栞のところへ[るかの視点]
朝、目が覚めて顔を洗ってから、コーヒーをいれにいこうとした俺。
今日は、夢は、何も見なかった。
月は、どこかにいる。
星に会わせてあげたいな。
「おはよー。煙草吸うの?」
小皿と煙草を持ってきてくれた。
「ありがと」
俺は、星を抱き締めた。
「何、変だよ」
「何かわかんないけど、戻ってきてから、星を抱き締めてあげたくて仕方ないんだよ。」
「それって、ルル君のお陰かな?」
「かもな」
頬にキスをした俺に、驚いて星は離れた。
「るか、やっぱり変だよ」
「まだ、出来るかもな?」
パジャマの中に、手を入れてく
「ダメ、ダメ。栞さんにバレちゃうから」
「ハハハ、そうだな」
俺は、途中でやめた。
消化不良。
「星、消化不良って俺が言った事なかったか?」
「消化不良……?あっ!出会った時かな?僕の頬にチュッてした。」
「そうか…。なんとなく覚えてるな。って事は、俺が次にいなくなれば月が現れるかな」
「やめてよ。また、彼が来たらどうするの?死んでほしくない。」
「泣くなよ。人寄せホイホイだな。その顔」
頬をつねった。
「何で、知ってるの?」
「何が?」
「人寄せホイホイ。何で知ってるの?」
「わかんないな。頭に浮かんだから言ったんだけどな」
星は、また泣き出した。
「泣くなよ。」
頭を撫でる。
「るかの中に、月がちゃんといるんだね。」
星は、俺の胸に手を当てる。
「あのさ、突然こんな事言ったらビックリするか?」
「何?」
「俺は、何故か目覚めてからずっと星が欲しいんだよ。もしかすると、沼とくっついたかもな…。」
「沼?」
「月の中心だな。まだ、確証はないから記憶を失うのは怖いな。」
「ちょっと待って、目覚めてから欲しいってどういう意味?」
「流してたなら、忘れろ」
俺は、煙草と皿を受け取った。
「待って、忘れたくない」
「しつこい」
煙草に火をつけた、ベランダに小皿を置いて窓を開けた。
星は、俺を抱き締めてきた。
「あれは、まだ有効?」
「あれって何?」
「目覚めたら、感じさせてみるって話」
「できたら、願い叶えてやるぞ?1つだけだぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えまして」
星は、俺のズボンに手をいれようとしてくる。
「今は、駄目だ。栞の家に行くから。帰ってきてからな」
俺は、星のおでこにおでこをくっつけた。
「わかった。じゃあ、帰ってからね。朝御飯する」
そう言って、星はキッチンへ行ってしまった。
星の温もりが消えたのが寂しくて堪らなかった。
婆さんと爺さんに会うなら、12歳の月を会わせてやりたい。
あの日、婆さんに抱き締められて愛をしった月を会わせてやりたい。
煙草を小皿に押し当てた。
「食べよう、トーストとコーヒーだけだけど。」
「いただきます」
星を愛してるのは、わからないけど。
ただ、温もりは欲しい。
「なに?」
星の手の甲を撫でた。
「傷、まだ消えてなかったか?」
「あっ、これ?大丈夫だよ」
「そっか…。ごめんな」
「謝らないでよ」
星が、笑ってくれる。
それが、嬉しいなんてな。
こんなに温もりが欲しいなんてな。
「パンつけてるぞ」
「えっ?」
唇に触れた。
血がなくても、人を愛するって感じられるんだな。
「ごめん。用意しよう」
「うん」
俺は、用意して星と一緒に栞のとこに行った。
栞には、何故か全部バレてた。
「栞、絵描いてるのか?」
「うん、忙しいよ。るかが、月を連れ戻さないから」
「ちょっと見せてくれないか?」
「いいよ」
星と麻美さんに、声をかけて、栞はアトリエにしてる部屋に俺を連れてきてくれた。
「栞の絵は、震えるぐらい素敵だな」
「へー。わかるんだね」
「そうみたいだな。美術部だったやつに声かけてみろよ。」
栞は、美術部の写真を見せてきた。
「安西美矢が気になるの?」
「あ、ああ。なぜだろうな?」
「会わせてやろうか?」
「会えるのか?」
「会えるよ。明日なら、仕事場に行ける」
「会わせてくれ。」
「わかった」
栞は、俺に笑いかけてくれた。
「とりあえず、戻ろうか?」
「うん」
星と麻美さんの場所に戻る。




