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夏の雨 5
『今日地方大会だったよ。負けちゃった』
それだけ打ってメッセージを送った。
優輝がリゾートバイトに行っている間は電話をするタイミングが難しい。着信があっても私が部活やバイトの最中で、かけ直してもなかなか繋がらない。
もう何日も優輝の声を聴いていない。
夏休みになってから、すれ違ってばかりだ。
早く夏休みが終わればいいのに。
一人きりの部屋にスマホの着信音が鳴り響く。
着信表示には優輝の名前。
「もしもし」
「俺。今大丈夫?」
「うん」
優輝の声を聴いたら、張り詰めていたものが解けてしまいそうだ。声を詰まらせると優輝が慌てた。
「…大丈夫?」
「うん…優輝…会いたいよ…」
優輝の前ではあの電車の事件以来、滅多に泣かない。
でも今の私には優輝が足りなくて。試合も情け無い終わり方をしてしまって悔しくて。優輝を補充したくてしょうがなかった。
「ごめんな。すぐに会いに行きたいけど…今は行けなくて。来週戻るから、デートしような」
優輝の声が鼓膜を優しく揺らす。それが余計、泣けてくる。




