必要だよ[氷雨の視点]
兄さんからの、連絡で僕は星に何がおきているかを知った。
どうして、そんな事になってるの?
僕が、星を支えてあげたい。
次の日、星から太陽公園に来て欲しいと連絡を受けた。
タクシーに乗って、やってきた。
「星」
ベンチに座ってる星に声をかけた。
「氷雨、久しぶりだね」
もう、泣いている。
「そんな顔しちゃダメだ。」
僕は、星を抱き締めた。
「月がね。さっき、楽しそうに出掛けていった。香水つけて、お洒落して、鼻歌まで歌ってさ。」
ポタポタ涙が、落ちてきた。
「星」
僕は、涙を拭ってあげる。
「僕なんかといるより、楽しそうだった。」
「そんな事ないよ。」
「そんな事あるよ。僕といるより楽しそうに笑ってた。楽しそうにしてた。手放してあげなきゃ、月を解放してあげなきゃ…。僕の元に縛り付けていたらダメなんだよ。」
星は、泣き出してしまった。
「僕が、星の傍にいるから…。僕は、星の役に立ちたいんだよ。」
「氷雨、ごめんね。でも、僕は」
「今一番欲しいのは、月さんの愛なんでしょ?わかってるよ。それでも、僕は星の役に立ちたいんだ。」
「月は、女の人と一緒になるってわかってるんだ。」
「星そんな悲しい事言わないで」
「ううん、わかってる。最初からわかってた。だから、少しだけ神様が僕に幸せな時間をくれたんだよ。ただ、それだけなのに…。僕は、この愛を失いたくなくて必死なんだよ」
星の背中を擦ってあげる。
苦しんでいるのが、わかる。
「ごめんね。力になってあげたいのに、僕は役に立ちそうもないよね」
「立ってるよ。ちゃんと、だって氷雨は、僕をちゃんと愛してくれてる。わかるよ。僕には氷雨の気持ちが…。」
「星、僕はずっと愛してるよ。傍にいれなくたって構わない。星を愛してるんだ。だから、最後まで支えるから。約束するから…。僕は、いなくならないよ。全部受け止めるから、ちゃんと話して。ねぇ、星」
「ああー。氷雨。氷雨。僕は、月と一緒に生きていたかった。誰を好きでも構わなかった。ただ、同じ空間にいるだけで充分だった。なのに、なんで…。僕と月は、終わってしまったの?もう、月に会えない。もう、同じ空間にさえいれない。それが、こんなに辛く悲しいなんて気づけなかった。」
僕は、星を抱き締めた。
痛い程に、気持ちがわかる。
僕は、星が月さんを愛していたって構わないんだ。
笑って、生きてくれてさえいれば何もいらないんだよ。
「氷雨、消えたい。月が、僕を捨てるなら…僕は、消えてしまいたいよ」
「そんな事言わないで。僕じゃ足りないと思うけど…それでも、星の傍にいるから」
「氷雨は、一日中はいれないでしょ?」
「いれない。それでも、星を支えたい。だから、消えたいなんて思わないで。星がいなくなったら生きていけない」
星を抱き締める力を少しだけ強くした。
「氷雨、僕を愛してくれる?」
「うん」
「会いたいって言ったらきてくれる?」
「うん」
「僕が必要だって言って」
「星が、僕には必要だよ」
「氷雨ー。ありがとう」
星が、僕から離れた。
「来てくれて、ありがとう」
「いつだって、来るよ」
「嬉しかったよ」
星は、僕の頬に手を当てる。
「愛してるよ」
僕の言葉に、星は唇を重ねてきた。
欲しいのは、僕じゃないのなんてわかっている。
だけど、僕は星の望みを叶えてあげたかった。
星が、生きてく理由の一つになれるのならそれだけでいいんだよ。




