とあるゲーマー少女のお話
初夢ではないですが、このお正月中に夢で見た内容を元に書いてみました。
万が一原稿が消えたら問題なので(以前やった)、保険として投稿します(こいつなろう様をなんだと思っているんだ......、忙しいくせに......)。
キャラやゲームの名前は仮なので、他に良いのが思いつけば変更します。
設定がガバガバなのは、ご容赦を。
私は、飯野 星奈。公立高校に通う十六歳、つまりは高校一年生だ。
私は今、ゲーム上でしか知らない友達と待ち合わせ中である。
どうしてそうなったかというと、実は、昨日急遽決まったことだったりする。
私がハマっているゲーム、『ミラージュ・ワールド・オンライン』、通称MWOが、今日から行われるゲームの祭典において特設ブースが設置されることになり、パーティーメンバー内でもその話題で持ち切りとなったのは、つい最近のこと。
ちなみにMWOは典型的な剣と魔法の世界が舞台で、私の職業は剣士。
VRMMOって以外にもいろいろ特徴あったりするけど、これはめっちゃ話が長くなるので、また後日。
ただ、一つ述べるとすれば、キャラクリの際に、現実の自分とは何かしら真逆のキャラを設定する、ということだろうか。
性別、身長、髪の長さ、etc。
私は、アバターを長い白髪ポニテが特徴の男性キャラで、身長を平均越えに設定している。つまりは、私の現実世界の身長は、平均以下だったり。どうにかなるもんじゃあないってわかっているけど、悔しい。あ、ちなみに、この変え方は割とよくあるパターンね。
私と仲のいいリックは、短い金髪の男性キャラで、身長は平均以下。
一体、どんな娘なんだろうな。
そんなことを考えつつ、私は昨日の出来事を回想する。
* * *
「やっほー!」
おれたちのパーティー『ストレイヤーズ』。
パーティーハウスのメインルームにて。
元気な挨拶と共に入室してきたのは、回復役、支援型魔術師の少女、モモ、だ。
彼女は、ぽわぽわとした黒いボブヘアに茶色の瞳をした背が低めの女の子で、パーティーの中ではゆるキャラ的な扱いを受けてたりする。
「モモ、こんばんは」
「......んはー」
真っ先に挨拶をしたのは、双子の姉弟、シュガー、と、ソルト。
シュガーは弓を使用して戦う後衛型戦闘職で、ソルトは斥候を主に担当する。
シュガーがあまり喋らない性格なので、よくソルトがフォローをしていて、さっきのセリフも、ソルト、シュガーの順に喋っている。
初対面だと見分けることが難しいほどのそっくりな双子だが、シュガーがブラウン、ソルトが白色のストレートボブなので、そこで区別がつく。ちなみに、二人の瞳の色は同じで水色である。
まあ、髪を隠されるとまじで見分けられない。このパーティーでも、ミスなく当てられたのは、リーダーくらいだった。
「モモ、こんばんは」
おれも、シュガーに続いて声を掛けた。
「あれ、調味料コンビに、シリウスだけかぁ」
モモがメインルームを見渡して、肩を落とした。
『ストレイヤーズ』は、総員七名の、割と平均的というか、どちらかと言えばパーティーとしては多めな構成だ。
なので、全員が偶々揃う、というのはあんまりない。
誰かを探していたのだろうか。
「この時間なら、全員いるかもと思ったんだけどなあ......」
「......モモ、その呼び方、やめて」
ぼそっと言ったのは、シュガーである。
調味料コンビ、と呼ばれるのは嫌らしい。
ちなみに、現在時刻は、午後十時台。
「あと、来てないのは、リックと、シャドウと、リーダーだね。
シャドウとリーダーは、まあ分かるけど、リックは何処に?」
そう言って首を傾げるモモに、おれが答える。
「リックはさっきまでいたけど、ラジオ講座聴かなきゃって、ログアウトしてったよ。
しばらくしたら、戻って来ると思う」
本人が言ってたので、間違いないだろう。
「ふぇ~、この時間だと......、高校生向けの英語講座かな。
真面目だぁ」
「だねえ」
でも、タイムテーブルを把握しているモモも同類だと思う。
ちなみにおれが知っているのは、リックに教えてもらったからである。
「ううん、私が知ってるのは、家族が聴いてるからだよー。
私はそれに、こういうのって、ストリーミング派だし」
私はMWO優先だから、と言いつつ、モモはおれたちがいるソファー、シュガーの隣に腰かけた。
ソルトがモモに向かって問いかける。
「なんか話したい事があったん?」
「うんうん、ちょっとね~」
そこでセリフを区切り、モモがおれたちを見渡した。
「明日からリアルでイベントがあるでしょう?
皆、参加予定とは聞いたけど、いつ行くのかなあって」
同じ日なら、待ち合わせて一緒に行きたいじゃん、とモモは続けて言った。
「ああ、明日からだっけ......」
チケット争奪戦大変だったなあ、と遠くを見るソルト。
ちなみに、チケット申し込みは抽選方式だった。
ああいうのって、くじ運がものをいうからねぇ......、その気持ち分かるよ、うん。
ちなみに、おれのくじ運は普通。
大はずれを引くことがない代わりに、大あたりを引くこともない。
「シュガーたちは、三日目、最終日に行くよ」
「うん。
そして、確か、リーダーとシャドウさんは、二日目だったはず」
そう、シュガーたちが答えた。
それを聞いて、モモが目を輝かせる。
「ぼっ、わっ、私も! 私も三日目!」
「えー」
冷たい反応を返すシュガー。
でも、心の底から嫌がっているというわけではないのは、すぐに見て取れた。
「えーってなによ」
そう文句を言いつつ、モモはシュガーのほっぺをつまんで、むにむにする。
「モモ、分かるけど、セクハラはダメだよ。
バンされちゃう」
「ぐっ、正論......!」
流石に垢バンは嫌なようだ。
ソルトに止められて、やっとシュガーへの私的制裁をやめたモモが、おれに向き直る。
「で、シリウスは?」
「おれは、一日目だけど......?」
「「「え~」」」
「いや、くじの結果だし」
そんな残念そうな顔をされても困る。
「ただいま戻りましたー」
ふらっとメインルームに入ってきたのは、リックだった。
どうやらリアルでのミッションは、恙なく終了したようだ。
「リック!」
「あれ、モモ、来てたのか」
リックは失礼とも取れるセリフと共にこちらにやって来て、ぴったりとおれの隣に座る。
それを見たモモが、ぼそっと呟いた。
「......いつも思うけどさ、シリウスとリックの距離って、近くない?」
それにすかさず、シュガーが反応する。
「シュガー、リック×シリウス推し」
「シュガーちゃん、分かってるじゃあない~♪」
「おいやめろ」
聞こえてるぞ。
てか、そんな話は本人の前でしないで欲しい。
「あはは、ごめんごめんー」
あっけらかんと笑うモモ。
ポーカーフェイスを保つシュガー。
赤面するリック。
ぽかんとするソルト。
弱いながらも威圧を放つおれ。
カオスが、そこにあった。
しばらくして、真っ先にカオスから抜け出したのは、おれだった。
リックの方を向き、話を強引に戻す。
「お、おれたち、さっきまで、MWOが出るイベントの話をしてたんだ。
リックは、明日からのイベント、いつ行くんだ?」
きょとんとしていたリックだが、すぐに話を呑み込んでくれた。
「ん? 僕は、明日、一日目だけど......?」
「ホントか!
じゃあ、一緒に行こうぜ!」
おれは思わず、リックの手を取った。
今なら、さっきのモモの気持ち、分かるかも。
「密! 密!」
「ソルト、それ、時代遅れ。
しかも、ここ、ゲーム。
水、差さない」
ソルトとシュガーのやり取りにハッとして、おれは慌てて手を離した。
今は2030年代、全世界を席巻した流行病は過去のものとなりつつあるが、この行動は別の意味でアウトだ。
「す、すまないっ!」
「いや、いいけど......」
まんざらでもない表情をしたリックが、話を進めてくる。
萌えるねぇ、というコメントと共に生温い目で見てくるモモとシュガーと、後でじっくりとお話し合いをしたのは、言うまでもない。
* * *
回想終了。
結構時間たったし、そろそろ来るかな......。
「......あれ?」
遠くの方から、きょろきょろ誰かを探す仕草をしながら近づいてくる背の高い、イケメンな男の子......。
あれ、ウチのクラスの有名人、飯浜 陸人、ではなかろうか?
ここで、クラスメイトと会うとは思わなんだ。
がんがんこっちに向かって来ているのは、気のせいかなー。
思わず、目を遠くしながら、現実逃避する。
私は、彼が苦手だ。
『飯野』と『飯浜』。
名前がよく似ているせいもあってか、同じクラスになれば出席番号は隣り合う。
だけど、性格は正反対。
奴は目立ちたがり屋で、明るくて、いつもクラスの中心。スクールカーストも最上層間違いなし。
私はとにかく地味で、日陰大好き。日向の道なんて(現実世界では)歩きたくないし、目立つのなんて以ての外。
ただ、現実世界の私のツインテールのせいか、はたまた面白がってネギな文具を購入したせいか。私が友から付けられたあだ名は“ミクちゃん”だったりする。非常にやめて欲しい。
こんな日に、苦手な奴にこんなところで会うなんて、ツイてない。
逃げるか。
そっと立ち上がり......、私の目は、奴の胸元に吸い寄せられた。
――あれ、リーダーがハンドメイドしてわざわざ送ってくれた、メンバーズバッジでは......?
うん、間違いない。あれは、皆で考えた、オリジナルのシンボルマーク......。
あれは、リーダーが直々に送ってくれたもので、持っているのは、パーティーメンバーのみ。なので、私たちはこれを、特定の為の目印にしようと指定していた。
なのに、なんで奴が? まさか......。
混乱して立ち尽くしていると、目が合った。
奴の目線が、私の胸元に付けられた、同じそれに、向けられた。
待ち合わせの、目印に。
一度目を見開いた奴は、一直線に近づいてくる。
しかも、私の名前を大声で呼びながら。
「シリウスっ......!」
「その名前で私を呼ぶなーー!」
つい、私は奴に思いっきりグーパンチをかましてしまった。
うっ、周囲の視線が痛い......。
* * *
「「大変申し訳ありませんでした!」」
ちょっと離れた場所で――流石にあそこに居続けるのは精神的にきついものがある――、私たちは同時に頭を下げた。
「それにしても、『シリウス』がミクだったとは......」
しみじみと、リック――陸人が言う。
「ぶっ飛ばすぞ、おれは、『星奈』であって決して『ミク』ではない」
てか、どこまで浸透してるんだよ、そのあだ名。
「結構広まってるぞ?」
「よし、あいつ後でしばく」
「やめれ」
「安心しろ、お前も一緒だ」
「そこで僕を巻き込まないでくれ」
ぽんぽんと飛び出る、シリウスとリックの会話。
会場に向かって歩きつつ、私はこっそりと陸人を盗み見た。
正直、リックが陸人だったこと、女の子じゃあなかったことは、数分たった今も受け止めきれてない。
だって、微塵も私の予想疑わなかったし、プライベートな事柄に触れないのがマナーでありルールなんだもん。
それに、数分じゃあ、ねえ?
向こうはすぐに適応したみたいだけど。
その柔軟さ、私にも頂戴。
だけど、こうして会話していると、間違いなく、彼が戦友リックであると思う。
安心する。
悔しい、すごく悔しいけど、ほっとするんだ。
私は、立ち止まり、そっと目を閉じた。
瞼に、リックを思い浮かべる。
「? 星奈、どうかしたか?」
目を開けると、不思議そうな顔をして数歩前で立ち止まり、こちらを見る陸人が見えた。
私はにやっと笑って、彼に走り寄った。
そして、彼の前に出て、いつものように告げる。
「何でもないよ、相棒」
それは、いつもあそこで言う言葉。
「おれは、大丈夫だよ。
それよりも、競争しようぜ!」
そう、いつもみたいに。
「先にゴールした方が、今日の飯奢られる権利ゲットっていうことで!」
そして、私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした陸人を置いて走り出した。
「お、おい、待てよ、星奈!」
私たちは、共に走る。
これまでも、これからも。
私たちは、――おれたちは、相棒なのだから。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ちなみにですが、この二人の一人称は以下の通りです。
星奈:私 ⇒ シリウス:おれ
陸人:俺 ⇒ リック:僕
今作は本当に現時点で下書きに近い段階なので、後々きちんと手直しします。
反映するのはだいぶ先になりますが、気になることなどあれば、感想などで教えてください。
それでは、紺海碧でした! 大人しく仕事に戻ります。 2022年1月11日