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火夏星 11
私の名を呼ぶ彼の低音は、耳に心地良かった。
「亜樹。俺も名前で呼んで?」
「…下の名前?」
「そう。優輝」
「優輝…」
名前を呼ぶだけで、何だかすごくくすぐったい感じだ。
優輝は目を逸らして口に手を当て、また顔を赤くしていた。
「…すっげー嬉しい…」
どうしよう。
この人、すっごい可愛いんですけど。
カツン…カツン…
ジャラ…ジャラ…
音に振り向くと、戸締りをしているらしい先生の姿が見えた。
「亜樹、帰ろう」
差し出された手をそっと握ると、優輝はまた顔を赤くしていた。