ちょっといいですか?[月の視点]
安西が、病室に入ってすぐに詩音と椚さんがやってきた。
「美咲さん、ちょっとお話よろしいですか?」
宇宙兄さんが、やってきた。
「ここで、大丈夫ですか?」
「皆さんの前ですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。」
美咲さんは、宇宙兄さんにそう言った。
「では、美咲晴海さんの事なのですが…。」
「はい」
「本人には、まだお伝えしていませんが、午前中検査をした結果、右手の感覚がまだ戻っていないようなのです。」
「そうですか…。いつ、戻りますか?」
詩音の言葉に、宇宙兄さんは言いづらそうにしながら言った。
「ハッキリと言いますが、うちに通っていてはよくならないと思っています。」
「どういう意味でしょうか?」
「料理が二度と出来ない可能性があるという意味です。」
美咲さんが、その場に崩れ落ちそうになるのを椚さんが支えた。
「そんな、嘘だ。」
華君の手が震えてる。
星が、そっと支える。
「絶対では、ありません。少しの望みをかけて、私が紹介する病院に行ってみませんか?」
「そしたら、晴海はもどるんですか?」
「保証は出来ませんが、よくなった人を私は沢山知っています。」
安西が、病室からでてきた。
宇宙兄さんが、安西にやるべき事をと言った。
兄さんが、いなくなり…
安西が、病室に戻った。
目まで、何て聞いていなくてみんな放心状態だった。
「美咲さん、こちら紹介状です。」
宇宙兄さんは、紙を美咲さんに渡す。
「右目は、治らないのですか?」
宇宙兄さんは、驚いた顔をした。
「この病院の眼科医は有名なんです。視力がほぼ戻らない判断をした事は聞いています。ここでそう言われたのなら、他の病院は同じ判断だと思います。」
宇宙兄さんは、美咲さんを見つめている。
「今から、お話する事は医者ではなく、月の兄としてお話させていただきます。」
そう言って、宇宙兄さんは話しだした。
「安西美矢君の左手の傷を知っていますか?美矢君の傷を私は綺麗に繋げたけれど…。痺れや違和感を拭う事は、できなかった。空市にいる私の同期が、有名な整形外科をしています。彼に、美矢君を頼みました。もう一度、絵を描けるようにと…。」
宇宙兄さんは、美咲さんの目を見つめる。
「他にもたくさんの方を紹介しました。皆さん、自分のやりたかった事をまたやっています。美矢君が凄く頑張ったのを私は知っています。きっと、美矢君なら助けになりますよ。それに私は、たくさんの奇跡を見てきました。だから、晴海さんも大丈夫だと思います。ただ、目の方は難しいと思います。美矢君も、早めに手術をすれば治るのに受けてくれません。ただ、こちらも美矢君なら晴海さんの気持ちがわかると思いますよ。」
宇宙兄さんの言葉に、俺達は泣いた。
「晴海を連れていきます。」
「そうしてあげて下さい。必ず、もう一度料理を作れると私は信じていますよ。傷痕は、私が治療しましたから大丈夫ですよ。」
宇宙兄さんは、そう言って笑った。
「では、もう医者に戻ります。失礼しました。」
宇宙兄さんは、頭を深々と下げて行ってしまった。
「晴海から、料理を奪いたくない。」
詩音は、椚さんにしがみついて泣いた。
「酷いよ。目を見えなくさせるなんて…。僕が、看板をしまいに行けばこんな事にならなかったのに…。」
「過ぎた事を、悔やんでも時間は戻らないよ。華君」
「月君…でも、僕が」
「華君のせいじゃない。悪いのは、晴海君を傷つけた相手だよ。」
「そうだよ、華。晴海を傷つけた奴が悪いんだ。」
「わかってる。でも、晴海に申し訳ないよ」
そう言って、華君は泣いてる。
「華の手も治してもらえるかもしれないよ」
詩音は、華君に近づいて言った。
「僕は、治らなくてもいいよ」
「いや、晴海と一緒に行ってみろよ」
「詩音、僕の夢は叶ってるよ」
「駄目だ。行くんだ」
詩音は、華君に怒った。
兄として、弟達の事を助けたいのがわかる。
安西が、病室から出てきて三人は行ってしまった。
安西と星と帰る。




