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薫り 11
隣に座る優輝の腕と私の腕が触れていることに気付いた。優輝の顔を見ると目が合った。
「やっと俺を見たな」
ふわりと微笑んで私を見る。
「だって…なんか、緊張するの…。落ち着かないというか…」
不意に手を引かれたと思ったら目の前に優輝の胸があった。彼の腕の中にいた。彼の匂いが鼻を掠める。
「これなら、緊張しない?」
「さっきより緊張するよ…」
私の体は緊張のあまりガッチガチで。心臓もうるさいぐらい鳴っていて。
「なんで、そんなに余裕なの…?」
「余裕そうに見える?」
「見えるよ…」
優輝はモテると思う。きっと、私の前に何人も付き合っていた人はいたのだろう。でも私は違う。
「私、彼氏が出来たの初めてで。だから、部屋に来たのも初めてだから…。何をどうしたらいいのかわからないというか…」




