怖くて堪らない[星の視点]
僕とるかは、コーヒーを飲み終わるまで何度も何度もキスをした。
「したいけど、我慢だな」
「なぜ?」
「月にとってやってくれ」
「わかった」
あの日、安西さんに言われた言葉は、合っていた。
僕とるかは、そうなっていた。
目覚めてすぐに、インターホンが鳴ったのだ。
「もう、会えないのは寂しいね」
僕は、るかの頬を撫でる。
「もし、月の中に俺がちゃんと吸収されて一つになれたらこれを聞いてよ。……。」
るかに言われて、笑った。
「そんな恥ずかしい事、聞くの嫌だよ」
「いいだろ?」
「その時の答えが何だったら、るかがいるって事になるの?」
「……だな。ハハハ」
「それって、最初の意地悪な時とかわらないじゃない」
「そうだな。」
るかは、僕の頬を撫でる。
「今の俺は、星でいけるよ」
「ダメだよ。恥ずかしい」
「顔、真っ赤だな」
そう言って、またキスをしてきた。
「これ以上、僕を忘れないでね。」
「わかってる。もう、星を誰にも傷つけさせないから…。」
もうすぐ、コーヒーが飲み終わってしまう。
るかは、僕をギュと抱き締める。
「今から、俺は、籠って、絵を描き続ける。トイレとかに来る俺は、星の知ってる俺と違ったりするかもしれない。だから、無視してくれていいから」
「月は、死なないよね?」
「うん。俺が、殺させない。」
「約束して、るか」
「約束する」
るかは、僕をもっと抱き締めてくれる。
「キスしてくれる?」
「いいよ」
るかは、またキスをしてくれた。
涙が止まらない。
「人寄せホイホイだな。」
るかは、僕の涙を拭ってくれる。
「ホイホイって言葉、何か好き。」
「月が言った言葉だよな。これ…。」
「うん。月が言ったんだよ。僕に…。」
「少しでも、覚えてるのは嬉しいよ」
るかは、僕の頭を撫でてくれた。
「るか」
僕は、また泣いていた。
「大丈夫だ。月をちゃんと呼び戻すから」
「僕は、るかも好きになってたよ。」
「ありがとう、星」
るかは、僕と何度も何度もキスをしてくれた。
「じゃあ、そろそろ。行く」
「うん、わかった。」
「これは、月にしてもらえよ」
そう言って、あそこを擦られた。
「わかった」
るかは、笑って立ち上がった。
「じゃあな。また、会えたら」
「さよなら、るか。ありがとう」
僕は、涙を拭って笑った。
るかは、月の部屋のドアを閉めた。
僕は、コーヒーカップをキッチンに持っていく。
さっきまで、感じていた温もりがもう薄れていってる。
お皿を洗って、その場に座った。
どれだけの時間で、るかは部屋を出てくるかわからなかった。
死んで欲しくない。
だから、僕は…。
リビングのソファーに横になった。
スマホ写真を見る。
これるかとの結婚式の写真。
昨日の事みたいだよね
氷雨発見
懐かしい。
時雨の退院祝いだ。
懐かしい。
るかも大好きだけど、僕は月に会いたい。
これ、初めてゆで卵持っていった時に月が自分のスマホで撮ってくれた僕の写真だ。
引き留めた月との写真。
僕は、やっぱり月が大好きだよ。
会いたい気持ちをるかは、汲み取ってくれたのがわかる。
僕は、リビングの扉を閉めに行く。
お酒でも飲んで、さっさと寝よう。
気にすれば、する程…。
出てきた月に、声をかけてしまいたくなるんだ。
ワインを開けた。
グラスに注ぐのは、月の事を感じれる味。
月守星
懐かしい
月から漂う匂いは、この味のままだよ。
ワインを胃袋に流し込む。
会いたい
会いたい
会って、僕を抱き締めて
月が、僕にどんな風にキスしてくれていたかも忘れてしまいそうだよ。
るかを覚えてるけど、月を思い出せない…。
一人で、飲んでるからかすぐに酔いが回ってきた。
ダメだ
動けない
.
.
.
.
.
カタン…。
「うん……」
手を握りしめられる。
「るか??」
「星…。」
「待って、目を頑張って開けるから」
「もう少し待って」
夢……?
なに?
目が開かない。
開けれないぐらいに、ダルい。




