どういう意味?[華の視点]
朝目が覚めた時から、晴海はボッーとボイスレコーダーを聞いていた。
飲みすぎたせいで、僕は9時過ぎに目が覚めた。
「晴海、さっきから何してるの?」
「あ、うん。渚の声を聞いてる」
「何で?」
「何でかな?」
僕は、晴海をジッーと見つめた。
「渚君に、許されたいの?それとも、安西さんへの気持ちへの罪悪感?」
「別に、そんなんじゃないよ」
「嘘つきだね、晴海は…。お墓参りに行ってきたんでしょ?」
僕の言葉に、晴海は頷いた。
「誰かに会ったの?」
「渚のお父さんに会った。」
「幸せになってた?」
「うん。再婚して、渚に似てる男の子を育ててるって」
「キスはしなかったんだね?」
「華、あれは…。」
僕は、晴海に笑った。
「だって、酔っぱらって言ってただろ?お墓参りに渚が居て、キスをしたらお父さんだったって。告白もしたよね。渚に会いたくて、お墓参りに行ったら、お父さんがいて告白をしてしまったって」
「だから、華。忘れてよ」
僕は、コーヒーをいれにいった。
「晴海は、安西さんに愛されたいんでしょ?」
「渚のお父さんに言われたんだ。渚への気持ちごと奪って欲しかったんだよって…。きっと、ずっと、そうだったんだよ。俺は、渚への気持ちごと誰かに心を奪って欲しかったんだよ。」
僕は、泣いてる晴海にコーヒーを渡した。
「もう一度、あの愛が欲しくなったんだね。でも、それは晴海が人間である以上、仕方のない事だよ。人間は、どこまでも我儘な生き物だよ。」
「でも、あの愛をもう手に入れる事は出来ないよ。」
「だから、奪われたかったんでしょ?渚君を愛する気持ちごと、誰かに奪われて、新しい愛と混ぜてしまいたかったんでしょ?」
僕は、コーヒーを飲んだ。
「今までの人は、違ったって事?」
「さあね。ただ、晴海が心を持っていかれたのは安西さんだったって事でしょ?」
「今までの人も、ちゃんと好きになったよ。俺なりに愛していたよ。」
「今までの人にも悪いと思ってるの?仕方ないでしょ?その人達は、晴海の心をきちんと奪えなかったんだよ。それを悪いと思う必要は、ないんじゃないの?」
「華…。でも、俺は華と一緒にいるから。」
「僕の為に、安西さんを諦めるの?」
「ごめん。お墓の帰りにお店に寄ったら、ハガキが入っていて読んだんだ。ごめん。」
「見せて」
晴海の手から葉書をとった。
消印が、ついてなかった。
「ハハハ、何これ」
僕は、涙がとまらなかった。
「ごめん。俺だけ幸せになれないよ。兄貴も椚さんと一緒になった。華が、幸せに」
「どういう意味?」
「華……」
「僕が、また死ぬとでも思ってるの?」
「俺までいなくなったら、華は」
「生きていけるよ。そんな風に、僕を馬鹿にするなよ。」
「華、ごめん。でも、華が幸せに」
「安西さんと幸せになればいいだろ?僕のせいにするなよ。」
「華が、ちゃんと」
「そうやって、自分の気持ちに向き合えない言い訳を僕のせいにするなよ。」
「華、俺は兄として、華がちゃんと」
「晴海は、僕が幸せになれないと思ってるの?あの人じゃなきゃ僕は、無理だって思ってるの?」
「だって、そうだろ?だから、俺は華が幸せになるまで、見届けてから次に」
「ただ、怖いだけじゃないか…。僕の幸せ?ふざけるなよ。渚君を裏切るのが怖いだけだろ?僕のせいにするなよ」
「華」
晴海の言葉に、苛立って家を出てしまった。
涙が流れてとまらなかった。
僕だけ、一人。
「華、どうした?」
「僕だけ、一人なのかな?」
「家か?」
「出たとこ」
家の下に降りた。
「華」
「何で、いるの?」
「これを、渡したくて。」
「晴海も詩音もうまくいったら、僕は一人なんだって。だから、晴海は自分の気持ちに蓋をしようとしててね。でも、誰にも言えなくてね。そしたら、何でいるの?」
僕は、ポロポロ泣いていた。




