一緒に帰ろう(星の視点)
僕と栞さんは、三人が去って月の向かいに座った。
「もう、終わりにして家に帰ろうか?疲れたよね?」
「そうだね」
月は、笑ってくれた。
「僕は、みんなに伝えてくるね」
「わかった。待ってる」
栞さんと月を残して、立ち上がった。
みんなの場所に行く。
「月は、疲れてるから終わっていいかな?」
「いいよ」
みんなそう言ってくれた。
「星、大丈夫か?」
時雨が、声をかけてくれた。
「氷雨に会いたいなら」
「何故だかわからないけど、会いたくないんだ。」
「星、それって。月君が、一番になったのか?」
「わからないんだ。ただ、月以外今はいらないんだ。」
「星…。向き合ってあげたらいいんじゃないか?好きなんだろ?」
「もう、好きなんかじゃ足りないし、どんな言葉もはめる事が出来ないんだ。ただ、この喪失感を抱えていても月の傍にいたい。いないともっと辛くなる。悲しくなる。生きていく事もしたくなくなる。」
「星…。」
時雨は、僕を抱き締めてくれた。
「いつでも、俺達を頼れよ。」
真矢が、車椅子を押してきた。
氷河が、手を握ってくれた。
「矢吹、俺もいつでも相談聞くから」
「ありがとう」
僕は、時雨から離れた。
「もし、氷雨が必要なら連絡しろよ。俺は、星が壊れないのが一番だから。」
「時雨、ありがとう。」
「矢吹、おめでとうって言っていいか?」
「いいよ」
「おめでとう」
「ありがとう、真矢」
僕は、真矢と握手をした。
「気をつけて」
「ああ」
三人は、帰っていった。
僕は、入り口まで見送った。
月の元に戻った。
「着替えて、帰ろうか?」
「うん」
服を着替えた。
「これ、指輪」
「ありがとう。」
指輪をケースにしまった。
「矢吹さんは、はずさないの?」
「僕は…」
「ああ、恋人がいるんだね。ごめんね」
酷いよ、知らないからって酷いよ。
「うん」
僕は、笑った。
「それクリーニング出して返却しとくよ」
華君が、タキシードを受け取って僕を抱きしめた。
「星君、傷ついてるんだね。」
「華君、僕。」
「それでもいたいんでしょ?何かあったら、お店おいで。遅くまでやってるから」
「うん、ありがとう」
僕は、華君から離れた。
「電車で帰るから、みんなありがとう。わがままに付き合ってくれて」
「気をつけて」
みんなが、外まで見送ってくれた。
僕と月は、並んで歩く。
いつもなら、手を繋いでくれた。
いつもなら、星って笑ってくれた。
「矢吹さん、家同じ方向?」
「あっ、うん。シェアハウスしてる。」
「へぇー。俺と矢吹さんそんなに仲が良かったんだね」
その笑顔は、紛れもなく月だ。
「矢吹さんの彼女どんな人?」
「えっ、あっ、優しい人」
「優しい人が一番だよね。今度、会わせてよ。一緒に住んでたなら会った事あったでしょ?」
「ああ、うん。そうだねー」
どうやって、会わせればいいのか教えてもらえないだろうか?
胸をえぐりとってくれないかな?
この道に、少しずつ僕の気持ちを捨ててくれないかな?
「楽しみだよ。矢吹さんの彼女に会うの。俺も好きな人ぐらいは、いなかった?どんな女の子だったかわかる?」
僕の心は、グサ、グサと刃物で刺されてるように痛いのに…
月は、ずっとニコニコ嬉しそうにしてる。
「そういう話は、あんまり月から聞かなかったよ。」
「そっか…。じゃあ、いなかったのかな?出会い探さないといけないよねー。」
最大限に傷つけたくなる。
君は、妊娠させれないよって言いたくなった。
酷いな僕。
何も知らずに笑ってる月に、幸せそうなこの月に、そんな言葉をぶつけたくなるなんて…。
宇宙さんも、そうだったのではないだろうか?
るかとの約束を守らなければ、いなくなった事を伝えてあげなければ…。
「矢吹さん、切符どこまで買うの?」
「あ、これ」
「ありがとう」
僕は、月と駅のホームに降りた。
消えたい
愛されないなら、いなくなりたい
あの愛が、体に染みついてしまってとれない。
ズルいよ。
自分だけ、全部忘れてしまって
「危ない」
腕を引き寄せられた。
「まだ、電車きてないから」
「ごめん」
「ボッーとしちゃダメだよ。その顔も、誰かを引き寄せてしまうよ」
(人寄せホイホイ)
「プッ」
「何かおかしい事言った?」
「ううん、別に」
僕と月は、電車を待っていた。
まだ、大丈夫かも知れないね。
月…




