椚のヤキモチ[詩音の視点]
俺は、あの日苦しんでいた月君を星君を思い出していた。
「詩音さんは、二人の事を考えていますか?」
優君に言われた。
「うん。あんなにも、お互いを愛し合っていたのに…。どうしてこうなったんだろうね」
「確かにそうですよね。僕も、あの二人の愛は本物だと思ってたよ。」
「そうだよね。合同結婚式、楽しみにしてたんだけどな。」
「詩音さんのその言葉だけで、嬉しいですよ。」
椚が笑ってくれてる。
「しーちゃんが、openの日は来たいって言ってたから」
「そうですよね。椎名さんも来たいですよね。」
「少し、怒ってくれてる?」
「まだ、詩音さんの中に椎名さんがいるから」
「泣かない、泣かない」
俺は、椚の涙を拭ってあげる。
月君の記憶が、もどらないのを栞ちゃんから聞いていた。
「詩音さん、椎名さんを追い出してよ」
「よし、よし。」
ワインを飲みながら、椚は泣いてる。
最近、椚は不安な気持ちが大きいみたいだ。
何故かは、わかってる。
「椎名さんと内緒で会ったの怒ってますよ。俺」
「それは、晴海もいたから二人じゃなかったから」
「関係ないですよ」
椚は、泣いてる。
新しく椚と始める店の、看板メニューが欲しかった俺はしーちゃんに味見をお願いしたのだ。
もちろん、晴海か華のどちらかが一緒にいるという条件でしーちゃんの家で味見をしてもらっていた。
それが、不安なようだ。
いや、それだけじゃなく。
月君と星君の事があってから、よけいに椚は不安を抱いていた。
「二人で考えればいいのに、椎名さんに味見してもらうなんて、ありえないです。」
「しーちゃんの味覚は、すごいのわかってるでしょ?優君。」
月君と星君といれたら、椚はマシになるかな?
「わかってるけど、詩音さんが僕を頼らずに椎名さんとか…。二人のお店なのに、椎名さんの味見したメニューとか…」
「そんな事言って潰れたらどうする?そっちの方が、俺は嫌だよ。」
「わかってるけど、ヤキモチやいちゃうんです。怖いんです。月さん、記憶なくなったのとか見て。あんな簡単に、愛情消えちゃうのを目の当たりにしたら…。詩音さんが、椎名さんにとられちゃって僕を捨てちゃって、二度と僕はどこにも行けなくなって」
「泣かないでよ。ならないよ。大丈夫だから…。あっ、そう言えば、今日栞ちゃんとこに月君と星君が行ってると思うんだ。明後日、栞ちゃんと絵の納品にやってくるから。その時に、愛が消えちゃったのかちゃんと見てみようよ」
「消えてたら、椎名さんとの件は終わりにして下さいよ。」
「わかった。もう、しーちゃんに味見してもらわないよ。そのかわり、愛が消えてなかったら続けていい?」
「わかったよ。詩音さん」
椚の頭を撫でてあげる。
「不安なんだね。それは、一番になれないから?」
「一番になれない事に、不安な気持ちはないですよ。詩音さんが、僕抜きで椎名さんに会うからです。」
「前も言ったけど、しーちゃんは俺を好きになどならないよ」
「こんな綺麗な人とずっーと一緒にいたら、気がかわるかもしれないです。」
「かわらないよ。しーちゃんの気なんてかわらないよ」
「そんなのわかりません」
椚は、俺を抱き締めてきた。
「詩音さん、結婚式あげたいんですね?」
「ああ、それね。チャペルのパンフレット、華と晴海がもらってきてくれたんだよ。」
「詩音さんは、月さんが戻ってくるって信じてるんですか?」
「信じてるよ。月君はね。あんなに星君を愛していた。星君がいる限り、必ずもどってくるよ」
「そうだといいですね。そうだったら、僕も詩音さんをもう少し信じてみますよ」
「信じてよ。椚優真しか、俺を幸せに出来ないんだよ」
「かわいい事、いいますね」
椚は、顔を真っ赤にしていた。
どうか、愛が消えてませんように




