欲張りだな[流星の視点]
安西君が行ったのを見届けると、宇宙兄さんは、少しだけ出ていくと行ってしまった。
「月」
「どうしたの?」
「月が戻ってきたら、また愛されたくなってしまったよ」
俺の言葉に月は、目を伏せた。
「ごめん。無理なのは、わかっている。」
「ごめん。俺は、もう流星とはそういうのは…」
「わかってるんだ」
月は泣いてしまった俺の涙を拭ってくれる。
「優しくされたら、甘えてしまう」
「流星、ごめんな。俺は、俺でいれる間は星を幸せにしてやりたいんだ。」
その目は、今までに見た事ない程に、真剣だった。
「わかってる」
俺に、向けられたらどれだけ幸せだっただろうか…。
「ごめんな、流星」
それでも、月は優しくて…
「大丈夫だから…」
俺は、月に笑いかける。
月が、月でいる時間が長いか少ないかもわからないのに…。俺は、また自分勝手に月を振り回してる。
兄貴のままでいるなんて、カッコつけていながら、ちゃんと腹をくくってない自分に気づいていた。
月は、俺から離れた。
「あのさ、もしも、俺がいなくなったりおかしくなってしまったら、星を支えてやってくれないか?」
「どうして?」
「星、辛いのに嘘ついたりするところあるから…。いつか、また、俺に戻れるまで支えてあげてて欲しいんだよ。流星に頼むのは何か違うかもしれないけど…。俺がいなくなったら、一人になっちゃうからさ。星は…。ほら、みんな大変だし」
「わかった。約束するよ」
月の頭の中には、もう星さんしかいないのを感じていた。
兄としているべきなのだ。
「俺もちゃんと流星の事は、愛してるよ。兄としてもだけど、そうじゃなくても…。だから、そんな悲しい顔をするなよ。」
月にそう言われて、悲しい顔をしていたのかと思ってしまった。
月は、みんなにいつだって、優しい。
だから、今だって、俺の隣に座って手を握ってくれる。
「俺はね、星に、あんな顔をさせてるのが嫌なんだよ。幸せにしてあげたいんだ。だから、流星の気持ちにもう答えられないごめんな。ご飯食べたり、お酒飲んだり、こうやって抱き締めたりはするからさ」
月は、やっぱり優しい。
みんなの願いを叶えようとする。
突き放してくれたら、楽になるのに…。
それが出来ないのが、月の良いところなんだ。
わかってるのに、利用する。
「時々、抱き締めてくれるか?」
「いいよ」
「月、ごめんな。」
「俺は、優しすぎるんだろ?」
月は、そう言って抱き締めてくれる。
月は、優しすぎる。
でも、その優しさに俺は救われてる。助けられてる。
「優しいから、俺は救われてる」
「なら、よかった。」
そう言って、月は背中を擦ってくれた。
長い時間、月は俺を抱き締めてくれていた。
「宇宙兄さん、まだかな?」
俺から離れて月は、そう言った。
「わからない」
「俺、星と昼御飯食べたいから帰るわ。ごめんな、流星」
「全然、大丈夫だ」
「戻ってきたのに、バタバタしてて星といれてなくてさ。」
「だったら、早く帰ってあげな」
そう言った時に、宇宙兄さんが入ってきた。
「ごめん、色々呼ばれて。ご飯、食べに行くか?」
「月は、帰るよ」
「そうか、残念だな。たまには、家族でご飯を食べたかったのにな。」
「宇宙兄さん。俺、兄さん許せるようになるから…。じゃあな」
そう言って、月は出ていってしまった。
「ちょっとは、伝えられたか?流星」
「わかってたのか」
「わかってるよ。月と話したら寂しそうにしやがってよ。だけど、月の幸せ願いたいのも嘘じゃないんだろ?」
「ああ、そうだな。」
宇宙兄さんは、俺の肩に手を回した。
「たまには、二人で昼飯食わないか?」
「うん、悪くないね」
宇宙兄さんは、笑ってる。
俺と宇宙兄さんは、部屋を出た。




