表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みんなの愛らぶyou(仮)  作者: 三愛 紫月
71/100

忘れさせてあげたい[月の視点]

シャワーを浴びる。


「ここに、置いとくから」


「ありがとう」


栞が、声をかけてくれた。


栞が、彼に出会ったのは、俺と二十歳で再会した後だと思う。


俺のせいだ。


あの時、俺が栞に酷い言い方をしたから…。


シャワーからあがって、服を着替えた。


俺の服は、もう洗濯機にいれてくれていた。


タオルで、頭を拭きながら栞の所に戻った。


「僕もはいるよ」


「うん」


水を飲んで、座った。


俺が、ちゃんと栞に向き合っていたら…。


今頃、栞は辛い思いしてなくて、病気だってなってなかったんじゃないか…。


選ばなかった道の先に、幸せがあるような気がするのは…。


選んだ道が、辛すぎるからだ。


栞を選んでいたって、俺は、あの手術を受けてる。


どれを選んでも俺の手術はある。


だとしたら、子供を望めない栞の

苦しみは同じじゃないか…。


だったら、俺が栞を選ぶ道は駄目だ。


一番いいのは、彼を選んで栞が病気にならない道だ。


(るい)、どうしたの?」


栞は、ビールを俺の前に置いた。


今日は、栞のパジャマ姿にドキドキしてしまう。


栞は、頭をタオルで拭いてる。


「ごめん。俺、変だわ」


ビールを開けて、飲む。


「ドキドキするの?」


栞は、水を飲みながら笑った。


「する」


俺は、そう言ってまたビールを飲む。


「何で?」


「わからない。ただ、栞の中から彼を消してあげたいって思ったら…。ドキドキしてきた。」


「何それ、ハハハ」


栞は、俺から少し離れた場所に座ってビールを開ける。


「子供諦めたくなかったんだよな。凍結出来たら、よかったな。栞の子供は、綺麗だったろうな」


(るい)…。僕は、選べなかったんだよ。その未来。選ばなかったんじゃなくて、選べなかった。だから、諦めるしかないのにね」


栞は、そう言って泣いてる。


「さっきから考えてた。もう二度と選択出来ない道の方が、幸せに思えた。二十歳の時に、俺が栞の気持ちを受けとめたら、病気にならなかったのかな?とか…。その後も関わってたら、早く気づいてあげられたのかな?とか…。戻れないのなんて、わかってる。なのに、後悔ばかりが押し寄せて。彼と結婚して子供がいる未来を選べなかったのは、俺にも責任あるんじゃないかって思って。」


栞は、俺の近くにやってきた。


「何で、(るい)に責任があるんだよ。泣かないでよ。はい、ティッシュ。」


「ありがとう」


(るい)は、何も悪くないよ。宿命なんて、言葉を使いたくないけど。僕が、病気になるのは初めから決められていたんだと思う。だから、(るい)には何の関係もないんだよ。」


栞は、俺の肩に頭をおいた。


いつもの俺達に戻ったみたいに、心臓は静まっていた。


「俺も、真子と結婚して子供欲しかったんだよ。だけど俺は、自分で選んだ道で…栞みたいに選べなかったわけじゃないから。後悔しても、仕方ないのに…。時々、子連れを見ると胸が締め付けられて…。もう、真子は母親になってると思うんだ。結婚式の時に、妊娠してたから…。栞みたいに見てしまったら、俺も気が狂うと思う」


栞は、俺を見つめる。


「喫茶店にね。行ったのは、わざとだった。もしかしたら、大貴(たいき)が居たりして…。何て、思って行ったんだ。」


「いつ、行ったんだ?」


(るい)と、そうなろうとした後だよ。まだ、体の奥底に大貴(たいき)がいたのを感じた。見つけた時、声をかけようとした。でもね、小さな子供が大貴(たいき)の膝の上に乗ったのが見えた時に…。僕が、大貴(たいき)と一緒に作りたかったものを大貴(たいき)は別の人と作っちゃったんだって思った。本当は、僕が大貴(たいき)の隣で笑っていたかった。それでも、僕をまだ好きであの場所にいるんだって。心だけは、僕のものなんだって…。思い込もうとした。そう思えば思う程に、空しくて…。僕の(なか)に空っぽだけが広がってくのを感じたんだ」


「また、俺のせいだよな。」


栞は、首を横にふった。


(るい)のせいじゃない。僕が、大貴(たいき)を忘れられなかっただけなんだ。味覚も嗅覚も触覚も、欲しいと思うもの全てが同じだった。僕と大貴(たいき)は、二十歳のクリスマスイブに出会ったんだ。聞いてくれる?」


「うん、聞くよ」


俺は、栞の頭をポンポンと叩いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ