走る十八禁
放課後になると、やはりゴッちんの周囲に人が集まり始める。
しかし、ダー子のときと比べると人数は半分以下に減っていた。
特に男子が少ないように見えるのは、やはり好みの問題なのだろうか?
好みを抜きにすれば、俺としてはダー子とゴッちんの美人度については互角だと思っている。
ただ、ダー子は愛嬌と色気を感じさせる顔つきであるのに対し、ゴッちんは人形のような精巧さと清純なそうな雰囲気を放つロリ顔だ。
どちらも美人なことには間違いないハズだが、種類が異なるため好みの分かれる領域でもある。
その点で考えると、ロリ顔が好みだと思われるのは若干リスキーであるため、今のところは様子見をしている者が多いのかもしれない。
さらに言うと、スタイル面――特ににおっぱいのサイズについてはダー子の方が圧倒的に勝っている。
この点だけでも、人気に差が出る大きな要因と言えるだろう。
昨今ぺちゃぱい及びちっぱい派も増えてはいるが、やはり巨乳派の方が多いのが現実だ。
こんなことを言うと女子からは嫌われるだろうが、おっぱいを男子の身長を置き換えて考えてみて欲しい。
恐らく大多数は高身長派なのではないだろうか?
低身長男子に人権がないと断ずるのであれば、おっぱいのサイズで切り捨てられることも受け入れるべきだろう。
撃っていいのは、撃たれる覚悟がある者だけだ。
「りゅ、龍ちんダメだよ~、あーしの方がゴッちんより優れているみたいなこと考えてるでしょ~?」
ダメだよと言いつつも、ダー子は満更でもなさそうな顔をしていた。
まあ、神より優れているという評価は最上級の誉め言葉と言えなくもない。
実際に格付けのあるドラゴンにとっては、「お前がナンバーワンだ」と言われたようなものなのだろう。
「……客観的な視点における事実だ。無論、時代や環境が違えば結論も変わってくるだろうがな」
なんとなく恥ずかしさが込み上げてきたため、つい水を差すようなことを言ってしまう。
しかし、国や時代が違えば、ふくよかな女性の方が美しいとされる価値観もあったのだ。
この先、価値観が逆転する可能性だって十分あるだろう。
……まあ、俺が生きているうちに変わるとも思えないがな。
「あの……」
「ん?」
ダー子とそんなやり取りをしていると、いつの間にかゴッちんが背後に立っていた。
背中の布をクイクイ引っ張っているようだが、その行動はもう完全に幼女じゃないだろうか?
「ダー子、この最高のシーンを映像に残しておいてくれ」
「え~、あーしスマホないよ~」
「俺のを貸すから、ホラ」
「あ・の!!!」
明らかに語気が強くなったので仕方なく振り向くと、笑顔の下に明らかな怒気を孕んだ幼女がいた。
「……感情が殺しきれていないぞ?」
「な・ん・の・こ・と・で・しょ・う・か?」
メチャクチャ顔を近づけて凄まれたので、俺はそのままキスを受け入れるよう目をつぶる。
「なっ!?」
俺の反応と脳内映像に驚いたのか、ゴッちんが身を退こうとする。
それを逃すまいと腕を掴み席を立った俺は、もう片方の手でカバンを掴みそのまま教室の外へ逃げ出した。
◇
「き、貴様! さっきのは何のつもりだ!?」
「奴等を撒くには丁度良かっただろう?」
「む……、確かに……。いやしかし! やり方というものがあるだろう!」
「別に、俺はあのまま本当にしても構わなかったんだぞ」
「なんだと!?」
無論俺にそんな度胸はないのだが、そんなことになるワケはないという自信はあった。
何故か好感度が高くなっているダー子であれば、もしかしたらあり得たかもしれないが……
「ちょっと~、置いてかないでよ~」
立ち止まってゴッちんと問答していると、遅れてダー子が走って追いついてくる。
決して速度は出ていないのだが、そうとは思えないくらいバルンバルンと盛大におっぱいが躍動している。
すれ違う男子だけでなく、女子もその暴れおっぱいに目が釘付けになっていた。
「走る十八禁だな」
「ドラゴンの恥め!」
「ハァ、ハァ……、え~? な、なんか二人とも酷くな~い!?」
荒くなった呼吸がさらにエロスを増している。
幸い俺達の周囲には誰もいなかったが、もし男子生徒がコレを見たら色々ヤヴァイことになるに違いない。
その証拠に――
「ハァ……、あれ? 龍ちん、なんで前屈みになってるの~?」
「ゴッちんに聞いてくれ」
「何故そこで我に振るのだ!?」
「ゴッちんの口から発せられることに意味があるからだ」
文学少女(ロリ)の口から卑猥な単語が発せられれば、ギャップで萌え萌えになるに決まっている。
是非やって欲しい。
「絶対言わんからな!?」
「も~、二人で盛り上がらないでよ~! あーしも混ぜて~!」
「ダー子が口にすると萌えよりも圧倒的にエロスが勝るためダメだ」
「え~!?」
これ以上の刺激は色々とマズイのだ。
「貴様というヤツは……。まあいい、それより、我をどこに連れてくつもりだ?」
どうやら、流石のゴッちんもこれだけ頭がピンク色の状態だと思考を読めないようだ。
いや、もしかしたら刺激が強すぎるから敢えて見ていないのかもしれない。
もちろん仮定ではあるが、この情報は頭の隅に留めておこう。
「ゴッちんは俺の願いを叶えるために来たのだろう? であれば答えはわかるハズだ」
そう、言うまでもなく向かう先は図書室である。




