助けてやれなかった責任[流星]
あの日、母さんは何度も月を傷つけた。
月が宇宙兄さんに、何かをされてる時、俺は、母さんに連れて行かれた。
「母さん、月を傷つけるのはやめて」
「うるさい」
バチン…。
頬をぶたれた。
「母さん、どうして?」
「母さんじゃないだろ?」
病院側に連れてこられていた。
母さんは、俺を床に押し倒してメスを突きつけた。
「イッ…。」
「可愛い、流星」
母さんは、俺の腹をメスで切りつける。
「そろそろ、母さんのものになる頃じゃないのかな?流星」
その笑顔に、身体中が凍る。
カッターシャツのボタンがはずされていく。
「せっかく、愛のない結婚生活をさせて飢えさせてやっていたのに月から近づいてくるなんてね。」
宇宙兄さんに、つけられた傷口を舐める。
「ほら、流星だってしたかったって言ってるよ」
「母さん、やめてくれ」
「嘘をつくな」
バチン…
また、頬をぶたれた。
「だったら、これをやめさせてみたら?」
「そんな事、できるはずが」
ないのは、母さんが一番わかってる。
痛みを快感にかえようと、体が必死でするんだよ。
月を傷つけ、あなたにされて、俺の体はそれをインプットしてしまった。
「やめっ…」
母親に、そんな事をされてるなんて…。
「やめろー」
はぁ、はぁ…。
夢でよかった。
あの日から、またあの人の夢を見るようになってしまった。
7時か…。
そろそろ用意しないと…。
宇宙兄さんは、月にちゃんと連絡をしてくれたと言った。
俺は、酷く臆病だ。
誰だって、月に言われたら消えたくなりそうだった。
手の傷を撫でる、あの日上手にそうすべきだったな。
腐っても母親だったか…。
俺の異変に、あの人はすぐに気づいた。
服を着替えて、リビングに行った。
「おはようございます」
「おはよう、氷雨君」
「帰りますか?」
「うん。星さんはまだ寝てる?」
「はい」
「ゆっくり寝かせてあげて」
「はい」
俺は、水を取ってリビングを後にした。
「またね、氷雨君」
「気をつけて」
氷雨君に、手をふった。
歩きながら、タクシーを拾った。
宇宙兄さんの病院にやってきた。
「流星」
「ああ、ここで月を待ってていいか?」
「俺も待っててやるよ」
宇宙兄さんは、以前より優しくなった。
嫌、昔から優しかったのかもしれない…。
月に、酷い事を言った宇宙兄さんの狙いはわかっていた。
「流星兄さん…。知っているんですか?俺は、精子がないと」
「ああ、知ってる」
「そうですか…。それなら、俺は女性に対して裏切りですね」
「俺は、そうは思わないけれど…。月がそう思うならそうなのかもしれないね」
「そうですね」
月の表情が曇っていく。
「コーヒーだ。それ飲んだら、検査行くから」
宇宙兄さんは、コーヒーを投げてきた。
俺と月は、コーヒーを飲んだ。
コーヒーを飲み終わったタイミングで、何も言わずに宇宙兄さんは、俺と月を連れて行く。
「はい」
あの日のように、紙コップを渡してきた。
「何を?」
「出してこい、流星ついていけ。後、流星も出してこい」
「なぜ?」
「比較対照が、必要だろ?」
宇宙兄さんは、ニコニコ笑ってる。
「わかった。行こうか」
俺も、紙コップを受け取った。
「これで、何をするんですか?」
「はー。やり方見せるよ」
俺も、腹をくくろう。
あの日の場所に行って、俺は月にやり方を説明しながらした。
「わかりました。」
月は、あの日と違って平然とやってのけた。
俺と月は、戻って宇宙兄さんに渡した。
「楽しみだな」
宇宙兄さんは、わざと笑っているのがわかる。
二つの顕微鏡を覗いてる。
「こっちきてみろ」
月を呼んだ。
右が、流星で、左が月だ。
「見てみろ、お前には動いてるもんがいない。」
月は、黙って覗いてる。
「そうですね」
涙が、スッーって流れてきたのを俺は見つめていた。
神様は、何度、月を傷つけるのですか?




