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夏の雨 4
「…どうするって?」
「引退しちゃうじゃん。もう部活で顔を合わせることは無くなっちゃうし。……何も言わなくていいの?」
「…何を?」
「好きなんでしょ?慎二先輩のこと」
梨沙の顔が強張った。
「…どうしたらいいか、わかんなくて。もう会えなくなるなら告った方がいいんだろうなって思うけど。でも先輩これから受験だし。私のことで悩ませたくないし」
「悩むかどうかは…わかんないよ?」
「でも…何となく、言うべきは今じゃない気がする…」
そう紡ぐ梨沙の顔は既に泣きそうだった。
私には優輝がいるけど。自分から告白したわけじゃなくて。自分を受け入れてもらえるかどうかという、恐ろしい審判に臨んだことの無い私には、何を言っても説得力は皆無だった。
「そっか…。強制されることでも、強制することでもないしね…」
それ以上私は何も言えなくて。
私達は言葉少なに、駅へと向かった。




