実は言い忘れてたことがあって……
温もりが消えるまでパンティを楽しんだあとは、簡単に我が家のルールを説明しつつダー子の部屋を準備した。
ウチの両親は同じ研究所で働く研究員同士ということもあってか、金だけはそれなりにある。
この家も三人家族にしては広く、使っていない部屋もあるため、個人部屋を用意することについては問題無い。
ただ、流石に掃除は行き届いていないので、掃除をする必要があった。
「雑巾がけって面白いね~」
ダー子が四つん這いになって床を拭いている。
動くたびにチラチラと黒いパンティが見えるので、大変素晴らしい光景だ。
たとえコンビニで購入したパンティだとしても、チラリズムにおいては何の影響もない。
ちなみに、ダー子は現在Yシャツに下着のみという、所謂彼シャツスタイルだ(彼じゃないが)。
家の中で制服で行動させるワケにもいかないし、かといってまともな私服は用意できていないのでお約束の流れである。
当然ジャージやスウェットという選択もあるが、この状況を利用しない男がいるハズもない(断定)。
一つ問題があるとすれば、胸がパッツンパツンになっており、今にも弾けそうになっていることだろう。
実際のところ、男の胸囲というのはある程度鍛えていれば100近くあるのも普通なので、よく漫画やアニメにありがちな男の服や鎧を借りたら胸だけ苦しいということにはまずならない。
しかし、俺とダー子では流石にバスト差があるため、あのようなけしからん状態になってしまった。
このままでは、リアルにボタンが弾け飛ぶ瞬間を拝むことになってしまうかもしれない。
……いや、それはそれで是非見てみたいのだが、あのYシャツは俺の学校用でもあるので一々直さなければならないと思うと億劫だ。
残念ではあるが、彼シャツを堪能するのは今日だけにしておこう……
一通りの掃除が終わり、とりあえず人が住める状態にはなった。
「あーし、お掃除って初めてしたけど、結構楽しいね~♪」
「そう思えるのは美徳だぞ。楽しく感じられるかどうかは、人の行動基準に大きく関わってくる。その行動に苦痛や不快に感じたり、面倒だと感じれば、自分の中の優先順位はどんどん下がり、最終的にはほとんどやらなくなる」
そして、それが最終的に人に迷惑をかける状態になると、人間関係にまで影響を及ぼすのだ。
だから家事全般の心得としては、なるべく自分が嫌にならないよう協力するなりストレス発散するなりしてメンタルコントロールするのが肝心だ。
「なるほどね~。まあ、あーしはダイジョブと思うよ~」
「それは心強いが、飽きれば心変わりすることもあるだろう。ということで、家事全般に関しては協力分担するようローテーションを組むこととする」
本当は両親も交えて行うべきではあるが、残念ながら二人とも家にいる時間が少ないためローテーションからは外さざるを得ない。
ただ、今までは俺一人でやってきていたことを考えれば、負担は大分減るハズだ。
まあ、本当に分担できるかは今後のダー子次第だが、先程の掃除の手際を見る限りは問題無いだろう。
食事を終え、ダー子には今風呂に入ってもらっている。
幸いと言うべきか残念というべきか、ダー子には現代日本で生活するうえでの最低限の予備知識が備わっているらしく、箸もしっかり使えるしシャワーの使い方も把握していた。
つまり、使い方がわからないから手取り足取り腰取り教えるという定番イベントが発生しないというワケである。
まあ正直、仮に発生したとしても俺にどうこうする度胸はないので、幸いと思った方が精神衛生上良いだろう。
「お待た~」
「いや、別に待っては――――っ!?」
風呂上りのダー子を見て、俺は思わずギョッとする。
同級生女子の風呂上り姿を見ればドキリとするのは当然と言えば当然なのだが、ダー子の場合破壊力がダンチ(段違い)だったのだ。
というか、こんな色気ムンムンな女子高生がいてたまるか……
ダー子の今の姿は、ラフなTシャツにパンツ一枚という親父スタイルである。
流石に寝るときまで彼シャツはどうかと思ったので、俺のTシャツとジャージの下を貸したハズなのだが、何故下を穿いていない?
「ダー子、ズボンはどうした?」
「あー……、なんか暑くて?」
まあ確かに、まだ夏ではないとはいえ6月ともなると地味に暑い日が多い。
今日は天気も良かったので、風呂上がりであればダー子の気持ちもわかる気がする。
「まあ、俺としては眼福なので構わないが、ブラはどうした?」
ナニがとはあえて言わないが、浮いててかなり目立っている。
「アレ窮屈だし、そもそも一個しかないから壊れるとマズくな~い?」
「む、それは確かに」
当然と言えば当然だが、コンビニでブラジャーを購入することはできなかった。
探せば売っているところも見つかったかもしれないが、ダー子のサイズが見つかるとは到底思えず諦めたのだ。
一応通販で頼んでおいたので、早ければ明日には届くハズ。それまで我慢してもらうしかない。……いや、我慢するのは俺か?
これは一刻も早く風呂に入って、対策を講じるしかあるまい。
「とりあえず、俺も風呂に入ってくるとしよう」
「……龍ちん、真顔なのにすんごいこと考えてる。……男の子って大変なんだね~」
「まあな。ダー子は部屋に戻って……と思ったが、あの部屋はクーラーがないか。とりあえず、コレでも食べながらここで涼んでいてくれ」
俺はそう言って冷凍庫から〇イカバーを取り出し手渡す。
「これは?」
「アイスだ」
「あ~、これがアイスってやつか~。ひんやりしてる~」
「食ってみな、飛ぶぞ」
これが棒状のアイスであれば良いオカズになったのだが、まあ無いものは仕方がない。
今度用意しておくとしよう。
◇
風呂から上がり冷静さを取り戻した俺は、自室でクーラーを効かせス〇カバーをかじりながら明日以降のことを考えている。
とりあえず服や下着は届くまで待つとして、あと必要なものは何か?
俺の思いつくレベルでは、生理用品や化粧水くらいしか思いつかない。
当然だが、俺にはこういったことを相談できる女友達はいないし、頼みの綱である母はメッセージに反応もしない。
やはりここは、ネットのオトモダチに頼るしかないか?
しかし、面白半分に誤情報を掴まされる恐れがあるので、あまり気乗りはしない。
俺が成否を判断できれば問題無いのだろうが、正直そんな自信はなかった。
コンコン♪
名残惜しくも最後の一口を口に含んだ瞬間、部屋がノックされる。
部屋を訪ねるときは必ずノックすると先程決めたのだが、しっかりと守ってくれるようだ。
「どうしたダー子、もしかしてクーラーの調子が悪かったか?」
ダー子には結局、母親の寝室で寝てもらうことにした。
ベッドもあるし、クーラーもあるので、寝心地は客用布団より間違いなく良いハズ。
ただ、母は普段家にあまりいないため、あの部屋のクーラーはほとんど使われていなかった。
壊れていたとしても不思議ではない。
「んーん、涼しいしフカフカだしメチャサイコー♪」
「それは良かった。……であれば何の用だ?」
一緒に寝たいの♡ イベントでないことは間違いないが、一応礼儀としてドキドキしておく。
「んーとね、実は言い忘れてたことがあって……」
ダー子は何やらモジモジしている。
なんだ? これは嬉し恥ずかし系イベントか?
困りますよ先生!
「じ、実は、ゴッちんから伝えろって言われてたんだけど、楽しくってすっかり忘れてたの……」
そう言われると、なんだか不穏な気配を感じてしまう。
これだけの好条件を叶えてもらっている手前、何らかのリスクがあってもおかしくはないからだ。
まさか、ダー子を現実世界に留めるのに実は維持費がかかり、それは俺の寿命だとか言い出すんじゃ……
「あ、違くて~、えっと……、なんかさ、願いはあと、二つ残ってるんだって……」
……え、マジで?




