表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みんなの愛らぶyou(仮)  作者: 三愛 紫月
87/100

安西さんの想い[星の視点]

安西さんは、冷蔵庫から何かを取り出してもってきた。


「ぬか漬けだよ」


そう言って、僕と(るい)に渡した。


「うまいな」


「ほんとに美味しい」


安西さんは、笑ってる。


「挫折からうまく乗り越えられなくて、貯金も底をついて、いよいよ人生にピリオドをうつしかないかな?って思った時に、霧人のお兄さんがやってきた。そして、僕にあの場所の絵を(えが)かせる事と、簡単に出来る料理を教えてくれたんだ。」


そう言って、安西さんはぬか漬けを食べている。


「美矢君、キャンバスはそれだけじゃないんだよ。そう言って、天の川カフェの料理の盛り付けをさせてくれたんだ。」


「確かに、あの店のメニューは素敵だよな」


「橘も食べた事あるんだな。そうだよ。霧人のお兄さんは、お皿のキャンバスに絵を(えが)く事を教えてくれた。だから僕は、リハビリを頑張って、絵を(えが)こうと思ったんだ。僕は、なぜか新しい道を示してもらったら、急に元の道に戻りたくなったんだ。」


「安西さんは、晴海君に新しい道を示してあげたいんですか?」


僕の言葉に、安西さんは頷いた。


「霧人のお兄さんが僕にしてくれた事を、僕もしてあげたいって思ったんだ。晴海が、抱える苛立ちも悲しみも絶望も全て受け止めてあげたいって思ったんだ。」


「安西なら、出来る気がするよ」


「橘…。ありがとう」


安西さんは、(るい)に笑った。


「じゃあ、俺達はそろそろ帰るわ」


「僕も、明日から美咲さんの店の絵の打ち合わせだから…。今日は、早めに休むよ」


「ごちそうさま。じゃあな」 


僕達は、安西さんの家を出た。


(るい)、晴海君、大丈夫かな?」


「安西がいるから、大丈夫だろ」


(るい)は、そう言いながらスマホで何かやり取りをしていた。


「明日、婆ちゃんと爺ちゃんに会いに行ってくるよ」


「うん、行ってきなよ」


(ひかる)、色々ごめんな」


そう言って、(るい)は手を繋いでくれた。


「晴海君が、落ち着いてからでいいから…。結婚式」


「そうだな。俺が、いなくならないように祈っててくれよ。」


(るい)は、そう言って僕の頭を撫でる。


「晴海君の目、本当にもう無理なのかな?」


「そうだよな。技術があるから、何とかなりそうなのにな。」


「腕は、また使えるようになるよね。晴海君の料理大好きだから、また食べたいよ」


「そうだな。でも、今はきっとそれがプレッシャーに感じるんだろうな。」


そう言って、(るい)はまた立ち止まってスマホをいじっていた。


(ひかる)、今日は久々に二人で飲まないか?」


「飲み過ぎは、注意だよ」


「意識なくなるまでは、飲まないよ」


「じゃあ、早く帰ろう」


そう言って、僕は(るい)を引っ張った。


電車に、二人で乗る。


一緒に家に帰ってくるだけで、こんなに幸せだなんて


「明日は、朝早くに行くから、ゆっくり休んでていいからな」


(るい)は、僕の頭を撫でながら言った。


「わかった」


「何か、お腹すいたな」


「何か、作るよ、座ってて」


「うん、わかった」


(るい)が、そこにいるだけでテンションが上がる。


晴海君も安西さんと幸せになりたいって思っただけなのに、何でこんな事になるのかな。


僕は、冷蔵庫を見る。


しょうが焼き作れる。


それにしよう。


ふたつの目で見える世界と片目を閉じた世界は、まるで別の世界だった。


晴海君が、これから進んで行く事になる道は苦痛しかない気がして仕方がない。


安西さんが言っていたみたいに、晴海君も苛立ちを抱えているのだろう…。


順調にいかないのが人生だとしても、落ちる穴は浅い方がいいに決まってる。


僕は、しょうが焼きを作った。


「できたよ」


(るい)は、またスマホをいじっていた。


「うまそうだな。いただきます」


僕は、(るい)にビールを渡した。


もう、深い落とし穴はいらない。


僕は、(るい)にピッタリくっついた。


「どうした?」


「幸せだなって思って」


「そうだな」


(るい)は、笑って僕を抱き締めてくれた。


僕と(るい)は、下らない話をしながら飲んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ