嫌な顔しながら目の前で黒タイツを脱いで手渡して欲しい
俺の二つ目の願いである「文学少女の黒タイツおーくれ!」は、当然だが元ネタである〇ラゴンボールに存在していない願いだ。
文学少女という言葉が生まれたのは100年近く前だが、比較的よく耳にする様になったのは昨今のことである。
ド〇ゴンボールが連載されていた頃はまだ「萌え」という概念も一般的ではなかったので、文学少女のような少しマニアックな萌え属性は大きな声で口にすることはできなかっただろう。
また、黒タイツにしても一般的には男ウケが悪く、マニアックなイメージが強かったようだ。
今ではどちらも愛好家(萌えとしての)が増え、立派に一ジャンルを築けているのだから良い世の中になったものである。
ということで、今回の俺の願いは元ネタにアレンジを加えた内容ではあるものの、今風に改良を加えたことでより変態度が高くなっていると言える。
それでいてパンティよりも直接的でない分性的要素が抑えられているため、女性にも配慮した素晴らしい願いだ。
「え~? むしろドン引かれるんじゃないの~?」
「それはそれでいい。で、ゴッちんはどんな反応をしたんだ?」
「なんか、あんぐり口を開けて固まってたよ~♪ あんなゴッちん、初めて見たよ~♪」
ダー子はゴッちんの間抜け顔を思い出したのか、楽しそうに笑みを浮かべている。
狙い通りの反応だが、直接見れなかったのが少し残念だ。
「フフン、ゴッちんを困らせられたのなら大成功だ」
「もしかして龍ちん、ゴッちんをからかうためにあんなお願いしたの~?」
「いや、その狙いももちろんあったが、あくまでも本命は文学少女の黒タイツだ」
実際のところ、俺自身はそこまで文学少女も黒タイツも好きというワケではない。
いや、好きは好きなのだが、癖にクリティカルヒットするようなレベルには達していないということだ。
じゃあ何故そんな願いにしたかというと、単純にギャルとは真逆の存在にしたかったことと、それに伴いどんなドラゴンが現れるか気になったからだ。
「ゴッちん、ちょ~困ってたよ~」
「だろうな」
ダー子の話では、ゴッちんは頼れる友達が少ないのだという。
一つ目の願いのときは仕方なくダー子に頭を下げて頼んだようだが、今回はどうするつもりだろうか?
少ないということは一応存在するということであるため、今回も友人が派遣されてくる可能性が高い。
プライドの高い(らしい)ゴッちんのことだ、まさか用意できないなんてことはないだろう。
ねぇ? ゴッちん♪
「ちなみに、来るとすればどんなドラゴンが来ると思う?」
「えっと……、可能性があるのは~、ブラックドラゴンのブーちゃんと、ニーズちゃん……、あとはもしかしたらリンゴちゃんかなぁ……」
「リンゴちゃんというのはよくわからないが、ニーズちゃんとはもしかしてニーズヘッグのことか?」
「うんうん、ニーズちゃんはこっちの世界の神話から生まれた子だね~」
「っ!?」
神話から生まれた……、だと……?
それはつまり、人類の創作物から生まれたということだろうか?
一部の人間からは怒られるかもしれないが、俺は神話をただの創作物だと思っているので、そうとしか考えられない。
「そだよ~。夢幻界って文字通り夢とか幻から生まれた世界らしいからね~」
「……いや、それはおかしくないか? ダー子達ドラゴンは人間の歴史よりも長く生きているんだろう?」
「それね~、なんか時間の流れがコッチとは全然違った時期があったみたいで、何万年も先に進んだみたいなことゴッちんが言ってた~」
……時間の流れが異なる、か。
まあ、現状でも十分ファンタジーな状態なので「そんなこともあるか」としか思えない。
「その言い方だと、今は同じ時間の流れなのか?」
「うん。なんかそのせいで夢幻界が崩壊しかけたとかで、修正が入ったんだって。あーしはその頃まだ生まれてなかったから、全然知らんけど~」
……気になるワードがポンポン出てくるから、一々ツッコんでいたら話がどんどん逸れていくな。
とりあえず、一旦話の流れを戻すとするか。
「まあ色々あることはわかったが、要は俺の知識にあるドラゴンが存在している可能性もある……ということだな」
「そゆことだね~」
ということは、恐らく見た目についても俺の想像した姿と食い違いはないかもしれない。
……ただ、ダークドラゴンにブラックドラゴンにニーズヘッグが友達って、なんく黒々しいのばかりな気がする。
ゴッちんも陰キャ気質っぽかったし、性格とか趣味とかが関係しているのだろうか?
「そういえば確かに真っ黒な子が多い気がする~。あ、でもリンゴちゃんは違うよ?」
リンゴ……、か……
さっきまでは想像できなかったが、神話のドラゴンが実在するということであれば、もしかしたらリンゴちゃんとやらはラードーンなのかもれないな。
「その三匹……いや、あえて三人と言っておこうか――は、どんな奴等なんだ?」
「ブーちゃんは、あーしのお姉ちゃんみたいな感じ~? 無口だけど面倒見がいい子だよ~。ニーズちゃんはいっつもツンツンしてるけど根はやさしい子で~、リンゴちゃんはいつもリンゴ畑に引きこもってる~」
「ふむ、要するにクーデレとツンデレと陰キャか」
「あ~!? またそうやって怒られそうなこと言う~!」
そう言われても、聞いたままの感想なので他に表現しようがなかった。
「でもまあ、リンゴちゃんはリンゴ畑から出たがらないから、可能性は低いと思うな~。ニーズちゃんも嫌がりそうだし、やっぱりブーちゃんが一番可能性高いと思うよ~」
つまり、クーデレ文学少女か。
……アリだな。
「それは是非とも、嫌な顔しながら目の前で黒タイツを脱いで手渡して欲しいな」
ついでにチラッとパンティも見えるとより素晴らしい。
「え……? なんで嫌な顔されたいの?」
「ゾクゾクするからだ」
「……龍ちん、やっぱり変態さんだよ……」
ダー子の優しい感じの「変態」も中々に良いものだ。
しかし、それはそれとして、やはり本命であるクーデレの辛辣な「変態」も体験したい。
現れるとすれば、やはりダー子と同じように学校だろうか?
……久しぶりに、学校へ行くのが楽しみになってきたな。




