死神[晴海の視点]
お墓参りに行くのに、ついていく約束をしたのに
何故か、栞ちゃんと華まで一緒にいる。
「二人で、よかったのに?」
安西さんの手を握りながら、言ったけれど…。
「いや、二人はよくない」
とずっと言われた結果の四人だった。
何故か、理由を教えてくれなかった。
「お墓って、どっちですか?」
「星の丘で、よろしく」
「わかりました。」
大きな墓地が、月の丘と星の丘にある。
途中で、お花を買った。
俺達は、星の丘の上墓地にやってきて車を降りた。
桶に水をいれに行くのに、ついていく。
「美矢」
誰かの声に、安西さんは桶を落とした。
「安西さん」
「あ、ごめん。」
手が震えている。
俺は、安西さんの手を握りしめた。
「来てたんだね」
安西さんが、見せてくれた写真に眼鏡をかけた人が現れて俺はビックリしていた。
栞ちゃんと華は、後ろに立って二人を見つめていた。
「もう、帰ったのかと思っていたんだけど…。」
「もうすぐ帰る所だよ。彼は、美矢の新しい恋人かな?」
「あ、うん。美咲晴海さんです。」
「初めまして」
「初めまして、安西美果です。」
「晴海さん、美樹君の双子のお兄さんなんだ。」
「そうなんですね」
俺は、納得して頷いた。
通りで、さっきの写真の人によく似ているわけだ。
「美矢、ちゃんと美樹兄にお墓参りして帰れよ」
突然女の子が、現れた。
「美珠、母さんがいるから無理だよ。」
「それでも、新しい彼が出来たら報告するのは当たり前だろ」
安西さんの手は、更に震える。
「わかった。ちゃんと行くよ。晴海さん、藤堂、華さん、先に行っていいかな?」
全員、頷いた。
「美珠、僕達が帰ってからでもよかっただろ?」
美果さんは、美珠さんの顔を見ながらため息をついてる。
「駄目に決まってるだろ?母さんが来てるなら美矢は、会わないと駄目だ。」
そう言って、お墓に行くと着物を着た女の人が立っていた。
「お久しぶりです。」
安西さんは、俺から手を離した。
「あら、死神。更にそれに近い風貌に変わってきましたね。気味が悪い」
女の人は、ニコッと安西さんに笑いかけたその顔に背筋が凍りつく。
「お前は、また殺す相手を見つけてきたのか」
女の人は、着物の帯から小さなナイフを取り出して安西さんの顔にあてる。
「母さん、美矢はそんな人間じゃないですよ」
「うるさい。美果、私に逆らうのか?」
「すみません」
美果さんは、膝まずいた。
「お前は、また、人の命を奪うつもりか?」
安西さんの頬に、刃物があたる。
「美矢、死神らしく生きなきゃね」
「美珠、やめろ」
「美果、母さんの前だぞ。慎めよ」
「わかっている」
美果さんは、困った顔をして目を伏せてる。
「哀れだね。見た目は、こんな風になって…。それでも、愛されるのは何でかな?雅美さんのお陰だよね」
安西さんの頬に、また刃物を滑らせる。
安西さんは、何も話さなかった。
「美果より、頭が高いのではないか?」
そう言われて、安西さんは膝まずいた。
「お前は、また彼を殺すんだろ?死神」
髪の毛を引っ張られてる。
「さっきからさ」
栞ちゃんが怒ろうとするのを、安西さんが止めた。
「藤堂、やめてくれ。気にしないでくれていい、すみません、叔母さん。」
安西さんは、頭を下げた。
「私にそんな口を聞かせたら、許さないよ。わかってるね」
「はい、すみません。」
「美矢、母さんに酷いこと言ったら、美矢の母さんがどうなるか覚えときなよ」
「わかってます。すみません」
安西さんは、頭を下げる。
叔母さんは、安西さんの髪の毛を引っ張りあげた。
「お前が、死ねばよかったんだ。それは、お前が一番よくわかってるよな?」
「はい」
「美樹も雅美さんも忠美さんも殺しといて、お前が幸せになれると思っていないよな?」
「わかっています。」
「お前が幸せになった時は、お前の母親が不幸になるのをわかっておけ」
「はい、すみません。」
「まだ、絵を描いてるらしいな?源が、全て調べている。」
「はい、まだ描かせていただいています。」
「何故?絵を描くのをやめないのだ。」
叔母さんは、ナイフを安西さんの手に振り下ろそうとした。
「晴海さん、大丈夫ですか?」
思わず掴んでしまった。
「美矢を愛してるから、そうするのか?」
叔母さんは、俺を睨み付けていた。




