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夏の雨 3
慎二先輩はいつも緩い空気を纏っている。
でも今はピリッとした空気だ。気安く声は掛けられない。
試合が始まった。
大きな声が鳴り響く。
慎二先輩も相手も何度も斬り込む。
どちらも浅い。旗が上がらない。
慎二先輩が上段で構えた。勝負に出た。
相手が胴を狙う。決まらない。
竹刀がぶつかる音が何度も響く。
…パンッ!…
慎二先輩の胴が打たれた。
そこで試合が終わった。
慎二先輩の、引退が決まった瞬間だった。
試合後のミーティング。
「「応援、ありがとうございました」」
慎二先輩と一緒に頭を下げる。
「試合は負けたけど、俺は全部出し切れました。悔いはありません。俺は引退するけど、みんなこれからも頑張って欲しい」
「私は…悔いがすごく残りました。もっと鍛えて、強い自分になりたいです」
部員とコーチが拍手してくれた。
ミーティングが終わり、梨沙と駅への道を歩く。
「ねぇ梨沙…慎二先輩のこと、どうするの?」




