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夏の雨 10
「大丈夫だよ。学生の本分は勉強じゃん?」
優輝らしからぬ言葉が出てきて驚いた。
それでもにこやかに笑う彼の顔を見るとホッとする。
「勉強って…残りの夏休み、勉強でもするの?」
「話すと長いんだけどさ。同じバイトをしてた大学生で面白い人がいたんだよ」
優輝がしていたリゾートバイトは、彼と同じく高校生もいたが、大学生やフリーターもいたらしい。
その中の1人が、バイトをしながら世界中を旅している人で、語学が堪能だという。
「俺、その人の話聞いてると自分もこの目で世界を見てみたくなってさ。それにはまず英語を完璧にしたくなったんだよ」
すごいなあ。優輝はなんだか、未来へと足を一歩踏み出したように見える。
インターハイに辿り着けなくてずっと落ちてた私だけど。
彼と一緒にいると、前を向けそうな気がしてきた。
「優輝…」




