無視するような行動はしたくない。
「んふ~、やっぱしソコは気になるよね~♪ じゃあ、そのお弁当のオカズ何かくれたら教えたげる~」
「守秘義務とかはないのか? こんなモノであれば全然構わないが……」
「ん~、秘密にしろとは言われてないし~? 多分大丈夫~。ってことで、じゃあそのソーセージ? ちょうだ~い」
ダー子が指さしたのは俺のソーセージ――というと卑猥に聞こえるが、もちろん隠喩的なものではなく弁当に入ったウィンナーに興味があるようだ。
俺は弁当を自分で作っているのでオカズにもこだわりがあり、このウィンナーも〇ャウエッセンなので当然美味だ。
少し名残惜しくはあるが、2本あるので1本くらいあげたところで何も問題はない。
俺は弁当箱ごとダー子に渡そうとして、思わず目を見開く。
「あーん♪」
なんと、ダー子が口を開いて「あーん」をしていたのである。
そのあまりの扇情的姿に、俺はエッッッッッッッッロ! と叫びそうになったがギリギリで踏みとどまる。
ダー子はこれをわかっていてやってるのだろうか?
……いや、何の資料を参考にしたかはわからないが、流石にエロコンテンツを参考にしたとは思えない。
というか、ダー子は箸を持っていないのだから、この行動も別段不思議ではない気がする。……多分。
となれば、俺も邪な感情を持つべきではないだろう。
そう、無心だ。無心。
俺は無心でソーセージを掴み、ダー子の口の中へ挿入した。