なぜ、いる?[るかの視点]
昼過ぎに、インターホンが鳴った。
扉を開けた星は、固まっていた。
「誰?」
俺は、玄関に行く。
「何で、俺の家を知ってるんだよ」
安西が、立っていた。
「二人が、そういう関係なのは理解しているが、そのはだけた服は整えていただけないだろうか?」
「何だよ、その喋り方」
俺は、カッターシャツのボタンを閉じた。
「今日は、るか君にお願いがあってきたので…。緊張している。」
「いや」
「何も話していない」
「無理」
「だから、何も話していない」
「帰れよ、安西」
「プッ、フフー。」
我慢していた星が、吹き出した。
「るか、とりあえず家にあげてあげよう。どうぞ」
「ありがとう」
「いや、いれんのかよ」
安西は、スタスタと歩いてきた。
キッチンにつくと、星はコーヒーをいれに行く。
「とりあえず、座れよ」
「ありがとう」
「俺、煙草吸うから」
ベランダを開けて、煙草を吸った。
「ってか、安西、ここ栞に聞いたの?」
「藤堂に聞いた。」
「あっそ、フゥー」
煙草の煙を吐きながら、ベランダを見ていた。
「はい、コーヒーどうぞ」
「ありがとう」
俺は、煙草を小皿に押し付けて安西の元に行った。
コーヒーを飲んだ俺と星を見つめて安西が言う。
「橘は、エッチが上手なのか?」
「ブー」
「汚いな。るか君」
「悪い」
星は、ティッシュを安西に渡した。
「人の性事情、気になんのかよ」
「どれくらいの頻度でしている?」
「はあ?」
「気になるんですか?あっ、僕。矢吹星です。よろしくお願いします。」
「矢吹さんの前で、ごめん。気になる。晴海さんと付き合ったら、エッチしないといけないだろう?僕は、体が爺さんなんだよ。僕はね、たたないんだ。」
「安西、お前。星に何言ってるんだよ。」
俺は、お腹を抱えて笑った。
「るかも、僕にはたたなかったんだよ。ハハハ」
「そうなのか!?なら、晴海さんは、エッチがなくても許してくれるのだろうか?」
「許すも何も、付き合うってそれだけじゃないんじゃないかな?実際、僕は月と付き合ってる時からプラトニックに毛がはえた程度の関係だったけど…。愛に性は、関係ないと思うよ。」
星の言葉に、安西は眉を寄せて考えている。
「今日、霧人の兄と話して晴海さんへの気持ちがバレた。だけど、僕は今日一人であの場所に行けなかった。だから、るかを迎えにきた。一緒に行ってくれ。僕の気持ちに火をつけたのは、るかなのだから…。」
「いやだ。」
「それは、駄目だよ。昨日、指輪をちぎったのはるかだよ。反省するなら、ついて行かなきゃ」
星に言われて、頷くしかなかった。
「ってかさ、何で指輪はめてんの?」
「これは、僕なりの決意だ。」
「はあ?意味がわからないんだけど」
「霧人に申し訳なくて、指輪をつけてしまった。」
「よくわかんないけどさ。安西は、晴海君が好きって事でいいんだよな?」
安西は、恥ずかしそうに頷いた。
「わかった。」
俺は、煙草を吸いに行く。
「るか君、橘とかわりたいんだね」
「フゥー。どうかな?」
「かわりたいんだって、僕にはわかるよ」
「そうかもな。でも、かわりかたが、わからない。」
バサッ…。
安西は、煙草を吸う俺の横に新しいスケッチブックを投げた。
「なんだよ」
「描けと言ったよな。下手でも」
「安西、俺がいなくなったら違う月がくるかもよ」
「そいつは、死にたがってるな?」
「安西、俺どうしたらいい?」
「描いて、描いて、橘を呼び戻せ。るか君に出きるのはそれだけだ。スケッチブックやるよ。」
安西は、玄関に向かった。
「やるよ、これも」
安西は、色鉛筆をくれた。
「どれだけ描けば現れるかは、わからない。でも、橘は必ず中にいるから大丈夫だ。」
「安西、わかった。」
安西は、俺の横に座った。
「ついてきてくれるか?」
「仕方ねーな。」
俺は、煙草を吸った。
安西の為に、ついてくしかないか。
「その指輪、血で錆びたのか?」
「血をとらなかっただけだ。とりたくなくて」
「そうか」
「生きていたかっただろ?霧人を殺したのは、僕だから」
「そんな風にウジウジいつまでも思われていたら、成仏できなさそうだな」
俺の言葉に、安西は目を開いて俺を見ていた。




