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夏の雨 13
「3年生はもう引退したんか?」
「うん。インターハイが最後の試合だし、受験もあるしね」
自主練に行けば、先輩達がちらほらいるのが当然の景色だった。でも、もうそれは無い。
私達2年生が最高学年になってしまった。
インターハイ後の自主練の参加者は少なく、剣道場に私しかいない日もあって、それが余計に孤独感を募らせた。
優輝が持ってきてくれた麦茶をひと口飲むと、無性に彼にくっつきたくなった。
自分から優輝にくっつくと、彼の体が強張るのを感じた。
「亜樹…?」
「…何か、くっつきたくなっちゃって。だめ?」
彼を見上げるつもりが、上目遣いのようになってしまったと後から気付いた。
「俺…結構我慢してるんだけど…?」
「我慢?何を?」
「亜樹を取って食わないように」




